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第13話 ショッピングモール

「あ! 見て見て新さん! あのぬいぐるみ可愛い!!」


「お、おう。どれどれ?」


 日曜日。


 新は従妹の七花と近場の大規模ショッピングセンター、ガオンモールに来ていた。


 事の始まりはこうだ。


 新がハルと追っているビーストのマーカーがガオンモールに現れた。


 さてどうすんべとそのことをハルと話し合っていたら、ちょうど新の部屋を訪れていた七花が「私もガオンモール行きたい! 欲しい服があるの! 新さん一緒に行っちゃダメ?」と言い出したのだ。


 聞けば日曜はいつも部活(陸上部)の練習があるのだが、顧問の先生が急用で休みになったのだという。


 いつも折につけ朝ご飯を作ってもらったり色々世話になっている七花の望みである。


 否やは無く、二つ返事で承諾した新の前でよほど嬉しかったのか七花はぴょん! と飛び跳ねて喜んだ。


 俺みたいな冴えない奴と買い物に行くのがそんなに嬉しいものだろうか。


 それともそんなに欲しい服があるのか。


 新は首をひねるが、ともかく七花と新は二人で日曜に出かけることになったのであった。


 そして当日。


 新は自宅のアパートから徒歩三分ほどの七花の家に彼女を迎えに行った。


 玄関の門扉の前には、ばっちりおしゃれした七花が待っていた。


 首元に襟があり、裾の方に透け感のある膝より少し上くらいの丈の白ワンピースの上からクリーム色のニットを重ねたコーディネイト。


 襟のついたワンピースの首元には赤地に白い縁取りのリボンを結んでいる。


 清楚ながら凹凸のある体のラインが綺麗に出ていた。


 肩ひものついた白い皮っぽい質感の小さなポシェットも可愛らしい。


 そして最も新の目を引いたのはその髪型だった。


 普段は小振りなツインテールにしている髪を今日はさらりと下ろしているのだ。


 ツインテールのせいもあり、いつもは活発な印象を与える七花だが、このような格好をして髪をおろしているとほんとに清楚な美少女という感じだった。


 そんな従妹を見て思わず新が固まっていると、七花は少し恥ずかしげに頬を染めて「おはよ。新さん」と声をかけてきた。


「お、おう! おはよう!」


 ちょっと見惚れてしまっていたことをごまかすように新は大きめの声で返事をしたが、


「………………」

「………………」


 その後が続かない。


 しばらく無言で見つめ合ってしまう。


 その間七花は髪をいじったり、リボンの端をつまんだり落ち着かなげにしていて、女性経験の少ない新にも流石に彼女が何を言って欲しいのかは察しがついた。


「えと、すごく可愛いね。髪もいつもと違って下ろしてるんだな。うん、すごく良いよ。服もよく似合ってる」


 新が本心からそう言うと、七花は目を丸くし、顔を真っ赤に染めた。


 そして「~~~~~~っ!」という感じで無言のままべしっと新の胸を叩いてくる。


 あれ? なんか間違ったか?


 そのリアクションに新は不安を覚えたが、その後七花はやたらハイテンションになって笑顔を見せていたので特に問題はなかったと考えることにした。


・・・・・・・・・・


 ガオンモールの無料シャトルバスに乗り、二人は目的地に到着。


 ガオンモールは電化店や本屋、ペットショップ、衣料品などありとあらゆる店が軒を連ねる大規模ショッピングセンターだ。


 バスから降りてすぐ目の前がモールの入口。


 ガラス張りの自動扉をくぐり、まず新がしたことはスマホを取り出しビーストの位置を確認することだった。


 しかしガオンモールは5階建てなので、平面で表示されるMAP上ではどの階にいるのかまでは分からない。


 どちらにしてもせっかく来たのに目的地に直行というのも味気ないので、新と七花はウインドウショッピングがてらビースト探しをすることになった。


 生真面目な新は歩きスマホになることを嫌って、SOHを起動したままの端末をポケットに入れ、これも安全のため片耳だけワイヤレスイヤホンを突っ込んで歩くことにする。


 こうしておけばSOHのゲームアプリがビーストを発見したことを音声と振動で教えてくれるのだ。


 法的な規制がさらに強まった昨今、最近のゲームは安全性にもかなり配慮した仕様になっている。


「ハル。ビーストを発見するまでしばらくかかるかもしれないがちょっと待っててくれよ」


 新は一応ハルにもちゃんと声がけをしておく。


 ハルは「いいけど早くしなさいよ」と新を急かすようなことを言う。


 せっかちなライオン娘はなんとなくすでに不機嫌そうだ。


 はいはい、と適当に答えてスマホをポケットに突っ込み、新は七花と歩き出す。


 ティーン女子向けのアパレルショップや雑貨店を何軒か冷やかしつつエスカレーターで上階へ。


 七花の目当てのアパレルショップはもっと上階にあるらしいのだ。


「あ! 見て見て新さん! あのぬいぐるみ可愛い!!」


「お、おう。どれどれ?」


 その道中、二人はゲームセンターの前を通りがかったのだが、そこで七花が筐体の中にぬいぐるみを発見。


 新と七花はクレーンゲームに興じることとなった。


 七花は細い指で100円を投入し、「うーん」「おー!」「あー………」とか言いつつクレーンを操るが失敗。


 次は新が挑戦することになったが彼はそこで店員を呼びつけた。


「すいません。ちょっとあのぬいぐるみもう少し取りやすいとこに置いてもらえますか?」


 堂々と頼むと店員は特に嫌がる様子もなくぬいぐるみを置き直してくれた。


 ちゃんと取りやすいようにぬいぐるみを立てておいてくれる店員に礼を言い、新は100円を投入。


 初回は失敗したものの次のチャレンジで見事ぬいぐるみをGETし、「はい」と七花に差し出す。


「いいの?」


 尋ねてくる七花に頷いてぬいぐるみを渡してやる。


「新さんかっこいい………」


 ぬいぐるみを受け取りながら七花がキラキラした瞳で新を見上げてきた。


 今の一連の流れに何かかっこいい要素があったろうか?


「店員さんにあんなに堂々と置き直してほしいって言うのすごい!」


 七花の言葉にそこかあと新は思わず苦笑。


 実のところこのゲームセンターチェーン店では、店員に言えば普通に置き直してくれるというのを知っていただけなのだが。


 まあ確かにちょっとした度胸は必要かもしれない。


 しかしかっこいいとまで言われると気恥ずかしい。


 新は中学生女子相手に気の利いたことも言えず、キラキラした称賛の視線を浴びながらしばらくモールを歩くことになった。


 そんな風に寄り道もしながら新と七花はようやく目当てのアパレルショップに到着。


 そこは綺麗目のちょっとお高い洋服が並ぶ店舗だった。


 店頭に飾られたひらひらした服の値札を見た新は思わず「おう………」とうなり立ち尽くす。


 ゼロの数が一つ違うんじゃないか? と思わず二度見してしまうほどのインパクトだった。


 手ごろな値段なら、日頃世話になっている七花に買ってやろうかなどと思っていた彼だったが、これは無理そうである。


 新の従妹である七花はアパートオーナーの娘であるから、こんなのへでもないのかもしれないが。


 しかし七花は新に「ちょっとここで待っててね」と言い置いて、服を眺めることもなくずいずいと奥の方に入っていく。


 結構通い慣れた感じの進み方だ。


 気になって新が七花の姿を観察していると、服の隙間から彼女の姿が見えた。


 その周りにあるのは、


「う! 下着か………」


 七花がビローンと広げて見分しているものを認めて新は思わず目をそらした。


 レースのついた可愛らしいショーツとブラのセットを、まるで戦いに挑む武人が武具を見るかのように真剣な表情で選ぶ七花。


 女の子の舞台裏を見ているようで、ちょっと女性経験の少ない男には直視できないシーンだ。


 新は静かにその場を離れ、すぐ近くの書店で立ち読みを始めるのだった。


というわけで今回は七花回でした!


甘酸っぱい青春の香りを感じていただけたでしょうか?w


新は女性経験こそ少ないですが25歳の大人の男性、七花は中学二年生の女の子


こういう年の差がある男女の淡い感情の交流が大好きです


可愛らしい七花だけではなくぶきっちょな新の言動も楽しんでいただけたら幸いです(⌒-⌒)


次回はあのキャラも登場して波乱の予感?! お楽しみに~d(*^v^*)b

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