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第25話 タレント

 SOHで連敗の泥沼にどっぷりハマってしまった新は、貯めていたスキルポイントでハルを強化することを思いつく。


 順調にスキルアップを施し、次はアビリティーを取得することにした。

「とりあえずハルのアビリティーを確認しないとな。投げ技の才能は持ってなかったと思うが………」


ハル 所持アビリティー


 攻撃力UP LV1 / 防御力UP LV1 / 拳撃の才能 / 蹴撃の才能


「やっぱ持ってないな。ならまずは『投げ技の才能』を取らないとな」


 SOHではデフォルトのトランクスキル以外を覚えるためには、アビリティーポイントを使ってそのトランクスキルの『才能』を取得する必要がある。


 例えばハルがデフォルトで持っていない弓術を取得しようと思うと『弓術の才能』というアビリティーを取らなければいけないわけだ。


 この『才能』をアビリティーで取得できるシステムによってSOHでは、剣士であっても魔法を使えたり、カルマのように弓使いだが投げ技を使えるようにしたりと、もともと用意されていたキャラクターの戦闘個性にカスタマイズを加えることが出来るようになっている。


 しかしアビリティーポイントはスキルポイントより集めにくい。


 そのためLVUPに従ってアビリティーポイントを得るSOHでは、アビリティーの取得には細心の注意が必要だ。


 いざ必要になって新しい『才能』を取得しようと思ってもアビリティーポイントが不足する可能性があるからだ。


 だけどハルは近接戦闘を得意とするニューマノイド。


 近接戦闘のスキルである投げ技は取っておいて損はないだろうと思われた。


「ふーむ。結構かかるな。今持ってるアビリティーポイントほぼ全部じゃないか」


 ブツブツ言いながら新はアビリティーポイントを使用して投げ技の才能を取得。


 すると、『投げ技の才能を取得したことにより、トランクスキル 投技 LV1 を身に付けました』というシステムメッセージが表示された。


 事前に新が読んだwikiにあった通り、才能を取ればそのトランクスキルのLV1が勝手に身に付くらしい。


 これでハルは投げ技スキルを使えるようになったわけだ。


 しかしスキルレベルはわずか1LV。


 やはりもう少しスキルアップしてから使った方がいいだろう。


「育成はまあこんなもんかな」


 次レベルが上がったら投げ技を強化しよう。


 心に決めつつ、SOHを閉じ、もう少しwikiを読んでみることにする。


 するとSOHニューマノイド一覧というのがあった。


 SOHの広告やツイッターで見かけた2、3人は新も知っていたが、他にどんなニューマがいるのか興味があったので見てみる。


 ラプシェ型、カルマ型というように、変更する前のデフォルト名がそのニューマの種類として書かれていた。


 というか、と新は苦笑する。


 カルマもデフォルトのままだったのか。


 SOHではカスタマイズ機能でニューマの名前を変えることが出来るのだが、SAIのラプシェもデフォのままだし、新も初期設定から変えていない。


 このあたりの無頓着さはやはり仲間になっただけあって似ているのかもしれない。


 そんなことを考えて思わず笑ってしまいながら、新は一覧の中に自らの相棒であるハル型の名前を探す。


「あれ? 無いな」


 現状wikiに十種ほど書かれているニューマの中にハルの名前は無かった。


 まだwikiが出そろっていないのかもしれないと新は納得する。


 それより知りたいことがあった。


 ラプシェとカルマのデータだ。


 何回か対戦してなんとなくどんな戦闘スタイルかは把握していたが、新は彼女らの基礎能力を知りたいと思っていた。


 例えば素早さとかパワーとか。


 しかし各種ステータスはLVによって違ってくる。


 LVUPとともに上昇するからだ。


 だが参考になるデータは存在する。


 タレントと呼ばれる各種ステータスの伸び率を示したパラメータだ。


 それは自分のニューマノイドならステータス画面でいつでも確認できる。


 例えばハルのタレントはこうだ。


 ハルのタレント


 (ちから) B / 早さ A / 固さ C / 賢さ E / 体力 C /

精神力 A


 A~Eまであるこれらのタレントのランクはそれぞれ、力が攻撃力、早さが戦闘時のスピードや回避力、固さが防御力、賢さが魔法などの攻撃力、体力がHPに対応しているらしい。


 精神力も何らかに対応しているのだろうが、それはいまだ不明だった。


 無論Aが優れていて、Eは劣る。


 これらを踏まえてハルのタレントを見てみると、スピードとパワーに秀でたタイプであることが分かる。


 ただ防御力とHPに不安があるので、力押しの殴り合いには向かないだろう。


 攻撃してはいったん距離を取る、ヒット&アウェイが戦術の基本になるだろうか。


 ハル自身はガチンコ勝負がお望みのようだが。


 新としては頭の痛いことである。

 

「さて、ラプシェのタレントはどんなだ?」


 気を取り直して新はwikiのタブをタップする。


 ラプシェのタレント


 (ちから) A / 早さ E / 固さ B / 賢さ C / 体力 B /

 精神力 C


 こうしてみるとラプシェにカウンター攻撃をさせているSAIの戦術は理にかなっているということが分かる。


 高い攻撃力と防御力を持つが早さに欠けるからだ。


 この最低ランクのスピードでは対戦者を追いかけ回して攻撃を当てるのは難しいだろう。


 それよりは相手が攻撃してくるのを待ってカウンターを狙った方が合理的だ。


 そしてSAIはこの戦術の穴になりそうな、射撃を得意とするカルマにもうまく対応していた。


 弓による攻撃にはカウンター攻撃はできない。


 そのためカルマに対してラプシェは徹底的に防御を固めていた。


 弓は遠い距離から攻撃できるが一撃一撃の攻撃力はハンマーやハルの拳に劣る。


 高い防御力を持つラプシェに防御を固められるとほとんどダメージを与えられなかったのだ。


 そして弓が放つ矢の数には限りがある。


 矢が尽き、止むを得ず近接戦闘などすればあとはラプシェの独壇場だった。


 格闘ゲームならHPを削ってあとはHPの残量による優勢勝ちを狙う手もあるのだろうが、SOHのフルバトルではどちらかのHPが無くなるまで戦闘は終わらない。


 それも考慮したSAIの戦術だった。


「やっぱSAIとラプシェは強いよな………」


 なにより指導者(ドゥクス)とニューマノイドの意思の疎通がなされ、連携がうまく取れているのが強みだ。


 新とハルには欠けている部分である。


 さて次はカルマだ。


 カルマのタレント


 (ちから) C / 早さ B /固さ C / 賢さ B / 体力 B/

精神力 C


 カルマは比較的大きな弱点のないパラメータを持つニューマのようだ。


 やはりその特徴はタレントには表れない弓技のスキルということになるだろう。


 そこそこの攻撃力を持つ弓矢の射撃を、素早く動き回って、チクチク当ててくる戦闘スタイルが侮りがたいのは、新とハルは身をもって知るところだ。


 少しずつ弓矢のスキルも上がってきているようで、動きながらの射撃も徐々に正確になってきている。


 このままではハルは抵抗すらできずに敗北してしまうようになるかもしれない。


 またアルパカのSAI以上に緻密な戦術も脅威だ。


 彼女はまるで詰将棋のようにハルを的確に追い詰めてくる。


 日々カルマと綿密な打ち合わせをしていることがうかがわれた。


 反面、予想外のことが起きるともろい部分もあるのだが、新とハルではその弱点を突くほどの連携はできなかった。


 こうしてカルマやラプシェのタレントを見ながら彼らの戦闘スタイルを考察していると、新には見えてくるものがあった。


 それと同時に、ハルのスキルアップはしたものの、このままでは勝つのは難しいということも分かってしまう。


 そんな状況を打開するための鍵はやはり新とハルの連携。


 具体的には新がハルと戦闘の作戦を話し合い、戦闘中にはそれに沿った指示を出すことだろう。


 SAIやアルパカとの一番大きな違いはそこだ。


 新にはその違いが連敗の大きな要因になっているように思える。


 しかし、作戦を話し合おうにもハルは誰の指示も受けないと言い、実際そうしている。


「………いったいどうすりゃ良いんだ?」


 スマホを手に握りしめ、ひとり呟く新に答える者は、誰もいなかった。


というわけで説明回終了です


次回は戦闘回になります


果たして成長したハルは勝利を収めることができるのか?


その結果を是非ご覧くださいd(*^v^*)b

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― 新着の感想 ―
[良い点] タレント、という馴染みのあるワードを使って能力分析。非常に分かりやすいし、アタマに残る。これまでに読者も想像したであろう各陣営の戦闘能力は、具体的な評価ポイントを通して明示された。これから…
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