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英雄カメラマンのホロサイト  作者: 霜月美由梨
3章:思い偲ぶより思い出して笑って
46/101

3-13

 それから、またどれぐらいたったのだろうか。

 痛みの感覚も萎えていた。部屋にいるが、外の音がずいぶんと騒がしくなった。それも気にならない。

 たん、と音を立てて扉が開かれた。

「ユウ!」

 男の声が聞こえた。

 目だけ向けると電気のスイッチを探し出した男はそれを押して勇介に近づいてきた。まぶしさに目を瞬かせていると彼はゆっくりと近づいて光を遮るように立った。

「わかるか? オレだ」

 真っ青に腫れた頬にそっとかけられた手のぬくもりが優しい。おぼろな記憶を手繰り寄せて唇を動かす。肩に手を回されて慎重に起される。

「水飲めるか?」

 カサカサに乾いたくちびるに水筒が当てられて流し込まれる液体を飲む。口の端からこぼれて傷にかかった。水の冷たさと痛みにいくらか頭のぼんやりしたのが取れたような気がした。

「くそ、あんまり留まれねえか? とりあえず、これ、飲めよ」

 次に渡されたのはゼリー飲料。

 それをすすってユイに突き返してため息をついた。頭を振って体の痛みに顔をしかめる。

「大丈夫そうか?」

「体が痛みますが……」

 うなずいて、ユイの背中におぶさった。

「手間かけてすいません」

「あとで説教するから背乗死なんて笑えないことすんじゃねえぞ」

「間違っても男の上で死にたくないですねえ」

 軽口に軽口で返すと、ユイはようやく安心したように笑って勇介を背負ったまま走り出した。

「どうして?」

「アリイが言ってなかったか? 裏切り者の始末に出るって。お前はただの新人がミヤビを守るために飛び込んだからいくら拷問にかけられようとしゃべりようがないから組織的には大したことないんだけどよ、裏切り者が……」

「ヨシさんですか?」

「そう。奴は古株だからよ、この組織のいろんな情報を握ってるわけよ、それを見過ごすわけにはいかないわけで、今回の凸が決まった。アリイは暇があれば、って言っていただろうが、お前の救出も重要度から言ったら同じだ。とりあえず車に乗せたらオレはこっちに戻ってヨシを殺す」

 大の男を背負ったまま変わらずに話すユイに勇介は苦笑をして体を預ける。

「つらいか?」

「ええ。ドMなら喜びそうな責めのオンパレードでしたよ。あのくそじじい」

 目を細めて言うと、廊下にちょうどその拷問官と水をめぐんでくれた人の二人が銃を構えながらこちらに突撃してくる。ユイのポケットから銃を抜いて個人的にうらみがある方を狙って撃つ。

「おい」

 反動をうまく殺せずに体をはねさせた勇介にユイが一瞬止まろうとしたが、すぐに走り出す。はねた瞬間、ユイの肩に回っていた片手に力が入って何とか体勢を戻したのを感じたからだ。

「大丈夫です」

 体を起こして銃を構えているだけの彼にハイタッチして通り過ぎる。

「なんだ、手なずけたのか?」

「水を恵んでくれた礼ですね。あの爺さんただの老害でしょう」

 笑って銃を戻して体を預ける。重たかろうに、大したことないようにユイは全速力で走っている。

「やっと体が起きてきたか? っつーか、回復早いな」

「若さですよ」

 しれっと返して、勇介は深くため息をつく。体の痛みは治まることはないだろう。拷問に比べれば動けるレベルだ。

「言うな」

「これぐらい軽口叩いておかないとみんな心配するでしょ」

「まあな」

 笑ったユイに勇介も笑い、ユイの肩をつかんだ。

「まだ走れないだろ」

「そりゃ、そうですね。傷が癒えるまでは無理でしょう」

 関節などがやられていないのがよかった。

 ユイはそのまままっすぐな廊下を走って突っ切ると、階段を駆け下りていく。

入れ忘れ(笑)

すいませんm(__)m

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