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第6話 初イベント

 週末がやってきた。


 今日は土曜日。


 SOHの初イベントが開始される日である。


 正午あたりから、三々五々バトルフィールドである緑風公園に集まってきたSOHプレイヤーは皆、今か今かと新イベントの開始を心待ちにしていた。


 そして………。


 予定されていた午後3時。


『お待たせいたしました。今よりSOHの初イベント“ビースト・ハント”を開始します』


 そのような運営のアナウンスとともに公園に歓声が上がった。


 イベント初日ともあって20人ほどが集ったプレイヤー達は、拳を振り上げたりYEAR!!!とか叫んでみたりかなりの盛り上がりである。


 その中に混じった新も目立ったアクションこそしなかったものの、心が躍るような感覚を覚えていた。


 隣にいるSAIも同じ心境だろう。


 歓声を上げたりはしないが、頬をわずかに紅潮させ両拳をガッツポーズするかのように握っている。テンションは高そうだ。


 VRグラス内に表示された運営のアナウンスは続く。


『ビースト・ハントの内容は本日から20日間、各所のバトルエリアに電子の世界から現れる怪物“ビースト”を討伐するというものです』


『期間中常設バトルエリアの他に臨時バトルエリアが設置され、ビーストは各バトルエリア間を移動します』


『私有地などにも臨時バトルエリアが設置されている場合がありますので、その場合係員にSOHのスタート画面が表示されたスマホを提示して、侵入の許可を得てください』


『ビーストにはすでに追跡マーカーが付けられています。追跡MAPを参照の上、マーカーが表示されている場所のバトルエリアでビーストと戦闘を行って下さい』


『ビーストを討伐すると普段よりかなり多くの経験値と、レアアイテムなどをGETできます。腕に覚えのある指導者とニューマノイドは奮ってご参加ください』


『………討伐できないと電子の世界の怪物が現実世界に出てきてしまうかも?』


 ここまで読んで新は「かも?」じゃねえよ! と内心突っ込んだ。

 

 今までだって世界観についてはほとんどアナウンスがないゲームなのである。


 ファンタジーに未来、中世etcetc………、とカオスすぎる世界設定のくせに、いきなりそれっぽいことを言われてもイベントのストーリーに感情移入なんてできないっちゅうの。


 だが討伐の報酬が、普段よりかなり多くの経験値と、レアアイテムというのはなかなか魅力的だ。


 レアアイテム。


 良い響きだ。ゲーマーはこの言葉に弱いのだ。


 だが運営からのアナウンスにはまだ続きがあった。


 それもわざわざ重要と書かれている。


 何事だろうと新は眉をしかめる。


 それは驚くべき内容だった。


『重要:必ず読んで下さい』


『ビースト・ハントには大きなデメリットがあります』


『ビーストとの戦闘においてHPをゼロにされたニューマノイドは死亡。永遠に消失します』


『データの復旧等は一切できません』


『この大きなデメリットを踏まえたうえで、指導者ドゥクスの皆様はイベントにご参加ください』


『なおビーストとの戦闘中は”撤退“タブが戦闘画面に表示されます。撤退タブを押すことでニューマノイドは即座にその戦闘を終了し離脱します。ニューマノイドを守るために有意義にご活用ください』


 新はその一文を読んで呆然とした。


 死ぬ? ハルが?


 撤退タブという安全策は一応講じられているみたいだが、もしタイミングを間違えばハルが死ぬというのか。


「? どうしたのよあんた」


 思わずHOME画面のハルをじっと見つめたまま考え込んでしまった新に金髪の少女が首を傾げる。


「いや、なんというか………」


 そこまで言って新は何も言えなくなった。


 言うべき言葉が見つからない。


 事が事だけに新自身混乱しているようだった。


 新は髪を手で掻き回すと、「とにかく後で話そう。今はちょっと考えがまとまらない」と答える。


「ふ~ん。まあいいけど」


 ハルは不審げに眉を寄せていたがそれ以上何も言ってこなかった。


「新さん」


 声に振り向くとアルパカが困った顔でスマホを抱えていた。


「なんかとんでもないことになりましたね。まさかこんな仕様のイベントなんて………」


「ああ。 正直俺も参加していいものか今のところ判断がつかない。とりあえず家に帰ってハルと相談してみようと思う」


「そうですね。私もカルマと話し合ってみることにします」


「………そんなに悩むことだとは思えないんだけどね」


 カルマはアルパカに内容を説明されたようだが、さばさばした口調だ。いまいちピンと来てないのかもしれない。


「………………」


 新とアルパカが話し合う中、SAIは沈黙していた。


 かなり楽しみにしていたようだから、なおさらイベントの内容がショックだったのかもしれない。


 うつむき、垂れた金髪とグラサンでその表情は見えない。


 見かねた新が声をかけようとすると、


「参加しない」


 突然顔を上げたSAIはきっぱりと言った。


「私はこのイベントに参加しない」


 そう断言するとSAIはどこか怒りを感じさせる足取りで公園を出て行った。


「………」

「………」


 後にはその後ろ姿に手を伸ばしたままの新と、ぽかーんと口を開けたアルパカが残されたのだった。


ついに明かされるイベントの内容!


その衝撃の仕様に新たちのワクワク気分は一気にしぼんでしまいました


困惑する新とアルパカ イベントに参加しないと緑風公園を去ってしまったSAI


果たしてこれから物語はどうなるのか?


乞うご期待です!

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― 新着の感想 ―
[一言] イベントふむふむ、なるほどな、捕まえるの大変そうだな、どんな展開になるのかな、という流れの中の、デメリットの説明。 あまりの衝撃展開に、まだまだ自分の想像力も甘いなと感じるほどでした! …
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