決意
時間不明ーー僕は気付くと幼女と一緒に線路の上で寝ていた……。
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お……落ち着け!
落ち着け!僕!!
ま、まて。と、とりあえず、深呼吸だ。
スーーッ……ハァーー……。
「よしっ。」
って、「よしっ。」じゃねぇぇーー!!
幼女!幼女だよ!幼女!!白いワンピースを着た幼女!!
なにこの子!?
なんで僕の隣で寝てたんだ?そもそも寝てた場所が線路の上って!!
なんで線路の上なんだよ……?
ホテルのベッドの上とかならドラマでも最近は……よくは、見かけないけど、そういう演出があるからまぁわかるよ?
酔っ払った勢いで犯した一晩の過ちとかそういうのはわかる。けど……
明らかにこれはそういう類のものではない。
それだけはわかる。
「異常だ」
そして、特に異常なのが、この子の背中……
「羽が……生えてる」
その幼女には幼女ながらにして艶やかな金色の長い髪の間からほんの僅かに白銀に光る慎ましやかな羽が生えていた。
いや、本当に生えているのか??
そう疑問に思い、僕はその幼女の襟元から手を入れ直に確かめようとした。
が、その瞬間、突然、空から神々しい光が僕を照らし、その光とともに巨大な翼を広げて何かが舞い降りてくるのが見えた。
僕はあまりの眩しさに目の前の光を手で遮っていると透き通った女性の優しい声が聞こえた。
「人間よ。あなたに機会を授けましょう」
「機会?」
「そうです。私は人間の言う神の存在。あなたはその天使を神に仕える者として一人前に育て上げるのです。そしてそれと同時にあなたに神人を目指す機会を授けます」
「ち……ちょっと待ってください!いきなりすぎて頭が回らない!神人を目指す?神になれるのか?人間が?!何故っ?!」
「天使は本来、神に仕える者。神に仕える者を育て上げることはつまり、神と同等の位になることができる資質を持つ者となります。天使を育て上げ一人前にすることで神に成り得た者を我々の世界では神人と呼んでいます。」
「神人って……ん?なんで僕なんだ?なんで僕がこの子を育てることになったんだ?」
「それは、あなたがまだ見ぬ子を残してこの世を去ったからです。」
神がその言葉を言った瞬間、僕の思考は停止した。
「……。この世を……去った?」
「はい。信じられない事かもしれませんがあなたは今朝、電車に轢かれ人身事故で命を失いました。そして今、ここにいる場所があなたの死に場です」
「僕が死んだ?……なんでなんですか」
「あなたは、明け方まで会社の同僚と飲んでいました。そしてあなたは、我が家へと帰るためおぼつかない足取りでホームへ行きましたが、足を滑らせ線路の上へと落下。そしてそのまま動けずに迫ってくる電車の下敷きとなりました」
「……本当ですか?」
「はい」
「証拠とか、あるんですか?」
「証拠ですか……。あります。ですが、かなり辛い思いをすることになりますが覚悟は良いですか?」
「何をするんです?」
「実際に見てもらうんです。あなたが死んだ現場を」
「えっ?!そんな、見るなんてどうやって?」
「今は私の力で時間を止め、あなたとの会話に支障がきたすあらゆるものをあなたの視覚に入らぬようにしています。ですからその力を止めれば証拠を見せることができます。」
「神はやはり、なんでも出来るんですね」
「どうしますか?」
僕はその問いに対し一息置いた後、覚悟を決めた。
「お願いします」
すると、神様はお祈りの姿をとると僕と幼女の体は宙に浮び僕は幼女を抱き抱えた。そして、僕の視界には人身事故により大騒ぎになっている駅のホームが飛び込んできた。電車の下は鮮血で染まっており、警察や救急隊が事故の対応に当たっていた。そして、駅のホームで1人うずくまってこの上ない悲しみに襲われている妊婦がいた。
それは僕の妻、明日香だった。
「明日香……ごめんよ……」
自然と涙が溢れてくる。堪えようにも堪えられない。
しばらくの間、僕は生きている間味わった事のない悲しみに染まった。
「もういいですか?」
「あぁ……もう……十分だ」
「あなたはまだ見ぬ子を残してこの世を去りました。人間には誰にも必ず天使が付きます。あなたの子供に付く運命の天使がその子です。あなたの子供の為にもその子を立派に育て上げるのです。できますか?」
僕はその問いに答えるために涙を拭い呼吸を整えた。
そして、決意した。
「育てるよ。立派に育ててみせる」