5話 オークの大樹
魔物避難所で俺とエリリンは何人もの魔物から賞賛を受けた。多くの魔物の命を救ったことは瞬く間にオークの里でも広がり、オークの里を治める魔王軍幹部からもぜひとも早くお礼がしたいとのことだったので、俺達は「オークの大樹」へ向かった。巨大な大樹に穴が掘ってあり、そこに大勢の魔物が住んでいるようだ。
「ここが『オークの大樹』か・・・巨大な樹の城ということか・・・」
「ええ、そうよ、ここに魔王軍幹部の1人『エモン・ザ・オーク』がいるわ」
オーク・・・人間社会では散々な評判だったが、実際はどうなんだろうか。俺のイメージでは女騎士を捕らえて「くっ、殺せ」と言ってるイメージしかない。
ハッ、いかんいかん。余計な偏見は捨てなければ
「うーん、ごめん。オークの大樹に入る前に、まず身体検査を行うわね。一応決まりなの」
シェリーは申し訳なさそうに言った。俺は別に気にしないがエリリンは気にしていた。
「えっ、私も・・・それはかなり恥ずかしいな・・・」
「シェリー、エリリンには女性でしてやってくれないか?」
「もちろんよ!当然じゃない」
「ふぅ、良かった~」
身体検査をするのがシェリーだと聞いて、エリリンはほっと胸をなでおろした。
「ついでに俺の身体検査もシェリー、してやってくれないか?」
「バカっ!」
「いてっ!」
「・・・お兄ちゃん、ホントアホ」
俺はゴブリンに身体検査をしてもらい、オークの大樹に入った。
ふむ、よく出来たものだ。広い大樹の中は10階層に分けられており、各階層ごとに部屋が用意されている。人間の城よりもある意味趣のある光景だった。
魔王軍幹部『エモン・ザ・オーク』は一番上の階にいるらしいので、やたらと長い螺旋階段を上っていった。はぁはぁ、疲れる。
「はぁはぁ、ようやく着いた・・・玉座の間に。」
「しんどかった~」
ここにエモン・ザ・オーク、いったいどんな人物なのだろうか?そう思っているうちに扉は開かれた。
・・・玉座の間に入ったが、驚くべきことにオークらしき魔物は1人もおらず、玉座も空席となっていた。まだオークの幹部のエモンはいないのだろうか・・・。その代わり玉座の左右に若い男女がいた。
男の方は長い耳なので人間ではないのだろうが・・・なんというか美形だった。
そして若い女の方は、これがまた美人だった。銀色の兜をかぶっているが、凛と整った顔なのは兜ごしでも良くわかった。さらに腰に剣を腰にさしている。・・・この格好まるで人間みたいだな・・・そう、女騎士だ!
俺の中で変な妄想がバーストした。オークの住家にいる女騎士、そうなると必然的にアレを連想させられる・・・そう「くっ、殺せ」だ!
恐らくあの女騎士は元々どこかのお城の騎士だったが、オークに捕らえられ・・・
「くっ、私を殺すなら早く殺せ!」「げっへっへ、そうは行かねぇなあ女騎士さんよ・・・。たっぷり楽しませてもらうぜ!けけっ!!!」
といった感じでオークに酷い目に遭わされてしまったのだろうか。そして今ではもはやオークに堕とされ、騎士としての誇りも奪われてしまったのだろうか、なんとも気の毒に・・・
「おい、貴様。ここは高貴たる玉座の間だ。浮ついた考えはやめろ!」
・・・驚いたぁ。女騎士は俺の心を見透かしたように威圧的な声で俺を注意した。そりゃぁ変な妄想してれば注意されるか、気をつけなくては・・・。
「もう!エスウィン!何を考えてるの!?あっ、紹介するわね!こちらの若い男性が『エモン・ザ・オーク』、女性の方が『ヴィオレ・オーク』、2人はオークの兄妹よ」
「えっ!?」
俺はまたびっくりした。