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【 2 】
だが僕の部屋には女の裸が散乱していた。それを君は知らない。
四角形に切り取られた立方の裸だ。
それは毛深い立方だ。
貼り付けられた毛深さ。
貼り付けられた立方。
それは血を流さない。血のかよう君とは違う。
そう言いたかった。
意味不明だろう。僕自身そう思う。
「冫、何してん、今日、学校来なかったやん」
「いや」
口籠るのが関の山。
「しばらくぶりじゃね、あたしと会うのも」
「うん」
僕は虫だろうか。鸚鵡のほうがまだ喋るだろう。塞ぎの虫。そういう素描。抽象ではなく具象。
「堕手さんは怖がらないね、僕を」
と。空を見るとそれもやはり白だったが、その白に赤いくらいの哄笑が炸裂したんだ。黄色を通り越してあの君の声は赤く見えた。
笑いがなかなか止まない。通学鞄のデイバッグが君の背に愛憐な様子で揺れたけれども、それも何か色を忘れた様に白かったね。
君の唇と、声、存在だけが空間の中で赤い。
「あはは、笑う。つうか笑った。ニスイ、おもろ。やば。ちゅうにびょう、でしょ、それ」
ライトノベルならば、それは永遠の凍土を明るめる炎の鍵の様な言葉だ。鍵の笑顔。
だけれど、僕の皮膚はただ痛んだ。