クリスマス小話
クリスマス過ぎたけど…クリスマス小話。
竜のしにかけつがいのクリスマス小話に出てきた木が出てくるという…
微妙過ぎるリンク(*´∀`
ちかーむは昆虫食についての文を読むの好きなんですけど…
実際食べるのは勇気がないのでやってません。虫も非常に苦手です。
っていうか世の中の女の人は基本虫が苦手だよね。
でも虫の調理法は完璧にちかーむの頭に入ってるよ!!
虫触れないけど知識はあるよ!
そしてよいこの皆さん、
昆虫は生食しちゃダメ、絶対ダメ!!
そんなわけでちょっと虫成分がほんのりあるので苦手な人はバックプリーズ!!
では、皆さんの大切なお時間をいただけることに感謝をこめて~
雪をざくざくと踏みしめて兵舎食堂の料理長スヅィヌは厨房裏に続く道を…とはいっても雪に埋もれすぎて道は見えないのだが…を食材の入った籠を片手に歩いていた。
今日は非常に珍しい食材が手に入ったと出入りの業者から連絡があったので実物を見に行ってきたのだ。
なかなかいい出物だった。
満足して歩いていたのだが…厨房裏の戸に続く道の真ん中に奇妙なものが立っていた。
丸くて白い雪玉
それが急に話しかけてきた。
「料理長~お帰りなさい!」
雪の精霊が憑依でもしているのだろうか?
雪の精霊はイタズラ好きだからこういうこともあるかもしれない。しかし…返事に困るな。
「あれ?それなんですか?」
雪玉の後ろからぴょこりと見知った顔が出てきた。今年狼牙隊のヤラール隊長が保護して連れてきた人族のユアだ。
珍しい調理法を知っている貴重な新人。
小柄な人族にあってその小ささは相当なものなのだろう。成人だと言っていたが大きさは獣人のこども歳程度。雪玉にも隠れる大きさだ。
「食材だ。それより何をしているんだ?」
「雪だるまを作ろうとしてたんです。でもここまで大きくなると思ってなくて…重くて動かなくなってしまって」
困っように笑って雪玉にしがみつくユア、いや、押しているのか?
雪だるま…おそらく子供がよくつくる雪玉を重ねた雪像のことだろう。
ぴくりとも動かないその雪玉を叩いて、恥ずかしそうに笑うユアのあまりの非力さに目眩がしそうだ。
「これを持っていろ。」
手に持っていた籠をユアに渡しゴロゴロと雪玉を戸の横まで転がす。
「わお~ありがとうございます!!」
ユアはちょこちょこと後をついてくる。
厨房の扉から少し離れた場所にはすでにひとつ小さな雪玉が出来ていた。
かなり小さなそれを天辺に乗せるのならばあと何個かは必要だな。
「おい、危ないから避けとけ」
そうユアに言ってからざくざくと素早く雪玉をつくりドサドサと積み上げていく。
「えっ!?4段!?あれ、5段!?うわぁっ!!」
出来上がった雪像の天辺まで届くようユアを肩に乗せ、持たせていた籠を受けとる。
ユアは用意してあったのだろう、黒い木炭と萎れた赤い根菜を、ポケットから取りだし雪玉につけた。そして、下におりてから落ちていた枝を背伸びしながら胴体につけた。
枝は鉤爪を表現したのか三又にわかれている。黒々とした目元と口が赤い血まみれの雪像とは斬新だ…。
「えへへ、ありがとーございます。こんな大きな雪だるまはじめてです。うん、料理長のおかけでかわいくできました!!」
「うむ。」
…時々ユアの感覚は獣人のそれとは違うときがある。
「ところで料理長これなんですか?」
ユアは籠の中身を指差して聞いてきた。
「食材だ。持ってみるか?」
丸い玉の形をしたそれを1つつまんで渡す。
「なんだろ?あ、軽い。でも硬いかな?なんだかクリスマスツリーのオーナメントみたいですね」
ユアの掌にのると、つまむほどの大きさのだったそれは、掌に収まる大きさになる。
「そいつはそのままオーブンの低温で焼くんだ。で、中のものの水分を飛ばしてから穴を開けてそれを料理に振りかける。」
「へぇ…風味づけ的な感じですか?綺麗なのに焼いちゃうんだ~」
コツコツと表面つつくユアの爪先では丸い。ほんとこいつはちいせぇなぁ…
「ああ、高級食材だからな。生でもいけるが人数分はねえし。」
よく見ると指先が真っ赤になっている。頬も鼻先も赤い。どうやらこいつは寒さにも弱いらしい。
スヅィヌは立ち話をやめて、ギイッと音を立てる扉を押して厨房に入る。
暖かな蒸気とうまくとれた出汁の匂いが鼻腔をくすぐる。今日のスープ番はチーニか。あの子狸がずいぶんうまくなったもんだ。
「料理長お疲れ様でっす!ユア!外で遊びすぎだぞ風邪ひくぞ?」
チーニが真っ先にこちらに寄ってきた。狸は番と決めた相手には、とにかく尽くすと聞いていたが…
こいつを見ていると不憫になってくる。
狼牙隊隊長ヤラールの群れの庇護下にいる、魔法騎士団長のイキシュの番。しかも食料調達部隊の狂熊ウーフォンも手を出す気満々。そのうえもう一人の番は…
なんでそんな相手に惚れるかねぇ…
もう少し相手を考えろ。と老婆心ながらも忠告したくなってくる。番を持たない人族の中には種を越えて獣人の本能を擽るにおいを発する万人共通型の者が居るとは聞いていたが…ユアもそれなのだろう。庇護欲をさそうにおいがするのは認めるが…この子は狸には荷が重いだろうに。
まあ、わかっていても惹かれてしまうのが番なんだが…。
頭の耳をぴこぴこと動かしながら、ユアに話しかけている後ろ姿が幸せそうなので…口出しも野暮ってもんかな。とスィヅヌは顎をかいた。
「あっ!料理長すっげえ!!箔果虫なんて超高級食材じゃないっすか!!」
チーニは私の掌の中にあったオーナメントみたいな綺麗な玉が何か知っているらしい。
「はっかちゅー?」
料理長を見上げると見事な顎髭をさわりながらうむ。と頷き
「振ってみろ」
そう言ってきた。私はおそるおそるそれを振ると…シャンシャンと音が鳴った。
「わあ!きれいな音!」
いったい、はっかちゅーとはなんなんだろう?
振ってしばらくすると音はやむ。もう一度ふるとまた鳴る。
すごく不思議だ。
チーニは渡された籠を覗きながら料理長とをしている。
「これハマル隊長に渡したら泣いて喜びそうっすね」
「そうだな。特別にとっておくか。」
「そういや、もうすぐ来るっすよハマル隊長。忙しくて昼がとれなかったからっててさっき…」
ハマル隊長といえば綺麗な白黒のストライプ柄の髪の隊長だった。これが好物ってどんな獣人なんだろ?
そもそもこれはなんなんだろう?
掌の中のはっかちゅーをもう一度振る。
「あれ?なんか音が鳴るのが振った時じゃなくて…時間差があるんですけど…」
中に入ってる種がなるんじゃないんだ??こんこんと強めに爪先で叩くとシャンシャンと遅れて音が鳴る。
「おう、よく気づいたな。その中には虫が居てな、揺らすと警戒音を立てるんだ。」
「え?」
「かなり小さい虫でな、卵みたいに見えるその玉がそいつらの巣なんだ。箔果虫は寄生した果実を白銀色の膜で覆って硬化してそこに巣を作るんだ」
パキリ
こんこんとつついていた殻に、微かに罅がはいった。
ふわりと花のようないい香りが立ち上がる。
そのヒビに内側からかかる、いくつもの小さな棒から目が離せない。
「箔果虫の匂いがする!!」
バーンと厨房と食堂を繋ぐドアが空く。
音にビクリとした拍子にパキンと小さな殻が皹から剥がれた。
そのちいさな穴の中からわらわらと小さな虫が…
「無理ぃぃぃーーーーー!!!!!」
「やったぁぁぁあ!!」
私の悲鳴とハマル隊長の歓喜の声が重なった。
投げるように手放した箔果虫の巣は、見事に等身大のアリクイに変化したハマル隊長によってキャッチされた。
私はひぃぃ!っと悲鳴をあげながら箔果虫の籠を持ったチーニからザッと離れ、料理長の後ろに隠れる。
「なんだ?人族は虫は食わないのか?そりゃすまなかったな。」
料理長はおや?という顔をして後ろに隠れた私の頭をポンポンとなでた。
「私の地域では食べませんでしたが…食べる地域もありました。」
そうかそうか。そう言いながら料理長は背後に隠れた私をくるりと正面に出した。
「慣れろ」
目の前にはアリクイとその舌に絡む蜘蛛のような虫。
「いやぁぁぁぁぁ!!!」
私の悲鳴が厨房にこだました。
この話のためだけに産み出されたアリクイのハマル隊長。
今後出番はあるのか!?
っていうかクリスマス要素ほとんどないよ!?
まぁ、異世界だからしかたがないか(*´∀`)