第17話 メッセージ
SOHサービス開始から三日目。
アルパカという新たなSOHプレイヤーと出会った次の日。
新は朝からバイト漬けで午後六時までみっちり働いたため、SOHをプレイすることはできなかった。
一応ハルに、「今日は忙しくて対戦できそうにない。悪いな」と謝っておいた。
すると彼女は、「まあそういうこともあるでしょ。残念だけど仕方ないわ」との答え。
また罵詈雑言が返ってくると思っていた新は拍子抜けだった。
意外とこういうリアルの事情には理解があるのかも知れない。
また、昨日戦闘方針を巡って、喧嘩みたいな言い合いをハルと新はしたのだが、ハルは特に気にしていない様子だった。
新はそのことにも安心した。
・・・・・・・・・・
バイトからヘロヘロになりながら自宅に帰る。
途中休憩はあったものの、やはり九時間労働はなかなかしんどい。
新にはとても自炊をする気力はなく、今日も今日とてインスタントラーメンをすすっていると。
ピローン☆
電子音。
何事かと思い、スマホを見てみると、ずらりと並ぶアプリのSOHアイコンにメール着信の知らせ。
ペットボトルからウーロン茶を飲みつつ、新はSOHを起動し、メッセージアイコンをタップする。
SAIからメッセージが届いていた。
SAI:こんばんは。初めてメッセージする。
今緑風公園にいるんだが、今日は来ないのか?
新は眉根を寄せた。
もしかして俺を待っていたんだろうか?
だとしたら悪いことをした。
あいつ引っ込み思案でシャイだから、下手をしたらずっと一人でポツーンしてた可能性もある。
新は一度箸を置いて文面を考え、メッセージを返信した。
ARATA:今日はバイトで疲れたから行かないつもりだ。悪いな。
すぐに返信が返ってきた。
SAI:そうか。では私も帰るとしよう………。
三点リーダーがそこはかとなく切ない。
新はフォローを入れることにした。
ARATA:明日は休みだから行くつもり。SAIは時間あるか?
良かったら待ち合わせて対戦しよう。
またすぐに返信が返ってくる。SAIは文字を打つのが早いらしい。
SAI:それはいいな! 私も明日一日は空いている。
昼頃に待ち合わせて対戦しないか?
残った時間はまたゲームの話などできれば嬉しい
昼頃か。
ふむ、新は一人頷く。
ARATA:じゃあそうしよう。
12時頃待ち合わせでいいか?
SAIからOKの返事。
それからしばらくたわいない会話を交わしてメッセージを終了した。
なんかこういうのって友達って感じだよな。
新は一人ニマニマしながら、すっかり伸びて冷め切ったラーメンをすする。
ラーメンを食べ終わり、プラ容器を洗っていると、またスマホに着信があった。
「ん? またSAIか?」
手を拭きながら新はバイト先の可能性もあるなと考える。
明日緊急でシフトに入れとかありそうな話だった。
首をひねりながら画面を見ると、またSOHのアイコンに着信の通知。
SAIが何か言い忘れたことでもあったのかと、メッセージ画面を開くと白いモフモフした動物アイコンの人物からのメッセージだった。
昨日出会ったばかりのアルパカからだ。
アルパカ:ARATAさんこんばんは。
突然メッセージしてすみません。
また対戦していただけるとのことでしたので、相談したくて。
今よろしいですか?
新は、あれ? アドレス交換したっけ? と思いながら返信。
ARATA:いいですよ。というか俺のアドレスよく分かりましたね?
アルパカからの返信はしばらくかかった。といっても一分ほどだが。
アルパカ:え? メッセージは対戦履歴の対戦者リストから送りたい人を選べば送れますよ?
新は驚いた。
ARATA:え? そうだったんですか?
俺SAIとアドレス交換したよ
アルパカ:もちろんそれでもできますよ。
でもリストからのほうが簡単なので。
新は言われた通りの操作をしてみた。確かに簡単だった。
今後のために覚えておこう。
ARATA:便利な機能があるもんだなあ。
それで相談って何かな?
アルパカ:明日時間が空きそうなのでSOHの対戦をしたいなと思いまして。
これはいいタイミングだった。
新はSAIと約束していることをアルパカに告げ、彼女は午後一時に公園に来ることになった。
新とSAIは少し待つことになるが、それこそ雑談でもしていればすぐだろう。
アルパカ:では明日公園で!
今度は負けませんよ┗(`・ω・´)┛
力こぶ絵文字入りのメッセージを見て思わず笑みを浮かべながら、新はこう返した。
ARATA:こっちも負けませんよ!
明日の対戦を楽しみにしています!
メッセージを終えた新は自分がニマニマしていることに気づいた。
やはり女の子とメッセージでやり取りできたことが嬉しかったらしい。
男子同士の会話も気兼ねがなくていいものだが、女の子と会話するとなんとなく潤いを得ることが出来る気がする。
まあモテない自分だからそう思うのかもしれないが。
どちらにしても。
「明日が楽しみだな」
そう思えることが新には嬉しかった。
今回はメッセージのお話でした
新しい知り合いとメールやツイッターのリプで話したりするのはワクワクしますよね
そんな感覚が表現できていれば嬉しいです
そして次回は従妹の再登場です お楽しみに~d(*^v^*)b




