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第38話 準備

 イベント終了一日前。


 新はビーストを追って廃工場に来ていた。


 イベント中何度か来た場所だが、今日は少し様子が違う。


 辺りが暗いのだ。


 というのも新は今日ファミレスのバイトが入っていたのだが、終了間際に二組の団体客が来てしまい、もともと人手不足だったため、残業を余儀なくされてしまった。


 そのせいで予定よりここに来る時間が遅くなってしまい、おかげで日が暮れてしまったのだった。


「急がないとな」


 新はちょっと焦っていた。


 廃工場がいつまでも開いているわけもなく、あと一時間ほどで警備員がゲートを閉める。


 それまでにゲームを終えないといけない。


 新はせかせかした気分になりながら、廃工場前のゲートの前で警備員にSOHのスタート画面を表示したスマホを見せ入場の許可をもらう。


 そそくさとVRグラスとワイヤレスイヤホンを装着し、工場跡に向かった。


 工場敷地は広いが、ビーストはいつも工場跡に現れるからだ。


 工場跡からは明かりが漏れていた。


 中に入ってみると工場の天井照明だけでなく、工事現場で見るような大きな照明灯まで備え付けられており、かなり明るかった。


 たぶん雑多なものがたくさん置いてある場所ゆえ、事故防止のために必要以上に明るくしてあるのだろう。


 運営の苦労が感じられた。


 そのような照明に照らされた工場跡の中には、SOHプレイヤーの姿が見受けられた。


 いつもより遅い時間にも関わらずかなりの人数だ。


 明日にはイベント期間が終了するため、駆け込みクリアを狙ったプレイヤーが集まっているのかもしれない。


 グループで盛り上がっている者たちもいる。


 対して今日の新は独りだった。


 SAIは別の場所でビーストハント。


 アルパカはイベントを完走したこともあって、今日はイベント中ないがしろにしがちだった友人達と遊ぶのだそうだ。


 おそらく新が追っているビーストは今日倒せる。


 それを仲間たちと喜び合えないのは少し残念だが、ハルの命がかかった戦いに集中できるという意味では悪くないかもしれない。


「ん?」


 スマホを手に持ちSOHのスタートタブをタップした新の動きが止まった。


 SOHも止まっていた。いつもは出ないロード画面が出てロードバーのメモリが少しずつ埋まっていく。


 「何だ? 今日は重いな………」


 制限時間がある新は若干イラつきつつじりじりと待っていると、三分後くらいだろうか、いつものハルがいるHOME画面になる。


 カップラーメンができる程度の時間を待っただけなのになんでこんなに長く感じるんだろう、などと思いながら新はハルに声をかけた。


「ハル工場に着いたぞ。準備は良いか?」


 金髪の少女は小首を傾げた。


「準備? あんたたまにそれ聞いてくるけど準備って何するの?」


「え?」


 改めて言われると困る。


「そ、そうだな。ストレッチとか………」


「あんたアホなの? ニューマノイドにそんなの必要なわけないでしょ?」


「ぐっ!」


 心底頭の悪いやつを見る目でハルはスマホの中から新を見上げてくる。


 言い返してやりたいが自分でもアホなことを言った自覚があるので黙るしかない新である。


 ともあれハルはビーストハント最終盤の今日にいたっても平常運転の様だった。


 ある意味頼もしいかもしれない。


 たぶんこの前明かしてくれたように、今も彼女にはビーストと戦うことへの恐怖感はあるのだろう。


 それはふとした時に見せる表情で新にも分かった。


 だがそれを乗り越えてこの少女は前を向いている。


 そんなハルを見て「ふふっ」と新の口から笑声が漏れた。


「何笑ってるのよ?」


 すぐさまむっとした顔でハルが睨んでくる。


「いや、すまん。ただお前は強いなと思ってさ」


「? そりゃあたしは強いわよ。今更何言ってるの?」


 当然のようにそう答える自らの相棒に新はついに噴き出す。


 おかしかったのはハルではなく自分自身だった。


 自分が緊張しハルの様子を恐々うかがっていたことに気づいたのだ。


「ちょっと! 何がおかしいのよ?!」


 笑う新についにハルがキレ出した。もともとこいつは短気なやつなのだ。


 慌てて新は弁解する。


「悪い悪い! 別に馬鹿にしてるとかじゃないんだ。ただお前が俺の相棒で良かったなって思ってさ」


「!」


 何気なく言った新の言葉にハルの目が丸くなった。


 金髪に縁どられたその白い頬が少し赤くなる。


 ハルは今まで感じたことが無い何かが、存在しないはずの胸の中から込み上げて来るようで戸惑う。


 どうしていいか分からず、ともかく誤魔化すように声を張り上げた。


「あ、あったり前でしょ! 強いあたしと契約できたことを感謝しなさいよね!!」


「はいはい感謝感謝」


「おざなり!!」


 ツッコミを入れてハルはむすっと押し黙るが、そんなに機嫌が悪いわけではないのが新にはわかる。


 いつも分かるわけではないが、最近やっとそういうことを少しばかり察知できるようになった新である。


「さて! そろそろワン公をぶっ飛ばしますかね」


「ふん! やっとね! あ、そうだわ」


 ハルが何か思い出したようにポンと手を打つ。


「ねえ新。ちょっと相談があるんだけど」


 驚天動地だった。


「お前がっ?! 俺に?!」


「いやそんなに驚くことないでしょ。あんただっていつもあたしに相談するじゃない」


「いやそうだけどさ………」


 これはどうしたことだろうと新は頭をひねり眉を顰める。


 ハルが自分に相談なんて。


 正直時間はないがこれは聞いてやりたいと新は思う。


「分かったどんな相談だ?」


 新がそういうとハルはほっとした顔をした。


「うん。ナギのことなんだけど………」


 それからハルが口にした内容はさらに新を驚かせる内容だったのだ。


というわけで最終決戦前の新とハルの様子でした


ハルの相も変らぬマイペースに新は救われているようですね


そしてハルも新から何かしら得るものがあるようです


そんな二人のビーストとの最終対決


果たしてどうなるのか乞うご期待ですd(*^v^*)b

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