3話 風に揺られて
シェリーの飛行速度はとにかく速い、風がビュンビュン顔に当たってくる。正直言って怖い!
そしてエリリンはもっと怖がっていた。
「わ~っ!!!速すぎ~!!!もうちょっと遅くして~!!!」
「あっ、ごめん。もうちょっとゆっくりの方がいいかしら?」
「うん、ゆっくりして~!目が回る~!」
エリリンの懇願のおかげで何とか飛行速度を落としてもらった。ふぅ、やはりスピードが速すぎると落ちつかなったので、今はほっとできる。目的地にはもう少し時間がかかりそうなので、シェリーにいくつか疑問をなげかけた。
「なあシェリー、3つ聞いていいか?」
「なぁに、エスウィン?」
「あとどれくらいで着くんだ?」
「うーん、15分くらいかな」
「あと15分・・・もうちょっとの辛抱だね~」
エリリンはそれを聞いて少し安心した。俺も安心した。やっぱり空にいるのは落ち着かない。というか高い!
「もう1つの質問だ。どうして君みたいな強い悪魔がこんなところにいるんだ?多少例外はあるが、このスタット大陸は人間も魔物も精精レベル5前後なのに。君ほどの使い手が来ても力の無駄遣いな気がするんだが・・・。」
「うーん、話せば長くなるけど。ここって私の故郷なのよね。で、このスタット大陸の魔物が色々と危ないって聞いたから、私が手助けに来たわけ。」
「そ、そうか。故郷思いなんだな、シェリーは」
「ふふっ、ありがとう。」
どうやら俺達はたまたま、やたら強い魔物とであってしまったらしい。
「では最後の質問だ。どうして悪魔なのにメイジのカッコをしてたんだ?」
「へ?私メイジのカッコなんてしてないわよ。あそこで、ある探し物をしてたの。けどほらっ、私って見るからに魔物だから人間に見つかると厄介じゃない。だから緋色のローブと仮面つけて人間に変装してたの。あなた達にはすぐバレちゃったみたいだけど、てへへ」
「あっ、そう」
どうやらシェリーは魔物であることを誇りに持っているようだ。普通に黒い翼さえ隠せば、ほとんど人間じゃないかとツッコミを入れようとしたが、それを言うと気落ちっそうなのでやめた。
「結局探し物は見つかったのか?」
「んー、残念だけど見つからなかったわ。けど、あなた達のおかげで探し物いらなくなったの。仲間になってくれてありがとね!」
「ああ、それは光栄だよ。こちらこそ仲間にしてくれてありがとう!」
シェリーは俺とエリリンを見てニコっと微笑んだ。
・・・なんて良い子なんだ。敵である人間がいくら仲間にして欲しいと言ったところで、普通はもっとぞんざいに扱われるだろう。だがシェリーはどうだ?
とても屈託のない笑顔で仲間にして良かったとまで言ってくれるなんて、まるで天使じゃないか!?
「それよりさっきの戦闘で痛かったでしょ?ごめんね。あとでサーモン料理ご馳走してあげるから許してね。」
「ありがとう、シェリー・・・感動したよ!」
さらに俺の傷をいたわり、サーモン料理(20エーンはする)をご馳走してくれるなんて・・・ホントにシェリーの天使っぷりには感服した。
俺はもし魔物に雑な扱いを受けたりしたら、即裏切ってもう一度人間側につこうと思っていたが、そんな邪な気持ちをかき消すほどシェリーは優しかった。エリリンもその優しさに感動していた。
「シェリーさん、とっても優しいんですね。」
「そう、君はまるで天使のようだ!」
「ぶっー、私は悪魔なんだからね!」
ちょっとふくれっ面した顔も可愛いな。
そうこうしている内に10分たった。あと目的地へ到着まで残り5分くらいか・・・。し、しかし・・・このアングルからだとシェリーのお尻が近い。俺はシェリーの手を握って宙に浮いている状態なので、そういう体勢になってしまうのは必然だ。それにしても、良い尻だ、そして良い眺めだ。もうちょっとで目的地へ着いてしまうのが惜しい。・・・少しくらい風に揺られて触っても大丈夫・・・だよなぁ。うん、これはセクハラではない、ラッキースケベだ。
「あっ、やっぱりそよ風に揺らされる!」
そーっと、シェリーに触ってみようとしたが・・・
「ねぇエスウィン・・・落とすわよ?」
「はい、すみません。」
「・・・兄がアホですみません。」
シェリーの動きがようやく止まった。そしてゆっくりと地上にある森に舞い降りていった・・・
「2人とも、お疲れ様!やっと到着したわ・・・オークの里に!」