第36話 メッセージその2
「だからあれはもうちょっとフェイントを入れてからのほうが良かったんじゃないか? そうすればもっと粘れたろ?」
「うっさいわね。あたしはあそこでフォース・フィストを撃ちたかったのよ。最近あんまり撃ててなかったし」
「お前EXスキル好きだなあ。なんでだ?」
「だってなんかかっこいいじゃない! それに当たるとスカッとするし!」
「なるほどなあ。まあ分からんでもない」
「でしょ?」
「あ、そういえばそろそろ新しいEXスキル取れそうだぞ」
「え? ほんと?! どんなの?!」
ピローン
夕食時。
レトルトカレーを口に運びつつダラダラとハルと会話していた新は、スマホの着信に気づいた。
スマホを手に取った新の顔にちょっとした驚きが浮かんだ。
「お! SAIからSOHメッセージだ! ちょっとメッセしてくるわ」
「え?! こら! どんなEXスキルなのよ! ちゃんと説明してから行きなさいよ!」
ぽちっとな。
ハルの抗議を無視して新はメッセージ画面に移行した。
後で文句を言われそうだが今はSAI優先だ。
彼とはイベント不参加を表明してからというもの、メッセージのやり取りも少なくなっていたし、何より元気がなさそうに見えた。
今日メッセをくれたのはそれに関することかもしれない。
見てみるとメンテ中に作ったアルパカとの三人部屋の方にメッセージが来ていた。
SAI:今いいか?
新はちょっと緊張しながらこう打ち込む。
ARATA:いいよ。どうかしたか?
それとほぼ同時にアルパカも入室してきた。
アルパカ:SAIさんARATAさんこんばんわ!
何かあらたまったお話ですか?
SAIからの返事はちょっと間があった。
SAI:いやそれほどたいした話でもないんだが………
彼は前置きして。
SAI:明日からイベントに参加することにした。その報告をしたいと思ってな
アルパカ:ビッグニュースじゃないですかΣ(゜口゜;)//
アルパカが顔文字付きで驚いて見せるが、確かに新も同じ心境だった。
あんなに頑なにイベント不参加を決め込んでいたのに何かあったんだろうか?
だがそれを根掘り葉掘り聞くのは無粋な気がする。
SAI:ちょっとあってな………
SAIも詳しく話す気はなさそうだった。
あれだけはっきり不参加を表明したのに今更参加することへの気まずさもあるんだろうと新は察する。
ARATA:まあとにかく俺はSAIの参加は歓迎だよ。
ARATA:イベントの流れはだいたい把握してると思うが、何か分からないことがあったら聞いてくれ
アルパカ:私ももちろん大歓迎ですよヾ(≧∇≦)/
私にも遠慮なく聞いてくださいね(⌒-⌒)
また少し間があった。
SAI:ARATA、アルパカありがとう。心から感謝する
SAIの返信に新の口元に笑みが浮かぶ。
ARATA:気にするな。
アルパカ:そうですよ! 私たちゲーム仲間じゃないですか!
SAI:ああ。じゃあまた明日。
ARATA:ああ。また明日な。
アルパカ:SAIさんお休みなさい!
朗らかな雰囲気でメッセージは終了した。
新はウキウキしていた。
仲間と同じイベントを遊べるというのはやはり嬉しいものだ。
これは明日から一層気合が入るな。
新は高揚した気分で布団に入った。
・・・・・・・・
翌日。
SAIはわずか一日でビーストのHPを三分の一近く削って新とアルパカを驚かせることになる。
スタミナンEXを大量購入して鬼のような連戦をしたらしい。
重課金プレイヤーおそるべし………。
というわけで今回は前回を受けてイベント参加をSAIが新たちに伝えるお話でした
スマホゲームなどをやっていると「俺引退するわ」みたいな話はよくあることで、また「俺復帰するわ」という話もよくあることです
SOHのこのお話の場合イベント不参加だったSAIがイベント参加を決意するということでしたが、新たちの気持ちは復帰した友人を迎えるそれに近かったかもしれませんね(⌒-⌒)
少なくとも私にとってはとても嬉しいことだったのを覚えています
さて次回はアルパカとカルマの戦いをお送りします ビーストを倒す寸前まで削っていた彼女たち
果たしてイベントクリアなるか?!




