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ブックマーク700越えてたよ御礼小話

700こえてたよっていうか四捨五入したらもうすぐ800なんですが…


久しぶりに見たらブックマークが766

うーん微妙!

777だつたらもっとヒャッホーな感じになったんですけど。


いや重要なのはそこじゃないですね。


766もブックマークしてくださっている方々がいらっしゃることが凄いですよね!!


ということで、読んでくださる皆様に感謝を込めて御礼小話どうぞ~。







私はその日街で買い物をしているときにあるものを見つけた。

一抱えある茶色い壺に入ったそれはよく知ったもの…とは少し違っていたけれど。

匂いもほぼ、私の知るソレと同じだった。

見たことは無かったけれど、知識としてはこういう状態で売られることがあることも知っていたし、某兼業農家バンドのおかげで見たこともあった。


「お嬢ちゃんがそれを買うのかい?」

「はい、同僚が好きだった気がするので…」

「なるほど、これは市場に出るのは珍しいんだよ、きっとよろこぶだろうねぇ、さ、これを買ったら寄り道せずに道中気をつけてお帰り」

そういって示された金額は少し…いや、かなりお高い。

とはいえ、いつもお世話になっているのだからこのくらいいか。

と、私は壺ごとソレを購入した。


「さあ、寄り道せずにまっすぐお帰り、本当にきをつけるんだよ」


子供だと思われたのかお店の人にやけに念をおされた。


不思議に思いつつも、寄り道する予定もなかったので城へとまっすぐ帰る。

帰り道なぜだか不思議と見知らぬ獣人に見られている気がしてずっしりと重い壺をしっかりと抱えた。


あんなに念をおされたからだろうか、なんだか神経過敏になっているみたいだった。


城の門をくぐり、兵舎食堂に向かう道中、何人かの兵士がこちらをじつと見ているような気がしてなんだかとても、落ち着かない。


「なあ、あんた食堂の子だよな、そ、それどうするんだ?」


いきなり、すれ違い様にそう話しかけてきた人がいた。

多分食堂に食べに来てくれている人なんだろうと思う。

けれど…

ソレと茶色い壺を指差すその目がギラギラとし過ぎていて怖かった。


「あの、…プ…プレゼントにしようと…」


そう答えるとその兵士は口元を抑え、何かブツブツ言いながら去っていった。

それからも何人かに声をかけられたけれど、皆が似たような反応をした。



この壺の中身に何かあったんだろうか?


これといって変な所はなかった気がするのに。

壺を見る人達は、どの人も飢えた獣のような、そんな眼差しをしていた。


今日は殆どの隊が城を出ているから暇だといって私は非番になっていた。

厨房にはいつもの半分くらいの人しかいないと言っていたけれど、お昼時を過ぎた今、外から除き見た厨房も食堂もがらんと空いていた。

いつものように裏の戸口から厨房に入るとタヌキ獣人とウサギ獣人の若手コンビしかいなかった。

「こんにちは~!チーニ、他のひとは?」

「お前、せっかくの休みに仕事場くるとかどんだけ暇人なんだよ」

そう悪態をつくチーニの隣でたれ目のウサギ獣人のイリエさんがまぁまぁ、と笑っていた。

「今日は人が少ないからね、ユアは誰に用事?」

「うん、市場で面白いものみつけたから料理長と食材調達部隊のフームさん好きかなって思って買ってきたんだよね。あ、よかったら二人も食べる?お茶入れようか」


どん、と調理台に抱えていた壺を置いていつも湧かしっぱなしの鍋からお湯をもらい、紅茶(に似たお茶)を入れた。

二人は調理台を片付けてコップを用意してくれた。


「私この状態の食べたことないんだよね」


そういって壺の中からお皿に白い板状のソレを取り出した。


とろり金色の蜜をまとうイビツな形の白い板。

見た目よりずしりと重いそれは綺麗な6角形の連なりで出来ている。

「蜂蜜か!!」

「わぁ!凄いね!蜂蜜はめったに市場にでないんだよ!!」

チーニもイリエさんも驚いていた。やっぱり珍しいものらしい。

私はナイフで板状の蜂蜜いわゆる巣蜜を一口大に切った。

2センチほどの高さの6角形の白い柱の集合体、切ると2層になっていた巣にはぎっしりと金色の蜜が詰まっていた。


見るからにこってりと甘そうだ。


「甘いから紅茶は濃い目に入れたよ」

三人でひとかけづつ摘まみ…

私は蜂蜜がどれだけ甘いか知っているからほんの少しかじるだけ。

チーニとイリエさんはしらなかったらしく塊のままぱくりと口に放り込んだ。


案の定、二人は「あまっ!!」っと叫んだ。


ぶるぶる震えながら紅茶を飲むイリエさんは愛らしい見た目に反して蜂蜜は苦手らしい。


チーニはぺろりと口元をなめ、もうひとかけ摘まむとすこしづつかじっている。

どうやらタヌキの口には蜂蜜があったようだ。


私は…巣の主成分の蜜蝋がモサモサと口のなかに残るのが非常に不快だなと思った。

巣のさくりとした歯ごたえは美味しい。けどモサモサは嫌だ。


「うーん…蜂蜜だ…」


とりあえず顔をしかめながら苦いお茶で甘さとモサモサを流し込む。

「あれ、ユアも好きじゃないの?」

「お料理や、お菓子にちょっと使うくらいがいいですね」


イリエさんと私は唯一、真剣な表情で食べているチーニを見ながら肩を竦めた。


「これ、巣蜜から蜂蜜だけ取り出して、この6角形の巣の部分はお菓子に使えるんです」

「へぇ、これ巣なんだ」

イリエさんと壺を見ながらどうやって巣だけ取り出すかを話していたらいきなり扉がバーーン!!と吹っ飛んだ。

そう、開いたんじゃない、扉が吹っ飛んだ。


木っ端微塵に。


そして、扉のあった場所にはグルグルと喉をならす2匹の熊が立っていた。


ーーー!?


あまりの事態に私は蜂蜜の壺を抱えた。

だって、投げつけたら武器になるかもしれない。

チーニとイリエさんは既に厨房の端に避難している。


ひどい!!

裏切り者!!!


「蜂蜜か…」


グルグル言う熊が喋った。

よくみたら2匹ともみたことのある服を着ている。白いシェフコート。

一人は赤いタイをつけている。


「料理長とフームさんは…は、は、蜂蜜…すきかなって…」

私が震える声でそう言うと


『ゴルアァ!!!』


二人が同時に吼えた。

ひいいい!!

猛獣が2匹とか怖すぎる!!!


私は思わず壺に手を突っ込んで素早く手掴みで二人に巣蜜を渡した。


ガウガオ言っていた二人はぴたりと吠えるのをやめ、手のひらの上におかれた小さな、いや私にとっては大きかったけれど、熊の手が大きすぎて小さく見える蜂蜜を美味しそうに舐めた。


ペロペロ、ぺろり、あぐあく、べろん、うまうま。



…やだ、可愛い!!!


大きな熊が必死に掌の蜂蜜を舐めるとか…


やだ!メルヘン!!


いや、見た目的な可愛さは全然ないんだけどね。

買ったときのイメージは熊のプーさんだったんだけど…

こう、実際リアル熊さんが食べてるのみるとどっちかというと殺戮後の毛繕いみたいな、殺伐感があるっていうか…


私は手がべたべたになるのも構わず2匹の熊にせっせと巣蜜を渡し続けた。

そして、途中ではたと気づく。


熊は2匹、壺は1つ。


これは、壺の中に残る蜂蜜争奪戦が起きるんじゃないかってことに。


部屋の端で猛獣に対して震える役立たず…いや小動物達の助けは借りられない。


じゃ、スプーンで一口づつ私があーんってするべき?いや、ソレっておっさん相手にどうなの?それに、壺の底にはそんなに量ないよね!?

料理長は後から憤死するよね。

いや、私も辛いからお互いに憤死する。

お皿とか?お皿にいれるとか?


私は再び迫りつつあるピンチに嫌な汗をかいた。


そのとき


「…ずるい…」


地の底を這うような声が2匹の熊の後ろから聞こえてきた。

というか、2匹の熊さんがふたりともビクッてなったんだけど。


熊さんがさっとモーゼの十戒よろしく左右に避けると、私の目の前には左目に十字傷のある白黒の熊…ではなくパンダのウーフォンさんが立っていた。


完全に目が据わってる。


効果音をつけるなら絶対ずもーん。

威圧感が半端ない。


厨房の端ではタヌキとウサギが震えながら抱き合ってる。

なにソレ、羨ましい。

私もそのなかに入りたい。


「残りの、全部いいよね?」


蜂巣を食べ尽くした熊さん達は、どうぞどうぞ、といわんばかりにウーフォンさんに道を譲り、私の横を通りすぎていった。

すれ違いざまに

「ごっそーさん」

「うまかった、あとは頑張れよ」

って言ってくのはどうかと思う。


私は壺を抱えたまま、椅子に座ったウーフォンさんの膝に乗せられた。

わぁ!すっごくモフモフしている。

思わず現実逃避をしてしまった私にウーフォンさんは料理長が投げてきた木匙を持たせた。

そして、あーんとばかりにぱかりと口をあけた。

私はパンダの意外と鋭い歯の並ぶ口に蜂蜜をすくって差し出した。

目の前で開かれる猛獣の口は…それがラブリー代名詞のパンダでも十分怖かった。


蜂蜜はかき集めても木匙で5杯分にしかならなかった。私はことりと壺を調理台に置いたあと

「すいません、パンダが蜂蜜好きだって知らなくて…」

べたべたの手で木匙を握ったまま私はウーフォンさんに謝った。


っていうかフツー知らないよね。

パンダが蜂蜜好きだとか。


ウーフォンさんは「ん」とうなずいた。その目が名残惜しげに木匙をみている。


急にパンダの輪郭がボヤけたかとおもったら目の前には白黒メッシュの大きな十字傷のあるたれ目の男性が目の前に現れた。

珍しい、人型のウーフォンさんだ。

「まだある」

そういってウーフォンさんは私の右腕を掴んだ。


カランと木匙が落ちた。


その木匙を目で追っていたら蜂蜜で、べたつく手をぬるりと暖かなものが這った。

「ひゃぁっ!?」

ねろりとウーフォンさんが私の手をいや、手についた蜂蜜を舐めていた。

そして、ウーフォンさんは垂れ目をすがめて「甘い」とつぶやいた。

チーニーが、向こうの方で叫んでいるけれど、私はぞわぞわするくすぐったさを堪えるので、必死だった。


ウーフォンさんが私の手を舐め、時折ぺろりと舌なめずりする様子は人型なのにやけに獣じみていて…思わず


「舐めるなら人型じゃなくて獣型でやってくれた方がよかったです

そういうとウーフォンさんはぺろりと薄い唇を舐めながら


「牙、あぶない」


なるほど、安全対策でしたか。


ウーフォンさんが私の手をすっかり舐め終わった頃、食材調達部隊のアナグマの獣人さんが叫びながら壊れた扉から飛び込んできて、空っぽの壺を抱えてさめざめと泣いていたのはまた別の話。



後日、イキシュさんから蜂蜜は特定の種族、特に熊科やイタチ科の誘因作用が強すぎて料理に使うことも販売されることも稀なんだということを教えてもらった。

買って帰るときに襲われなかったのは幸いでしたねって…




そういうのは…もっと早くに知りたかったよ?!









相変わらずパンダが出張ってくるんですが…


パンダの万能感が半端ないです。

どんなものにでもうまく絡めるその幅の広さ…まるで明太マヨのようです。



8月2日更新だからはちみつネタにしてみました。


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