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第24話 すれ違い

「じゃあビーストハントに行ってくる」


「そうか。気をつけてな」


 新はSAIの言葉に笑顔を見せて軽く手を振ってから緑風公園を去っていく。


 途端にSAIは独りになった。


「ふう………」


 小さくため息をついて彼はベンチに腰掛ける。


 ここのところ新とアルパカは生活とイベントにかかりきりで緑風公園に毎日顔を出すというわけにはいかなくなっていた。


 来ても一本勝負をして、軽く雑談するとすぐさまイベントに向かってしまう。


 正直SAIには寂しい気持ちもあった。


 しかしそれでもSAIはイベントに参加する気はなかった。


「本当に良いんですかマスター?」


 ため息を聞きつけた猫耳フードの少女がスマホの中から尋ねてくる。


 可愛らしいその顔がSAIを気遣うように上目遣いで見上げてくる。


 だがSAIの気持ちは変わらなかった。


「ああ。私は今回のイベントには参加しない」


「でもマスターは最近いつも寂しそうです。皆さんはイベントに参加してるのにマスターだけは不参加で………」


 SAIはサングラス型VRグラスの電源をOFFにしてから首を横に振った。


「確かに寂しさはある。でもARATAもアルパカも私に気を遣って一本勝負をしに来てくれるし、なにより………」


 SAIはラプシェを見つめて言う。


「私は君を生死がかかるような危ない目にあわせたくない」


 SAIの眼差しを受けてラプシェはむしろ困惑したように瞳を泳がせた。


「マスター私はゲームキャラクターです。そこまで気を遣っていただかなくても………」


「違うぞラプシェ」


「え?」


 SAIは珍しく屋外でVRサングラスを外してスマホの中の己の相棒を直視する。


 少しでも思いが伝わるようにと。


「私にとってはラプシェはもうただのゲームキャラクターじゃない。家族同然なんだ。もう君がいない生活なんて考えられない。そんな存在が危険な目に合うのを避けるのは当然のことだろう?」


「マスター………」


 指導者ドゥクスの思わぬ言葉にラプシェは感激したように大きな瞳をウルウルと潤ませた。


 SAIが今までに見たことがない表情だった。


 これも今回のアップデートで実装された表情モーションらしい。


 SAIは思う。


 ラプシェは日々人間に近づいている。


 最初は本当に従順で反論することすら無かった。


 しかし今ではSAIの言うことに異を唱えたりすることもある。


 それは彼にとって嬉しいことだった。


 まるで小さな可愛らしい妹の成長を見守っているかのように。


 しかしそれだけに譲れないのだ。


 このまだ生まれて間もない少女を、デスゲームに参加させることなんてできない。


 こんなことで彼女を失いたくないのだ。


 しかし譲れないことがあるのはラプシェも同じだった。


「マスター。マスターのお気持ちは嬉しいです。でも私は………」


「駄目だ」


 SAIはそんなラプシェの言葉を皆まで聞かず断ち切ってしまう。


「イベントには参加しない。この方針は変更しない。分かってくれラプシェ」


「………………」


 彼女は悲しそうに無言で顔を伏せる。


 その姿にSAIの胸は詰まるが彼には分からなかった。


 なぜそこまでラプシェがイベントの参加にこだわるのか。


 それを考えることすらせず、彼はさらに強圧的に言いつける。


 すべては彼女を守るためだと信じて。


「いいなラプシェ」


 少女はもう反論しなかった。


「はい………」


 そう小さく応え頷いた。


 彼女の性格ならここまで言えば頷かざるを得ないことをSAIは知っていた。


 ラプシェのためだ。


 もう一度SAIは自分に言い聞かせる。


 胸の痛みには気づかない振りをして。


というわけで今回はSAI&ラプシェ回でした


なんだか久々の登場という気がしますね


頑なにイベント参加を拒むSAI


そんな彼にラプシェは思うところがあるようです


果たして彼らのイベントはどうなるのでしょうか


その行く先を見守ってください


さて次回は田中さんとあーやの再登場となります


魔法少女あーやと人身狼頭の怪物との対決をガッツリ描きますのでお楽しみにですd(*^v^*)b

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