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この恨み、晴らさでおくべきか(冤罪かもしれない)

 目覚めは最悪でした。


「うぅ~、昨日は呑み過ぎました……」


 激しい頭痛に顔をしかめながら、重い身体を私は持ち上げます。


 明らかな二日酔いです。

 昨夜は、美影さんに付き合って何件もの酒屋の倉を空にしてきましたので、当然の結果ですね。


 まぁ、あれです。

 寂しい独身女同士の愚痴り大会です。

 実に不毛ですね。


 私も美影さんも、アルコールをどれだけ呑んでも酩酊一つしない身ではありますが、それではあまりにも風情がありません。

 なので、わざわざ分解機能を抑制してまで酔っぱらっていたのです。

 不毛度合いが更に増しましたね。


 おかげで、こうして二日酔いに悩まされるのですから、救いようがないにも程があるというものです。

 まぁ、私自身の話なのですが。


 きっと美影さんも今頃はのたうち回っているのではないでしょうか。

 八つ当たりに私を八つ裂きにしに来ないだろうか、と少しばかり不安になります。

 彼女、私の事を都合の良いサンドバッグ程度にしか思っていない節がありますからね。

 今日明日は身辺を気を付けておくべきでしょう。


 じっとしていると、少しばかり頭痛が引いてきたような気がします。

 おかげで、ようやく周囲へと注意を向ける余裕ができました。


「はて……」


 思わず、口から呟きが漏れてしまいました。


 目に入ってきたのは、普通の部屋でした。

 学習机に、備え付けられたアンティークなコンピュータ。

 背の低いガラステーブルも置かれており、周囲には可愛らしいクッションが幾つも置かれています。

 調度はどうにもファンシーな感じで、いかにも女の子の部屋と言わんばかりです。


 私が寝ているのも、一般的な大きさのシングルベッドです。

 気を抜いてると、時折、身体の輪郭が崩れてしまう私の為の、特注の防水ベッドではありません。


 はい、明らかに私の自宅ではありませんね。


 何処でしょうか、ここは?


 きょろきょろと、見回しているとさらりと髪が流れて視界に入ってきました。


 朝日に照らされるそれは、明るめの茶髪でした。

 亜麻色とでも表現すべきでしょうか?


 慣れ親しんだ薄い赤毛、ヒロイン(笑)属性の所謂ピンク髪ではありませんでした。


 つい焦って自分の身体を見下ろします。


「む、胸が……」


 ない。ありません。

 いえ、ありはしますが、小さいです。

 たわわに実って、いまだに小さくて可愛い美影さんに時々もぎ取られるナイスバディは何処にもありません。


 手足もなんだか短くて、どうにも幼い感じです。


 わたわたとしながら化粧台に向かい、鏡に自分の全身を映し出します。


「小さいです!

 全体的に、こう……幼い!」


 年齢は、おおよそ14か5ほどでしょうか?

 子供から大人になり始めた青い果実のような肢体をしております。

 髪は腰まで届く長さです。

 ふわふわとウェーブを打つような髪質は同じですが、色合いが亜麻色ですごい、すっっっごい違和感があります。


 確かに記憶にある(一部違いますが)私ですが!

 明らかに私ではありません!

 私の2Pカラーです!


「これは……これは何かの陰謀です!

 そうに違いありません!」


 思わず叫んでしまいました。

 なんてはしたない事でしょう。

 ちょっと若返るくらいで取り乱すだなんて、修行が足りていませんね。


 私の叫びを聞き付けたのでしょう。

 部屋の外から何者かが走り寄ってくる足音が聞こえました。


 扉が開かれ、一人の少女が顔を出しました。


「永久! 大丈夫か!?」


 それは、私の姉に似て非なる顔でした。

 構成するパーツの9割が同一なのですが、やはり違う点が二つ。


 一つは、髪色。

 私の知っている姉は燃える炎のような鮮やかな真紅をしていたというのに、目の前の彼女は黒色。

 古き良き瑞穂人のような、美影さんと同じ色をしております。


 そして、もう一つが若さです。

 三十路を越えて、ついでに一児の母となり、人妻らしい色気を備えた姉ではありません。

 我が子を可愛がる母性本能駄々漏れな様子もありません。


 大体、高等部生くらいでしょうか?

 若さ真っ盛りな年頃です。

 ある意味、最も苦労を重ねていた頃ですね。

 その苦労の大半が、私が原因という辺り、思い返すといたたまれません。


「お、お姉様っ!? わっか!」


 拝啓、化け猫(ノエリア)カミナリ様(美影さん)、お元気でしょうか?

 この状況を、暫定、貴女方の仕業と判断して言わせていただきます。


 貴様ら、覚えてなさいよっ!?


 炎城永久、28歳。

 並行世界へと降り立つの巻。


と、まぁ、そんな物語です。

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