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第40話 信用

「なんで引かせたの?」


 ビーストと睨み合いを続けながらハルが聞いてくる。


 新は指を二本上げた。


「理由は二つある。まず悪い流れを一度切りたかったってこと。それとこれが重要なんだが………」


 新はそこで声を潜めた。


 まあ別に聞いてるやつはいないと思うのだが、他にプレイヤーもいるので念のためだ。


「たぶんお前にかかってたバフはもう切れてる」


 一応ハルにも不可解なオーラについては説明してある。


 これで通じるはずだった。


「うーん」


 ハルは思案顔になった。


「あんたが言ってたやつか。それが無くなってるかもってこと? なんでそう思うの?」


「あんなバフが戦闘中ずっと続くとは考えにくい。何かしらの条件で切れると考えるのが妥当だろう。では一番可能性が高いバフ切れの条件は何か。それはダメージだ」


 これは今までの戦いからの推測でもあった。


 まだ確定ではないがほぼ間違いない。


「だから大事を取って下がらせた」


 新は不満そうなハルに淡々と説明を続ける。


「お前がまだバフがかかってるつもり、………好調なつもりで同じようにビーストと戦ったら、感覚のズレで酷いことになるかもしれないからな」


「………」


 ハルは新の言葉に考え込んでいるようだった。


 やがて、


「分かった、納得がいったわ。じゃああたしはここから自分の感覚を戻しつつ、ちょっと慎重に戦う必要があるってことね」


 ハルの意外な返答に新はちょっときょどってしまう。


「あ、ああ。そうだが………。なんだ今日は妙に素直だな」


「別に。前にも言ったでしょ? あんたの指示が納得いかなければ聞かないって。今の話は納得がいったから聞く。それだけのことよ」


 ハルはいつも通りのムスッとした顔でそう言うが、新は気づいた。


 今の戦い、彼女は新が理由を説明する前に従ってくれたのだ。


 もちろん緊急時ということもあったろうし、ビースト戦は彼女自身の命がかかっているということもあるだろう。


 しかしそこには確かに新への信用があるはずだった。


 ―――それには答えなきゃいけないよな。


 新は嬉しさに緩みそうになる頬を無理やり引き締めて拳を握り気合を入れると、自らの相棒パールに告げた。


「バフは無くなったと思うが、今のラッシュでビーストのHPをかなり削ったのは事実だ」


 新の言う通り、もうビーストのHPはほとんど残っていない。


「もう先は見えてる。だからアレをやるぞハル」


「アレ? アレってアレのこと?!」


 ハルが思わず振り返ってクリスマス前の子供のように目をキラキラさせる。


「前を向け前を! ビーストが襲ってきたらどうする」


 注意を促してから、新は言葉をつづけた。


「まだろくに検証もできてないが、HPも十分にある。お前ならできるはずだ」


「ふん! 当然よ!!」


 ビーストに向き直ったハルの背中が頼もしく答えた。


 バフが無くなったかもしれないのに、ハルは意気軒高だ。


 怖いと言っていた戦いにこうして彼女が向き合えるのは、彼女がおのれ自身で恐怖を乗り越えたからか、それとも見守る相棒を信頼しているからか。


 それは新にも分からなかったが、彼の胸にもふつふつと湧いてくるものがあった。


 これは熱だ。


 メンテナンス前にはほのかな温もりだったそれが、今やはっきりと感じ取れる熱になっているのだ。


 新は自分がSOHに熱中し始めていることを感じながら、ハルに号令をかける。


「じゃあ行くぞハル!!」


「ええ!! あの犬っころにほえ面かかせてやるわ!!」


 そして長く続いたビーストハントはいよいよ大詰めを迎える。



というわけで新が後退させた理由をハルに説明する回でした


ちょっと短かったですねw


そのぶん次回は読みごたえのあるお話になると思います


それにしてもハルもだいぶ変わりましたね


新と出会った頃から考えると考えられないようなことを今は口にしている気がします


「人間」は変わる ニューマノイドもまたしかり このままハルは人間に近づいていくのでしょうか


でもまずは目先のビースト戦ですね


まだ目の前にビーストが居ますのでw

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― 新着の感想 ―
[良い点] 短いながらも、物足りなさは感じさせない。 「これは熱だ」 これがカッコいい。この場面で一番映えるセリフ。
[良い点] 徐々にパートナーとして互いに成長していく様子がとてもよいですね! ハルの成長もそうですが、新自身も、人間として大きくなっているような気がします。 [気になる点] ハルがデレるのはいつなん…
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