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第21話 対策

アルパカの相棒(パール)カルマの変わり様に驚いた新だったが、その原因も判明しお祈りも済んだところで対戦を始めることにした。


対戦形式は一本勝負である。

「ハル! 頼むぞ!」

「今日も勝あ―――――つ!!」(聞いてない)


 とりあえずテンションだけは高い新・ハル組。


「カルマ打ち合わせ通りにお願い!」

「分かった」


 アルパカの声にカルマはすっくと立ち上がり弓を構えた。


 その表情に先ほどまでの欝っぽい雰囲気はない。


 彼は切り替えが早いというか、ON・OFFがはっきりしたタイプなのかもしれない。


 キリッとした表情でハルを見据えるカルマの姿は、イメチェンの効果もあってなかかなかカッコいい。


 そして、Ready Fight!! の掛け声とともに戦いが始まった。


 ほとんど同時にハルがカルマに向かって馬鹿の一つ覚えみたいに突進していく。


 対するカルマは落ち着いた仕草でまずは第一射。矢を放つ。


「っ!!」


 矢はぶっすりとハルに刺さったが、その場所は体の前面を守るようにかざされた腕。


 クリーンヒットとはみなされなかったようで『有効!』というシステムメッセージとボイスが流れる。


 どうやら一本勝負には柔道の試合の様に有効や技ありなどの判定があるようだ。


 しかも見たところ制限時間はない。


 どちらかが一本取るまで勝負は続くようだった。


 ともあれラプシェ戦のように初手で一本取られなければ、ハルにも分がある。


 弓には矢をつがえ、射るという動作が必要だからだ。


 間合いさえ詰めてしまえば、矢をつがえている間にハルは攻撃を加えられるはずだった。


「またボッコボコにしてやるわ!!」


 物騒なことを言いながらハルは自分の攻撃範囲まで間を詰めようとする。


 しかし矢による攻撃を受けたことによって僅かに疾走が止まった間に、カルマは移動。彼女から距離を取っていた。


 そしてさらに移動しながらの第二射。


 しかしその矢はハルを外し地面に突き刺さる。


「やっぱり移動しながらだと命中率が下がるね」


 眉をしかめたアルパカが難しげに呟く。


「でもそのままでいいよカルマ。とにかくハルから距離を取って懐に入らせないで!」


「了解」


 答えた少年ニューマノイドが小柄な体で軽快に移動しつつまた矢をつがえる。


 なるほどそう来たか。新は(ほぞ)を噛んだ。


 ハルの単調な攻撃パターンを念頭にアルパカとカルマは対策を練ってきたのだ。


「こんの! ちょこまかと!!」


「それはこっちのセリフだよ。黙って死んでよ」


 言葉の応酬をしながら二人はVRの公園内を疾駆する。


 カルマが走りながら放った数本の矢が外れていた。


 敏捷性に優れるハルを自身も走りながら矢で捉えるのはやはり難しいらしい。


 カルマは間合いを詰められそうになりながら、公園中央の噴水を回り込みさらに矢を射る。


 苦し紛れに見えるその攻撃をハルは難なくごついガントレットで振り払う。


 さらにハルは水の噴射されていない噴水を大胆に突っ切り、水面を蹴立ててカルマに迫る。


 その瞬間VRグラスの内側のアルパカの瞳が光った気がした。


「そこ!!」


 アルパカの叫びと同時に、カルマが矢を放つ。


 それは噴水の水に入ったために移動力の鈍ったハルの肩口に突き刺さった。


「ぐっ!!」


 ハルのうめき声とともに『技あり!』の判定。


 アルパカとカルマは地形効果も上手く使ってきている。


 捕まる危険を冒してまで噴水を回り込んだのは、ハルに噴水を突っ切らせ移動力を低減させるためだったのだ。


 ハルはまんまとその策にハマったというわけだ。


 彼女はやはり馬鹿正直に過ぎた。


 まだアルパカとは二戦目だというのに、動きの傾向を読まれてしまっている。


 これではいい的だ。


 くそ。せめてフェイントを入れるとか工夫しないと厳しいぞ。


 新はハルに何か助言をしようと口を開きかける。


 その時。


『あたしの戦いはあたしだけのものよ! 誰の指図も受けない!!』


 脳裏に先日のハルの言葉がよみがえり、新は口を閉ざした。


 きっと自分が何を言ってもハルは従わない。


 俺は一方的になりつつあるこの戦いを見ていることしかできない。


 そんな思いが募り、新の胸にどうしようもない焦燥感とじれったさが満ちていく。


「あんたじっとしてなさいよ!!」


 そんな相棒(パール)の胸中も知らず、ハルは鬼のような形相でカルマを追い掛け回していた。


 完全に頭に血が上っている。


 ゲームキャラクターだからそもそも血は流れていないはずなのだが。


「じっとしているわけないだろう? 君、馬鹿じゃないの?」


 そんなハルを鼻で笑って、カルマは命中率度外視で矢を放ち続ける。


 クイックショットとでも言おうか。


 この間戦った時に見せたじっくりと狙いを定める射撃ではなく、手数を重視した攻撃だった。


 一方すでに技ありと有効を取られているハルは、もう一回も攻撃を受けられない。


 そのせいか自慢のスピード速攻も出足が鈍っている。


 しかしその時だった。


「ちっ!」


 唐突にカルマは顔に似合わない舌打ちをし、矢を放つのをやめた。


 いや、違う。


 やめたのではなく撃てなくなったのだ。


 見れば背中に背負った矢筒が空になっている。


 どうやら矢は無限に湧いて出てくるわけではなかったようだ。


 これはハルにとってのチャンスだった。


「ハル! 今だ! 畳み掛けろ!!」


 思わず叫ぶ新。


「あたしに命令しないで!!」


 反駁しつつ猛スピードでカルマに接近するハル。


 再び舌打ちしつつカルマは弓をぽいっと捨てた。


 そして頼りなく見える小柄な体で徒手空拳を構える。


「どっせーーーーいい!!」


 ハルは一切容赦なく彼の顔面に体重の乗った拳を叩き込もうとする。


 だが、


「カルマ!!」


 アルパカの鋭い声が飛ぶ。


 刹那カルマの眼前に迫ったハルの腕にするりと彼の腕が巻き付き、その体が素早く彼女の懐に潜り込む。


 次の瞬間、高々とハルの体が宙を舞う!


「!!」


 思わず目を見開く新の前で、成す術も無く「ギャン!」という犬のような悲鳴とともに相棒の体が石畳に叩きつけられた。


 それは見事な一本背負い。


『技あり! 合わせ一本!! WINNER カルマ!!』


 呆然とする新のVRグラスにシステムがカルマの勝利を宣言した。



・・・・・・・・・・



カルマ全身イラスト



挿絵(By みてみん)

というわけで今回はアルパカ・カルマ組のリベンジ戦をお送りしました


前回一瞬で終わってしまった一本勝負ののシステムもようやく説明できましたね


そしてカルマの全身イラスト公開です


イメージはソーシャルゲームのゲームキャライラストです


他のニューマも順次公開していく予定ですd(*^v^*)b

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― 新着の感想 ―
[良い点] 前回の戦いで思い知らされた不安要素が噴出、負けるべくして負けた新・ハル組。新の経験不足も相まって、口論の末にビミョーな信頼関係に陥ったふたりがアルパカ・カルマ組を打ち負かせたとは思えない。…
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