プロローグ 「火星に行こお☆」
思い立ったが吉日!!!
『ボピーがふってきた☆』、プロローグです。火星に行くにあたる経緯です。
誤字脱字、日本語おかしいのは目を瞑ってください。
「世界でいちばん恐ろしく愚かなのは、人間だ。」
いつだったか、誰かがそう呟いた。
―――さて、その人間の強欲さに神の裁きはいつ下されるのだろうか?
とあるガラス張りのエレベーター内の空気は重い。それはそれは、雰囲気が悪いってもんじゃなかった。
「まじ、で、きつ…。」
「…見てはいけませんわ。大丈夫……。わたくしは神無月・シャーロット、これくらい大丈夫なはずですわ。」
ぶつぶつと同じ言葉を繰り返したり、口を押さえたりしている死にかけふたりを他所に、この状況を楽しむ人物がひとり。
「ふたりとも、だいじょーぶ??…ま、へーきか☆」
(大丈夫じゃない!!!!!!)
そう心の中で叫びつつも、実際はそんな余裕がない為文句も言うことができず、こうなった経緯を思い出すのだった。
人間の支配欲は『地球』という惑星を向けられた後、それだけでは飽き足らず、宇宙へと進出していった。何光年も掛かると言われた『火星』への道も、飛躍的に発展した科学技術により、旅行感覚で行けるようになってしまった。 そんな地球人が火星に初めて降り立って驚いたのは、環境が地球と似ていることだった。加えて既に火星には人が住んでいたのだ。そんな驚きも束の間、地球人は火星を理想郷として開発していった。そしてその開発が終わり、富裕層のみならず民間の人でも訪れることができるように、火星へのエレベーターの搭乗料は無料とした。ただし人が殺到した為に、地球から火星へのエレベーターは争奪戦になり、なかなか乗れないということが多々あるのだった。
そして地球の月の国・満月(みちづき)に住む果繎䴇皇は、息抜き旅行を以前から単独で計画していた。そして今日、幼馴染の月宮青空、神無月・シャーロットと穏やかな時を過ごしながら、唐突にその計画を話し始めるのだった。
良家のお嬢様であるシャーロットの邸宅の中庭で、いつものように3人でお茶会をしている中、突如ティーカップを乱雑に置き立ち上がる䴇皇に、ふたりの視線が集まる。そして、口角をにぃっと上げると
「火星!!火星に行こお!!」
「は?」
「…相変わらず䴇皇は唐突ですわね。」
「こいつ頭大丈夫か。」とでも言わんばかりの顔の男性と、「これはいつも通りですね。」と悟っている女性。そんな彼らを置き去りに、䴇皇は嬉々として話を進めていく。
「俺たちはいつも頑張ってるから、たまにはごぼーびがあってもいいと思うんだ!!!ってなわけで、火星に!!今すぐ!!行こうっ!!」
その日の光を浴びてキラキラする白茶色の髪を揺らしながら、びしっと太陽を指差す䴇皇に、ミッドナイトブルー色の髪の男性―――青空は冷静にツッコミを入れる。
「䴇皇、お前の差す方角に火星はない。正確には…「いこーよ―!!」
眼鏡を直しながら指摘する青空の声を遮って、駄々を捏ねる䴇皇に呆れたようにため息を漏らす青空。それを見兼ねて、今度はブロンド色の美しい長い髪を揺らす女性―――シャーロットが口を開く。
「いい考えだとは思いますが、本日というのはほんの少し無理があるのでは…?」
「大丈夫っしょ☆俺なら、30秒でしたく終わるし!!な、行こっ!!!」
(お前、支度終わってねぇくせによく言えたな。)
(支度終わってないんですね。)
キラキラとした瞳の奥には揺るがない決意の炎が見えた。彼がその状態になってしまえば、その意志がてこでも動かないのは既にふたりは身をもって知っている為、アイコンタクトで会話をする。そして数十秒の沈黙の後、ガタリと席を立った青空は、
「荷造りしてくる。極力すぐ戻る。」
「さっすが、青空!!!俺も行く!!!シャーロット、またあとで!!!」
「ええ、私も準備が終わり次第車で迎えに行きますわ。」
そんなこんなで、なんとか支度を終わらせてどうにか火星へのエレベーターがある場所まで行くことができた。加えて、䴇皇の恐ろしいほどの強運でエレベーターに乗ることまでできたのだ。ただ青空は重度の乗り物酔いに、シャーロットは高所恐怖症であり、そんなふたりにとっては、こんな乗り物最悪でしかなかった。
そんな軌跡を辿っており、今に至る。
「うわぁ、めっちゃ早いんだな!!今どのへんだろう?!」
そんなふたりの苦労も辛さもお構いなしの䴇皇は、狭いその中で、焦げ茶色の瞳をキラキラさせながら外を眺めている。彼の呼気があたった場所は一瞬にして曇っていく。
「䴇皇、頼むから動かないでくれ。うざったい。」
「䴇皇、お願いですからあまり動かないでください…。」
䴇皇が動いたことに因り揺れるエレベーターに、顔を青くしていくふたり。青空は口元を押さえて壁に寄りかかっていたが、彼の眼鏡の奥の瞳はほぼ光を失っていた。シャーロットは両手でしっかりと目元を押さえ、肩を震わせている。そんな見ればわかる変化に気付いていないのか、元気づける為か䴇皇は、曇った部分を使ってバナナの絵を描いている。そしてその曇りがなくなれば、ふたりに向き合い、元気な声でウインクをしながら
「ふたりとも、どーしたんだよぉ?滅多に見られない景色なんだから、楽しもーぜっ☆」
そう言ってぴょん、と大きく跳びはねる。ガタ、と先程の比にならないくらいの衝撃がエレベーター内を襲う。
「きゃあぁあああ!!!」
「おっま!!ふざけんなっ!!」
シャーロットは身を護るようにしゃがみ込み、顔が真っ青な青空は、力を振り絞り䴇皇を思いっきり殴る。が、痛覚が鈍い䴇皇は?を浮かべ、
「なに、もしかしてお腹空いたの?!俺のバナナはあげないからな?!!」
自分の頭にカチューシャに紐で括り付けてあるバナナを必死に庇う。それを見てイライラしながらも青空は、自分の鞄の中からガムテープを取り出し、イライラを解消するかのように
「もう、我慢できない…。…暫く、黙ってろ!!」
そう言って勢いよく口にガムテープを貼り、手足も同様にまとめて縛り上げた。
「着いたら外してやるから、今は大人しくしてろ。」
「んぅーー?んんん、あー。」
慣れなのか䴇皇は、楽しそうに返事をする。そんな反省の色すら見えない䴇皇を横目に、シャーロットの隣に腰かけた青空は、その震える手を取って壁に寄りかかり、目を閉じて仮眠をとるのだった。
そして何十分が経った頃。
「䴇皇、青空。起きてください。着きましたよ。」
鼓膜を揺さぶる声に青空が目を開ければ、紫色の瞳を心配するように揺らしているシャーロットが映りんだ。そしてその視界の端では転がっている䴇皇が映る。しかもガムテープをいつのまにか外していて、呑気にぐっすり寝ていた。
「ん、悪い。寝てた…。」
「いえ、気分はいかがですか?まだ顔が青いようですが…。」
んぅーと身体を伸ばした後、青空は転がる䴇皇を足蹴にして起こそうとする。
「気分はまぁ、ましにはなった。ありがと。…おいっ、䴇皇起きろ!」
「へへへ、バナナぁ~。」
なんて言って幸せそうに口をむにゃむにゃさせる。彼は一度寝てしまえば自分が満足するまで起きなくなるのは、幼馴染の青空が一番よく知っていた。
はぁ、とため息を零す青空は、やれやれという風に両手を上げる。そんな青空にシャーロットは、ふわりとほほ笑む。
「青空、先程は手を握ってくださりありがとうございました。やはりあなたは優しいですね。」
お礼を告げるシャーロットに照れくさそうに背を向ける青空は、䴇皇を起こすべく、最終手段にでる。
「俺は優しくなんかない…。ふぅ。䴇皇、火星には上手いバナナがあるしいぞ!こんなとこで寝てないで、さっさと起きろ!!」
「えっ!!!まじで!!??!!」
先程の眠りの深さはどこに行ったのか、瞬時に起き上がる䴇皇に、シャーロットは苦笑いをする。
「さすがですわ、青空。䴇皇の扱いも手慣れてますわね。」
即座に起き上がった彼は自分の鞄を置いたまま、我先にとエレベーターから降り、その姿を霞ませていった。
「あいつとは物心つく頃から一緒だったからな。なんだって分かるさ。…さ、オレたちも行かないと、あいつが何かやらかさない内に手綱で繋いどかないとな…。」
「ええ、そうですわね…。」
そう言って顔を見合わせて笑う二人を他所に、䴇皇は新たな地のバナナに心を踊らせるのだった。
「バナナ~、バナナ~♪」
そんな軽い足取りで歩く道を不気味に照らす夕陽は、彼の行く先に何を思うのか。だけどそんなこと、今はバナナのことでいっぱいの彼にはどうでもいいことなのだろう。たぶん、この先も…。
To be Next Story…
青空 「ところであいつ、鞄置いていきやがったぞ。」
シャーロット 「そうですわね…。」
青空 「置いていくか?…っていうかあいつ旅行なのになんでこの小さい鞄で来たんだ?」
シャーロット 「…。中身を知るのが怖いですわね…。」
青空が無言で鞄を拾い、エレベーターを降りていく。
青空 「さすがに、心配し過ぎだな…。行くか…。」
シャーロット 「ええ、そうですわね。」
っていうやりとりがあるのを、䴇皇くんは知らない。
ここまでお読みいただきありがとうございました。次回も楽しみにしててください!!
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