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第4話 刀使い

  VRグラスをかけ、ワイヤレスイヤホンを耳に装着した新が、手にしたスマホの画面、対戦開始タブをタップする。


 いつもの見慣れた緑風公園があっという間にVR空間に変換された。


 そこに二人のニューマノイドが電子的に構成されるかのような演出で召喚される。


 一人はライオンのたてがみのような長い金髪をたなびかせ、程よく筋肉のついた体を青灰色の近未来的ボディースーツに包んだ、気の強そうな釣り目の少女、ハル。


 そしてハルに正対するように現れたのは癖のある黒髪をした褐色肌の青年だった。


 切れ長のアイラインと長いまつげ。


 瞳は闇のように深い黒だ。


 フェイスラインはしゅっとシャープな線を描いている。


 185cmはあるかという高身長の美青年だった。


 青年は体にフィットした純白のコートを身にまとい、その広い肩には戦国武将が甲冑の肩部に着けているような防具(袖というらしい)を装着している。


 その装いは和洋折衷という感じだ。


 そしてその特徴を決定づけているのは腰にいた日本刀だった。


 納められた鞘からして80cmほどの長さの刀。


 分類的には太刀と呼ばれる刀剣だ。


「刀使いか………」


 思わず新はうなった。


 リーチの短い徒手格闘を得意とするハルにとっては、リーチのある刀使いは一目で厄介そうな相手だ。


「ナギ。初めての相手だし慎重にね」


 モフリンがナギと呼ばれた青年型ニューマノイドに声をかける。


「承知」


 ナギは低音のイケボで短く答えると、左手で刀の鯉口を切り右手ですらりと太刀を抜いた。


「!」


 太陽の光を受けて青く輝くその刀身に思わず新は息をのむ。


 今までハンマーや弓矢の使い手と戦ってきたが、やはり刃物は本能的な恐怖を喚起させるものだった。


 Ready Fight!!


 そんな新の思いをよそに戦いの開始が告げられる。


 その瞬間ハルが一瞬水色のオーラに包まれた気がした。


 なんだ?


 新は怪訝に思うが、すぐに思考を切り替える。


 気にはなるがそれより今は目の前の戦闘だ。


 刃物を前に少しはすくむかと思われたハルは、


「はああああ!!!」


 いつものように開幕ダッシュをかけていた。

 

 ハルのこのあたりの単純さというか、恐れ知らずなところはこういう時には非常に頼もしい。


 そしてハルも猪突猛進なだけではなくなっている。


 太刀を中段に構えたナギの視界から突然ハルが消えたのだ。


「ぐっ!」


 直後ナギの右足に衝撃。


 ラプシェ攻略のために新が考案したサッカーのスライディングのように足を攻撃する、スライディングキック。


 ハルのスピードで繰り出されるこの攻撃を初見で回避するのは難しい。


 ナギもまんまと喰らい、態勢をぐらつかせる。


 そこに両手を床についたハルの伸び上がるような両足キックが叩き込まれる。


「くっ!」


 それをかろうじて両腕をクロスして防御するナギだが、ハルの攻撃はそこで終わらない。


 キックした勢いそのまま両手を軸に回転し、まるでブレイクダンスのようなスピンキック!


「つっ!!」


 脇腹に叩き込まれた蹴りにナギがうめく。


 ナギは叩き込まれた足を苦し紛れにつかもうとするが、その時には彼の体を蹴るようにしてハルは距離をとっていた。


 態勢を立て直しナギを前に隙なく拳を構える。


 ハルはここまでノーダメージだ。


「ほええ~」


 怒涛のような連続攻撃を見せつけられたモフリンが、呆けたような声を漏らす。


 新には見えないようにHPゲージを非表示設定にしているが、この一瞬でHPの5分の1を削られていた。


「………強い」


 戦闘前より険しい顔をしたナギがつぶやき太刀を構え直す。


「おお………!」


 ハルの指導者ドゥクスであるはずの新までも感嘆の声を上げていた。


 スライディングキックからの連続攻撃がはまった。


 しかも今日のハルはなんだか動きが良い気がする。


「よし! 良いぞハル!!」


「ふん! 当然よ!!」


 鼻を鳴らすハルだがその表情は完全にドヤ顔だ。


 表情モーションの追加でドヤ感も増している気がする。

 

「ナギ。相手はかなりトリッキーな動きをするよ。惑わされないように落ち着いて対処するんだよ」


 モフリンがナギに指示を送る。


 もっとテンパるかと思ったが、落ち着いた声音だった。


 何かスイッチが入った感じもある。


「承知」


 ナギも呼応するように剣を構える姿に気迫が増した。


 すっ………。


 今度はナギが動いた。


 流れるような動きから太刀が振るわれる。


「わっ!」


 今までと違う間合いにハルが戸惑いガントレットで防御するものの、長い刃で肩を切られる。


 さらにナギは瞬時に刀を引き今度は突きを繰り出す。


 ハルは身をよじるようにしてかろうじて避けたが、ナギは再び太刀を引き刺突。


 今度はまともに食らい、右の鎖骨あたりに太刀の先端が突き刺さる。


「くうっ!」


 ハルの表情が苦悶に歪む。


 そして突然刀が青いオーラをまとった。


 EXスキル!


「まずい! ハル後ろに………!」


「『豪切斬!!』


 新の警告は半歩遅い。


 ナギの声が響き、突き刺さったままの太刀がハルの体内を切り進み脇腹に抜けた!


「ぎゃあああ!!」


 ハルが盛大な悲鳴を上げる。


 リアルなら即死してもおかしくない攻撃。


「こんの!!」


 しかしこれはゲーム。ハルはまなじりをきつく眇めると、EXスキル直後の技後硬直で動けないナギに前蹴り!


「ぐっ!」


「ハル今だ行け!!」


 腹にしたたか受けたナギが体を折る間に、新の指示を受けたハルの拳が青いオーラに包まれる。


「『フォース・フィストおお!!』」


 横殴りの一撃!


 横っ面をフック気味に殴られたナギの体がフォース・フィストの威力で流れる。


 ナギは朦朧状態に陥ったようで反撃してこない。


 数歩たたらを踏んだ黒髪褐色肌の青年へ素早く間合いを詰め、技後硬直を終えたハルはさらに嵐のような拳の連打を加える。


 成すすべもなく猛攻を受けたナギがようやく両腕を上げ防御態勢をとるが、もう遅い。


「決めろハル!!」


「『フォース・フィストおおーーーー!!』」


 ハル渾身の左拳。


 防御の上から止めのEXスキルがナギのHPを削り、ナギは力尽きたように緑風公園の石畳の上に崩れ落ちたのだった。


・・・・・・・・・・


 挿絵(By みてみん)



ナギのイラスト


ハルVSナギ! いかがだったでしょうか?


多分これまでの傾向からして負けるんじゃないかと思っていた方も多いと思うんですが、勝ってしまいましたねw


それには理由があるんですが、皆さまお気づきになったでしょうか?


その謎はあとあとまで引っ張ろうと思っているので、今ここでは明かしません


皆様もハルに何が起こっていたのか考えてみてくださいねd(*^v^*)b

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― 新着の感想 ―
[良い点] 刀使い!! [一言] 誰、このイケメン。
[良い点] 1章から今話まで一気読みしました! 以前より宣伝はお見掛けしていましたのでVRゲーム物だとは知っていたのですが、よくあるフルダイブ型じゃなくて屋外プレイだというのには驚きました。 あと、結…
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