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練習用短編小説集(?)&執筆者の戯言  作者: 時代
それで書けなくなったら意味がない
15/26

ススワタリだらけの空間は心臓に悪い 練習用プチ連載小説

 


「べグハッ……うぅ〜落とした穴かと思ったけど、意外と底は浅かったみたいだな……」


 で、ここは一体どこだ? 辺り一面真っ黒なんだけど。

……まさか、今見てるのは全部ススワタリ(まっくろくろすけ)ってか?


「それなら、ススワタリ達が全員一斉に目を開けて俺を凝視してくるのに対して、俺はそれにびっくりして驚けばいい訳だな? よし分かった。いつでも準備はいいぞ? どうした? 早くしろ!」


 この暗闇からたくさんの目が同時にこっちを凝視してくることを想像したら鳥肌立つ。だから頼む、そんな恐怖早く終わらせてくれ……!


 思わず恐怖で体が震えた。しかし、待てよ。

 そもそもここは電気が付いてないからススワタリ達が目を開けたとしても、俺にはそれを見ることが出来ないじゃないか。

 そう考えるとなんだか恐怖が引いてきた。やった! それなら安心出来る——って、んな訳ないだろ! むしろ恐怖が倍増するわ! だって俺には見えないだけでススワタリ達は既に俺を凝視しているかもしれないってことだろ!? むしろ見えた方が……いや想像したらまた体が震えてきたからやっぱり見えない方がいいや……


 そんな馬鹿なことを考えていると、少し冷静になれた。そもそもこんなところにススワタリなんているわけないじゃないか、混乱し過ぎだろ俺。まあ、訳の分からない場所だから、ススワタリがいるって思ったりもするかな?


 でも冷静になって考えてみたら不思議だな、こんな暗闇でも、自分の体が見えるのか……。


 そう思いながら俺は自分の右手を曲げたり伸ばしたり捻ったりして動きに支障がないか確認した。


……え?


 自分の体が見える……? ということは!? 今見ているこれは暗闇じゃなくて、やっぱりあのススワタリかもしれないってことか!?


 どうやら沢山の目が同時に俺を凝視してくるという可能性は未だ健在のようです。




 なんてな。可能性があっただけで、もう俺はこの暗闇がススワタリとかじゃないことを確信している。

 手を前に出しながら歩くと、壁らしきものがあることが分かった。その壁らしきものはコンクリートみたいに硬くて冷たいものだった。それじゃあなんでこの壁が黒いのかということだけど、それはコンクリートに黒いペンキとかを塗ったからだと予想した。


 だから、ここは黒い壁に床、天井の部屋、というわけだ。

 ススワタリとかじゃない。ちなみに床には自分の部屋にあった白いクッションとテレビのリモコンが落ちていた。

 スマホは落ちていく中でも離さなかった。

 しかしいざ使おうと思ったら、画面に電池のマークが出てきた。


 電池切れだ。そういえばスマホの電源が切れたからクッションを投げたりなんかしたんだった。


 ちなみに、部屋を出る扉などは見つからなかった。



 俺、このままここで餓死して一生を終えるのかな。誰もいないし、スマホは電池が切れてるし、テレビのリモコンはあってもテレビがないから使えない、あとは……このクッションでくつろぐしかないか……。


 白いクッションを枕にして目をつぶり、ぼーっとしながら考えた。


 この状況は、何者かに誘拐されて人質にされているんじゃないか。

 この状況はこれは神隠しじゃないのか、と。

 色々なことを考えていると当然、あの可能性にも行きついた。


 転生、もしくは転移か……でもこんな状況あったか? 神様いないし、それにここ黒い部屋だし、魔法陣的なもんもなかった。転生とかではないかもしれないなぁ。


 そう思っていた。この時までは。


 しかしどうやら今回もその転生や転移の類らしい。


 ふと目を開けて見たら目の前の壁に『おめでとう』の文字が、その下を見れば『転生、もしくは、転移が出来ます』という文字が。


 男は起き上がって、その文字をまじまじと見た。


「マジか……別にトラックに轢かれてないし、神様のミスかなんかで死んだ訳じゃない俺が?」


 信じられない……あぁ、もしかしてドッキリか? それならカメラをさが——


「…………」


 男が周りを見ようとして、それを見た瞬間、思考は止まり、声も出さずにただ体をびくっとさせたあと全く動がなくなった。


 男が見たもの、それは壁についている大量の目達だった。


 壁についている大量の目達は、いずれも男の姿を捉えていた。そのため男は——

 この大量の目はススワタリか!? なんか、今凄く「おめえ、ここに何しにきた」って目から責められてる感じがする……!

 いや、気のせいだ。はは、そんなことある訳ないだろ……でも、もし気のせいじゃなかったら……


 そう考えると、男は寒気を感じ、大量の目達に話かけ始めた。


「……あのー、ススワタリさん達ですか? すみません。勝手に入って来ちゃって……ちょっと、気づいたらですね、ここにいたんですよ! 本当です。信じてください! お願いします!」


 そう言い終えた後、頭を下げながら男の頭の中はこれまでの人生でこんなに頭が回ったことは初めてじゃないかというくらいに回った。


 なんで俺は今こんな訳の分からないところでススワタリ? に謝ってんだろう。そもそもなんでここに来たんだっけ? あれ、俺なんでクッションに寝転がってたんだっけ? おかしいな、さっきまでソファに——


 男の頭は大いに混乱した後、真っ白になってしまった。



——————



 そんな男の様子を見ていた目達は、互いに目配せをして、テレパシーを行なっていた。


『何故この男は我らに謝っているのだ?』

『俺には分からん』

『ススワタリとはなんだ?』

『多分錯乱してるんじゃないかしら? それで、私たちとよく似たススワタリという化け物と間違えたんじゃないかしら』

『ふむ、儂らをそのススワタリと誤解しているということか……誰か、代表してその誤解を解くものはおらぬか?』


 目はその言葉に、儂が、私がと名乗り出て来たが、そんなに代表がそんなにいては男が困るだけだと他の目が意見すると、誰が代表になるかを話し合い、数分後になって、ようやく代表が決まった。


——————


 壁についた目達がそんなことをしているとは知らないまま男は頭を下げ続け、ついには考えることをやめてしまっていた。

 そのため——


『人の子よ』


「……え!? な、なんだ? 誰かの声が聞こえたような……?」


 男は突然のことに驚き、今何が起きたのか分からなかった。


『人の子よ』


 頭に直接……? って、もしかしてススワタリ達か?


 目の前を見ると、一つの目が男の近くにいた。


 よく見て見たらこの目、穏やかな目をしているような……? いや、目に穏やかとかそんな種類があるのか……ってそんなことよりも、話しかけてきたのはこの目か? とりあえず返事でも返すか。


「は、はい、何ですか?」

 ちょっと吃ったな。

『名は何という?』


 な? 菜の花のことか? いや絶対違うな。

 な……なはなんと、ってああ、名前か。

 もうちょっと分かりやすい聞き方はなかったのか、「あなたの名前は?」とか、まあいいか。


冬場(とうば) (すすむ)と言います」

 うーん、やっぱりなんか、違和感あるような……。

 自己嫌悪ゆえの違和感なのかな……。

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