ブックマーク500件御礼小話
タイトル通りブックマークが500件ありがとー!!御礼小話です。
ちょっと気づくの遅くてかなり過ぎてましたけど…(^_^;)
本編は進まず番外編の小話が増えていく。
その原因は…
「竜のしにかけつがい」とちょっとリンクさせてるせいで
「竜の~」に出ていない設定が出る話を出せない。ただそれだけです(´・ω・`)
さて、今回も職場の愉快な仲間とのお話。
皆様の大切なお時間を頂けることに感謝をこめて…
兵舎内食堂にはジャイアントパンダがいる。
このパンダさんは全力でパンダさんである。
イキシュさんとチーニは人間にキツネやタヌキの獣耳と尻尾が生えた獣人。
ヤーラルさんは普段は完全に人間で、時々耳と尻尾が出る獣人。色は虎なんだけど…何かはわからない。
では、パンダさんは…
いつでもどこでも、どこからみても100%ジャイアンパンダな獣人である。
もっふもふこっろころなパンダ獣人がシェフコートを着ている。
名前はウーフォンさん。
寡黙なパンダさんで動物園のパンダのようにごろごろ寝てる…
なんてことのない、とても働き者なパンダさんである。
そして顔の左側の目には十字傷。
とても…とてもヤクザな外見のパンダさんである。
そんなパンダ獣人ウーフォンさんは、食堂の食材調達部隊に所属している。
調達部隊には他にクマ獣人とイタチ獣人、ウサギ獣人とリス獣人がいる。
はじめて聞いたときは何だか森でお茶会しそうな可愛い部隊~☆なんてほっこりした私だけれど…この食材調達部隊、実際はかなりハードな部隊だった。
この世界では畜産がない。なので肉も魚も狩って食材にする。草原で、森で、川で、生きている動物を殺して食材にする。それが食料の調達である。
一般の人も同じで、市場に並ぶ肉は誰かが何処かで狩ってきたものが市場に並ぶ。
卵も同じく、何かの生き物が産んだ卵を巣から取ってくる。もちろん巣の側には母親の獣がいるので…普段の狩より命懸けである。
「ちょっと卵かってきて~」
なんて子供のお使いにありがちなセリフは、この世界の母親の口から出ることはない。
卵は買うものではなく狩るものであり、その手間はちょっとですむものではないから。
なので、卵料理はとても高級品である。
果実や木の実も山や森で集めたものになるし、野菜は菜園があるけれど、それも種類が限られているのでやはり外での調達は必須になる。
兵には肉食系の獣人が多く、食料調達部隊の主な仕事は肉の調達になる。朝はやく出掛け夕方になると山のような獲物(山盛りになった沢山の獲物ではなく、山のように大きな獲物である)を狩って戻ってくる。
返り血を浴び、しとめた獲物を引きずるその姿は…
ハートフルな森のお茶会からは程遠い。
パンダ獣人ウーフォンさんの十字傷はそんな狩りの最中にやられたものらしい。
目の前でもぐもぐど遅い昼食を食べるウーフォンさん。
昨日狩った火トカゲがとても大きかったので、今日は狩りには出ずに厨房手伝いだったらしい。
そして、私と一緒に兵達が去った後お昼ごはんを食べている。
食べてるメニューは私と同じ賄い食で試作品の揚げ火トカゲのピリ辛餡掛け。
ササじゃないのか。
がっかりである。
あっ!かばんを漁ってる。
えっ!もしかして…ササ!?
ササ出てくるの!?
ドキドキ。
…リンゴ出した。
リンゴか~がっかりだ。
この国の獣人は地球の動物と似ていてやはりちょっと違う。草食動物もお肉を食べるし基本は皆雑食なのだ。とはいえウサギ獣人が美味しそうに野菜を食べていたりするので地球での主食=好物のような気もする。
残念ながら王城内でも、市内でもササが生えているところは見たことがない。なのでプレゼントすることもできない。
「ん」
目の前に赤いものが置かれた。
「火トカゲ辛いならこれ食べて、食べないと大きくならない」
そういってウーフォンさんがリンゴをくれた。
テーブルに置かれた赤いリンゴ。
食べ残された赤い火トカゲ。
バレていたか、辛いものが苦手だと。
優しい。パンダさんが優しい!!!
「ありがとうございます!」
赤いリンゴを受け取ってお礼を言う。
「あと1つ食べる」
「うっ!」
飴と鞭だ。
火トカゲの身はふわふわと美味しい。なのにソースがとても辛い。
覚悟を決めて一気に口に入れて咀嚼する。
からっ!凄く辛い!!こんなに辛くしたの誰だ!!!
一気に呑み込むと辛さにじわっと汗と涙が浮かぶ。
慌てて真っ赤なピカピカのリンゴにかじりつく。
じゅわっと口中に甘酸っぱい味が広がるリンゴの見た目でちょと桃みたいな味のリンゴもどきだけど。
おいしい!あ~天国!!
シャクシャクとリンゴを食べてるとウーフォンさんのフォークが残した火トカゲを纏めて刺していった。それを目で追うと。火トカゲは バクッと鋭い歯の並ぶ口に消えていった
「えへへ、ありがとうございます。」
へらりと笑ってお礼を言うと頭にポンと手を置かれた。黒い肉球がむちっとしてる。
「子供には辛すぎた。他にも苦手なやつはいるはず。出すとき辛さを選べるようにする」
そういって去っていった。
ウーフォンさん男前!!!
そんなことのあった数日後、私が城の裏庭を散策していると、剪定で払った枝を片付けている庭師のおじさんに出会った。何の動物かは耳だけではわからなかった。
それより、私の目は集められた大量の枝に釘付けだ。正確には色々な種類の枝にまざる細長い特徴的な葉。
それはまさにササ!
パンダの主食のササ!!
「あっあっあのっ!!その、その枝もらっていいですか!?」
勢いがつきすぎてどもってしまった。恥ずかしい。
「ん?これか?好きなだけ持ってけや。なんじゃ嬢ちゃんパンダにやるんか?このあたりじゃ笹はめずらしいけぇのう。ええぞ、ええぞ。」
訛りののあるその言葉に
「やっぱりパンダはササ食べるんですねーー!!!」
と感動しつつ一抱え笹を貰った。
そして厨房に向かって走る。
鮮度大切、それにウーフォンさんの休み時間が終わってしまったら大変だ。
「若いっちゅーのはええのう。お嬢ちゃんきばりや~」
私の背中に向かって庭師のおじさんが応援をしてくれる。ありがとう!おじさーん!!と振り向いて叫んだ。
この素晴らしい出会いに感謝だ。
ササの爽やかな匂いを嗅ぎながら小走りに走る。顔にササの葉先が刺さりちょっとチクチクする。
視線の先に厨房裏の扉が見えた。
そして丁度、扉からウーフォンさんが現れた。
よかったまだお昼休みだ!!
「ウーフォンさーん!!!」
大声で呼ぶと手を振ってくれた。
ウーフォンさんの後ろからチーニとヤラールさんがひょこっと顔を出した。
「ウーフォンさん!これ、これ食べてください!!!」
はあはあと息をきらせながら、腕に抱えた笹を差し出すとウーフォンさんはちょっと驚いた顔をした。…気がする。パンダだからわからないけれど。
「ササ…」
「リンゴのお礼です。それにウーフォンさんにササ食べてほしくて」
はいどうぞ、と渡すと「うえっ!?」とチーニが変な声をだした。何だろう?
私にとって大きな一抱えだったササはウーフォンさんが持つと小脇に抱える程度の量しかなかった。
小脇に笹を抱えるヤクザなパンダ。可愛い。
違う、量だ量。小脇にしか抱えられないのか…
「もっと持ってくればよかったですね。」
これじゃぁオヤツにもならないかもしれない。
「いや、いい。」
ポンポンと頭を撫でられた。
ウーフォンさんが抱えたササから1枝抜き取り「はい、どうぞ」と口許に差し出す。
「うおぃっ!」今度はヤラールさんが変な声をだした。
あ、そうか、洗ってないなこのササ。
思わず引っ込めようとした手をパンダハンドに押さえられる。
爪が意外と鋭い。
ぱくりとウーフォンさんは私の手に持った笹を噛み、そしてむっしゃむっしゃと食べた。
みるみるササはパンダの口に入っていく。
おお…パンダの餌付けだ。
「ササ、美味しいですか?」
「うまい」
やっぱりパンダにはササだよね。
うんうん、と頷いていると黒い爪の背で頬を撫でられた。爪と一緒に毛もふわふわと頬にあたる。なんだか少し痛痒い。
「傷ついてる」
「?笹の葉っぱで切れたのかもしれません。」
「そうか…ありがとう」
いきなり頬に触れるもふもふの手触りがすべすべしたものに変わった。
目の前には見知らぬ男の人。白い髪に黒いメッシュの入った頭だ。見覚えのある十字傷。あ、この人ウーフォンさんだ。たれ目なのに眼光鋭いその瞳。
ぼーっと見てると顔が近づいて頬の傷をペロリと舐められる。少しササの匂いがした。
「ササには殺菌、消炎作用がある」
そうなのか。流石パンダ、ササに詳しい。
次の瞬間、溶けるようにその人の輪郭がぼやけ、また目の前にはパンダが。
むっしゃむっしゃととササを食べていく。その様子は動物園でみたパンダそのもの。
ああ、これで座って食べてくれたら最高なのに。
そう思ったらウーフォンさんはどすっと座って食べ始めた。
私もしゃがんでその様子を見る。
ああ、平和だなぁ。
やっぱりパンダにはササだよね。
モッシャモッシャと凶暴な顔をしてササに食らいつくパンダをにこにこと嬉しそうに見つめるユア。
解りにくいがパンダが照れているのが伝わってくる。
「知らねぇんだろうな…好物渡す意味」
ヤラールがぼそりと呟くと横に居たチーニも「そうでしょうね。」とその言葉に頷く。
「あっ!お昼休みおわりだ!!」ユアは急に立ち上がり「失礼します」そう一礼して厨房にはいっていった。
そんなユアを見送った後、ヤラールはササを食べるウーフォンに
「意味も解ってない子供の行動だ、本気にするなよ。」
そう低い声で告げる。
「口煩い親は嫌がられる…」
ぼそりと答えたウーフォンにヤラールは舌打ちをした。
あらかた食べ終わったのだろう、のそりとパンダが立ち上がる。その手に残る1枝。
「それ、どうするんだ?」
「せっかくの求愛の印だ。そばに置くのも悪くない」
そういってパンダはのそりと去っていった。
くんっと嗅ぐと風にのってササの匂いとわずかにユアの血の匂いがした。あの枝にある葉のどれかがユアの頬を傷つけたものなのだろう。
見送っていたら横に居たチーニがどんよりとした空気を纏いがっくりと肩を落とした。
「よりによって調達部隊のウーフォンにササをやるとか…あいつ何考えて…何も考えてねぇんだろうな…」
はあーっと大きなため息をついたチーニの肩を叩く。
この国では生えない、非常に希少なササを渡すということは、パンダの獣人にとっては求婚に近い行動だと知らないのはユアだけだ。
そして…
食材調達部隊は戦闘狂ぞろいで、その中でもあいつは一番凶暴で癖があることも知らないのだろう。
子どもや弱い獣人が恐れて近寄らないほどに、様々な生き物の最期の恐怖が漂う血の匂いを漂わせていることも。
「まったく、ユアも面倒なやつを餌付けしたもんだ。」
そう呟いてヤラールは空を見上げた。
パンダは笹を食べるけれど…その体は肉食動物のもので
食物繊維の多い笹を食べることは構造的に向いていないそうです。
なんでそんなパンダが笹を主食にしたのかというと深い理由が…
気になる方は調べてみてくださいな。
いやはや、世の中便利になったものです。
そんなでパンダ=笹
本当は笹を食べて消化が大変で眠くなる。という話にしようかとも思ったのですが…そうするとウーフォンに提供する笹の量が物凄くなるのでやめました。日本の女が40キロも笹なんて運べないよ!?