イントロダクション
新の頭に血が昇った。
どうして分からないんだ。
少しでも俺の話を聞こうとしないんだ。
そんなに俺が嫌いなのか。
そんな思考がぐるぐると頭を巡り胸を焼き口からあふれ出た。
「なんでそんなに意固地なんだよ!! 俺の指示を聞くのが何でそんなに嫌なんだ!!訳が分からねえよ!! 指導者とニューマがこんなんじゃ勝てっこねえよ!! お前は勝ちたくねえのかよ?!」
思わず叫んだ新の前、スマホの中のハルがすごい勢いで振り返った。
「勝ちたいわよ!! 勝ちたいに決まってるでしょう?! あたしは勝ってもっと強くなりたい!! あたしにはそれしかないんだから!!」
「なら………」
「でも嫌だ!!」
全てをぶちまけるみたいにハルは叫ぶ。
「あんたの指示に従うなんていや!! あんたじゃなくても誰の指示に従うのもあたしは嫌なの!!」
子供のようにいやいやと頭を振る。
「だって誰かの言いなりになるならあたしの意志なんていらないじゃない!! あたしが居なくてもいいじゃない!! あたしはここにいるのに!! ここにいるのよ!!」
ぎゅうっと胸を掴み支離滅裂になりながらも、ハルは必死に………、そう必死に叫んでいた。
そして決定的なその言葉が放たれた。
「あたしはあんたの操り人形じゃない!!!」
「………!!」
その瞬間新の胸に何かが刺さった。
それは皮膚を突き抜け心臓を貫き、新の深い深い場所にぐさりと突き立った。
今まで感じたことのないその痛みに何も言えなくなる。頭が真っ白になる。
スマホの画面の中ではハルがまだ新を睨み付けていた。
新はハルが泣いていると思った。
涙は流れていないけど彼女が泣いていると。