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11月29日小話

11月29日はいいにくきゅーの日でした。


もう、12月2なんですけどね…

わんにゃーにゃーの日になってしまいました。

この今さら感!でも来年の11月29日まで寝かせられないので仕方がない。


獣人の話ならば1度は肉球話を書くべきだよね!ということで書いてみました(*´∀`)


とりあえず肉球もみもみしてるだけの話です。

では、皆様の大切なお時間をいただけることに感謝を込めて~



「あっちぃ!!」

悲鳴とガシャーンっという音に振り返ると、もうもうとあがる湯気で真っ白だった。


調理台の上にはひっくりかえった鍋、側ではチーニが赤くなった腕を押さえている。


私は慌てて外に飛び出し雪を掌いっぱいに掬って持っていく。それを盥に入れて、周りに謝っているチーニの赤くなった手をその中にずぼっと入れる。

「うわっ!」

「早く冷やさないと痛くなるよ」

びっくりして抜こうとするチーニの手を抑え、そのままにさせ、私は調理台にこぼれたお湯を布で拭いていった。


「ふたりとも先に休憩とっていいぞ~チーニ、酷いなら治療室にいって薬もらってこい。ユア見張っとけよ」

料理長のその言葉に私とチーニは返事をして、やりかけの仕事を片付けて厨房から食堂へ出た。

食事刻からはずれていたので食堂内には人がほとんどいない。


端のテーブルにチーニを座らせる。

「手、大丈夫?」

のぞいた盥の中に入っていた雪はほとんど溶けてしまっている。

手は赤いけれど、それが火傷なのか冷えなのかわからない。

私はもう一度、雪を裏から取って盥に入れた。

チーニを見上げると非常にタヌキ感のある猛烈たれ目が細められた。

「ああ、そこまで熱くなかったから大丈夫だ。」

「本当?」

「おう、すぐ冷やしたからな。」

金髪から出た茶色い耳がぴこんと動いた。


チーニの頭はよくよく見ると黒から茶色そして金色と色がかわっている。不思議な髪の毛だ。ただのプリンじゃないのか。

その中でぴこぴこ動くふわふわの毛に覆われた耳、おもわずじっと見てしまう。

「な、なんだよ。」

「タヌキの耳って丸いかとおもってたんだけど、三角なんだね」

「お、おう」

チーニはぎこちなく頷いた。ちょっと顔も赤い。

「毛がかなりふわふわなんだね」

「まあ、そうだな」

「ちょっと、さわ…」

「さわらせねぇよ!」

チーニは言いかけていた私の言葉を素早く否定文にしてかぶせてきた。


ちっケチだな~

むうっとした唇を火傷していない手でひっぱられた。

「むひゅへ~」

「耳は気安くさわっていいもんじゃねえんだよ」

ぐいぐいとひっぱられ思わずその手を両手てで掴む。

「つめてぇっ!」


雪で冷えてた手は思いの外冷たかったらしい。冷え症だしね。私はパッと手を話したが、チーニは唇をひっぱるのをやめて私の手をつかんできた。

「お前なんだよこの手の冷たさは!」

「うーん?さっき、雪で冷えたからかな?」

チーニの手はホカホカ暖かい。これは…実家で飼ってた猫が丸まって寝てる時のお腹に手突っ込んだときの温かさくらいだ。

「雪触ったからって…だからって冷たすぎだろ。」

そうかな?冬の女の子の手ってこんなものじゃないかな?

「たっく…あんまり無理すんなよ。」

チーニが明後日の方向を向いてぼそりと呟いた。

「それと、ありがとよ」

ほんのりと横顔が赤く染まってた。

うわぁ!チーニがデレた!!

「お、おうよ」

動揺のせいか漢らしい返事をしてしまった私は女子失格。


「さてと、もういいだろ。」

チーニは盥の中から手を出してタオルで拭いた。盥の中の雪はすっかり水になっていた。

「痛くない?」

「うーん、まあ、大丈夫だろ。」

チーニは手の甲をまじまじと見ている。私ものぞきこむ、幸い水泡は出来ていなかった。

「掌は?」

「こっちは大丈夫だ。」

くるりとひっくり返して掌を見せてくれたけれど、特に何もなかった。

うん、特になにもない、肉球もない。


「…ねえ、チーニ、肉球はないの?」

「あ?肉球?人型とってんのにあったら邪魔だろ。」

「そっか~ねえ、耳は触らないから手だけモフモフにしてよ。」

ダメ元で頼んでみる。

「ん、まあ、手ならいいか。今日は世話になったしな。それに、獣型の方が治りが早いし…」

まさかの快諾!

驚いていると目の前でチーニの片手だけゆらりと揺らぎ、溶けるように歪んだと思ったらモフモフに変化した。黒に近い茶色から毛先が金色に変化するタヌキの毛

「ふぉああああ!!!モフモフ!!」

完全なタヌキの手だぁ!犬や猫とはちょっと違う。

「ひゃああ!ぷにぷに!!」

黒い肉球がぷにぷにしている。毛並みを堪能しつつ、火傷した方はそっと触れるだけにする。ああ。毛がつるつるふわふわしてる。うん、きもちいい。肉球も犬と猫の間みたいな形で可愛い。思わずチーニの両手で自分の顔を挟んでみる。

「うはぁ~肉球だぁ~」

猫より少し硬く犬より柔らかな肉球とふわふわの毛が頬にあたる。目を閉じると巨大狸に顔を挟まれてる気分。


「おいっ!ユア!まずい、まずい、って!」


慌てたチーニの声に閉じていた目をあける。目の前には赤い顔で慌てるチーニ、なんだろう?

頬っぺたを肉球サンドしたままで首を傾げるとチーニがぶるぶると震えた。

いや、違う首を振ってるのか。

?うしろ?うしろに何かあるの?


くるりと後ろを向いたらイキシュさんとウーフォンさんがいた。その後ろに苦笑したヤラールさんも。


「ユア?何をしてるんです?」

イキシュさんはいつもよりニコニコした顔で聞いてきた。

「チーニの肉球をぷにぷにさせてもらってました。」

そう言ったら掴んでいたチーニの手が人の手に戻った。

「あ、やっぱりあかくなってるよ?」

手の甲に赤い後がくっきり。

「お前…それどころじゃねえよ…」

「イキシュさん、チーニ火傷したんです。ここ。」

チーニの手の甲をイキシュさんに見せるとおや?というように片眉をくいとあげた。

「その程度ならよくあるとこですよ。ユアが気にすることでもないですね」

「そうなんですか?お薬とか塗らなくていいのかな?」

「獣人は人より強いですからね」

そうなんだ、わたしだったらかなり痛いと思うのに…

じっとチーニの火傷を見ていたらウーフォンさんのパンダハンドがすっと視界に入り、チーニの火傷を撫でたらみるみるうちに治っていった。

「これで安心?」

治癒魔法だ!凄い!!うんうん!と頷くとウーフォンさんは私の頭を大きな肉球で撫でてくれた。

そして目の前にホットミルクが差し出された。

「温かいぞ」

「わあ!ありがとうございます!」

私はチーニの手を離してカップをうけとる。かじかんだ指先を器の熱があたためてくれる。

「あったかーい」

「それで、ユアは何してたんだ?」

ヤラールさんの問いに私は経緯を話した。

「で、お礼にチーニの肉球をぷにぷしました」

いい肉球でした!!わたしはいい笑顔だったと思う。

イキシュさんとチーニはヤラールさんの後ろで何か騒いでいる。

チーニは俺のせいじゃねえ!って叫んでるけどなんだろう?


すっと目の前に白と黒のコントラストの美しいジャンボ肉球がさしだされた。

白い毛皮を視線でたどると魅惑の肉球の持ち主ウーフォンさんはこくりと頷いた。ならば遠慮なく!

「おお…」

指で押すとむっちりとした肉感と柔らかさが絶妙なパンダ肉球。

手で包むとチーニよりも硬い毛皮と相まって野趣味あふれるすばらしい肉球。枕になりそうなビッグサイズ。ああ、素晴らしい…熟睡間違いなしの素敵な枕になりそう。

うっとりながらウーフォンさんの肉球を頬に当てようとしたところでぐいっと体を引っ張られた。


「ユア、もうそのくらいで」

イキシュさんが私を困った顔で見ていた。

「他の雄の肉球にふれるなど多情なことはしないでくださいね」

とても悲しそうな顔で言われ、思わずウーフォンさんの手を離す。

「触るなら私のだけで、お願いします。二人きりの時に」

にっこりと笑っているけど…イキシュさん、その顔ちょっと怒ってるよね!?思わずヤラールさんに助けを求める視線を送る。

「お前はもう少し獣人の常識を知るべきだな」

肩を竦めながらやれやれというようにそう言われた。


え?!

肉球さわるってどういういうことなの!?


人前で肉球ぷにぷにはNGなの!?

異世界の常識がわからないよ…


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