真っ白な世界で私は誰? 練習用プチ連載小説
「ここは一体何処なんだか……」
今俺はなんか一面真っ白な部屋? 空間にいる。
下を見れば真っ白、上を見ても真っ白、そして横、後ろを見ても真っ白な世界が広がっていた。
地面何処だよ……俺の目がおかしくなったのか? ……いやそうか! これは夢だ! 夢に違いない!
そう考えた俺は頰をつねろうとしたのだが……
……待て、手がない……? へ!? いや待てそもそも自分が元はどんな姿だったのか覚えてない? いや違う……分からない……? どうなってんだ。頭がどうにかなりそうだ……。
その後も周りが真っ白な世界の中で男? の混乱は続き、おそらく三十分の時間が流れた
状況を把握しよう。まず、ここには白色以外に何もない。地面もある気がしないし空もない気がする。方向感覚もないし、俺自身の体もないし、感覚もないし、顔もないし、頭もないから髪もない、血も涙もない。
ないないだらけの原因は全て、この作者が描写を面倒くさがったからに違いない! そうだ思い出した! 私は小説を書くための練習をするために作られた【キャラのなり損ない】だ! ……自分で言ってて虚しくなるが……そしてこの世界? 空間は【白紙の原稿用紙】つまり何も文字を書いていない状態だ。
だからこの空間には決定的に足りないものがある。それは白以外の色だ! まだこの原稿用紙には何も書いていないから、この世界は白いんだ。
と、なり損ないが思った時、突然なり損ないの目が(まだないけど)黒いものを捉えた。
なり損ない言うな! もともとお前が原因でなり損ないになったんだろうが、せめて思考生命体とかにしろ!
……五月蝿い奴がそんな文句を言っていると(口もまだないけど)黒いものはその五月蝿い奴に近づいていった。
うるさい奴って……まぁさっきよりはマシだが……それで、何? 黒いもの? どんな感じの奴なんだ?
五月蝿い奴が今自分に向かって近づいて来る黒いものを良く見てみると、それはこの真っ白な世界では一際目立つ、黒い球体だった。
黒い球体? いやそれよりもこれ私から見たら、私が黒い球体に近づいているのか、それとも黒い球体が私に近づいているのかよく分からないぞ。
……先ほど述べたように、黒い球体がその五月蝿い奴の一メートルくらいまで近づいたと五月蝿い奴が思った次の瞬間、この真っ白な世界を蹂躙するかのように、その黒い球体は形を崩し、侵食していった。
そして如何やらこの五月蝿い奴は、人の話は聞かないタイプのようだった。
失礼な! お前が、黒い球体が私に近づいてきているってことを言っていることくらいちゃんと聞いているわ! ただ、これは私から見たらどっちかよく分からないよね? っていう意味で言ったんだよ!
そう五月蝿い奴はピーチクパーチクとうるさく文句を言っている間にも、それは黒く塗りつぶされていき、輪郭が徐々に明確になっていく。
まったくなんなんだこの扱われ方は……私は待遇の向上を要求するぞ! ハァ……って、んー!? これ如何なってんの!? えっこれって私の体だよね? なんで私が私の体全体を見ることが出来るんだ? 一体私の目って何処にあるんだ……。
五月蝿い奴が自分の目は何処にあるのか疑問に思った後、黒の侵食は動きを止めた。これで完成だと言わんばかりに。
えっ……いや、嘘だろ? これは……お前適当にも程があるだろ……
それは黒くて、形に歪みはなく、長さや角度にも狂いはない、完璧な正六面体だった。
これが私の体って……流石に適当過ぎるだろーがああぁー!
その叫びは口がないため、この真っ白な世界では響かなかった。
余計なことを言わんでいい!
つづく