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英雄カメラマンのホロサイト  作者: 霜月美由梨
3章:思い偲ぶより思い出して笑って
34/101

3-1

 本部が襲撃されて、数時間が経った。

「ミヤビさん」

「ユウ? ユイも」

 国軍に包囲されている隙間を縫って勇介とユイが本部に入り込んでいた。

「入り口は封鎖されているのに……」

「それぐらいオレたちにゃ関係ないさ。特務の連中が入り込みそうなところすべて封鎖してこっちに来た。詰めが甘い」

 ユイが勇介の肩を叩きながらミヤビに笑いかける。

「とりあえず、オレたちが来たからまあ大丈夫さ。地下からぼちぼち救出車が来る」

「車?」

「ああ、地下道路があるんだ。お前たち若い奴らはわかんないだろうがな。…………まあ、裏切り者が裏切り者だから、一応、オレの直下部隊で偵察兼制圧にいかせたが」

「……」

 ミヤビが黙りこくってうつむく。

 話について行っていないのは勇介だけだった。周りはあわただしく撤退の準備を、荷物をまとめにかかっている。

「裏切り者?」

「……ああ。本部の位置が特定されてんだからいてもおかしくないだろ?」

「それより、地下はどこに出るの?」

「出口に五島の別働隊が控えて敵に見つかり次第排除している。大丈夫だ」

「うかつな真似をするのはあたしの方か」

「……そうだな」

 自嘲気味なミヤビの言葉にうなずいて、ユイはそっとため息をついた。

「そんなことしている暇があるなら気持ちを切り替えろ。嘲笑っている暇なんてないぞ。勇介、お前は俺とミヤビの補佐だ。パシリ役にすばしっこい奴な……。アキちゃん呼んで来い」

「おれはここにいるおー?」

 大きな段ボールを両手に持ってよたよたと歩いてきた細身の男が、ひょいと段ボールから顔をのぞかせた。なんとも間抜けそうな顔をしている。

「段ボール誰かに押し付けてオレのパシリになれ」

「えー、ユイのパシリやだー」

「五島とどっちがいい?」

 間髪入れずに言われた言葉にアキと呼ばれた細身の男は、いやな顔をして後ずさった。

 筋骨隆々とした男たちが多いこのレジスタンには珍しい、学者のような線の細い人だ。

「はい決定。どうせ五島の奴もパシリを求めてるからな。ちゃんと無線もって来いよ」

「そしたら、おれ大丈夫なところにいれる?」

「……ああ。多分な」

「たぶんっ?」

「ユウの下につけなければ」

 床にしゃがみ込んだアキがいじいじと何かを書いている。勇介はため息をついてユイを見た。

「オレは危ないところにってことですね」

「当たり前だろ? 元特務なんだからそれぐらい……」

「特務なの?」

「あ、いや、……その、訓練生だっただけで実働経験はないですよ?」

「なんで黙ってたのよ」

「追及は後にしろ。いい拾い物したってことで。ほんとお前冷静になれや?」

 詰め寄ったミヤビを止めて、ぽんぽんと頭を軽くたたいて首を傾げたユイは勇介を見て、小さく笑った。

「さ。とりあえず、ミヤビを優先させて逃がすぞ」

「はい」

 勇介はミヤビの脇に立ってうなずいた。ユイはそれを見て満足げにうなずき返した。

「なんであたしを優先させるのよ、非戦闘要員を……」

「お前はここのチーフだろ? 上は一番安全なところで高みの見物と相場は決まっているんだよ。さ、行くぞ」

 よいせとユイと勇介でミヤビの両腕を取って持ち上げると、彼女の足が地面について抵抗できないようにしてから歩いていく。

「捕獲された宇宙人が来るぞー」

「ユイさん、一応地球人だから宇宙人には変わりないですよー?」

 緊張感のないやり取りに付き合うと、ふてくされたミヤビと、悪戯っぽい笑みを浮かべたユイと、困っている勇介の差を見て、少しだけ周りの空気が緩んだ。

「さ、おとなしく車ン中で待ってろよ」

「ちょ、ユイ!」

「勇介。ミヤビのお守りだ。いいか? 副チーフじゃない、チーフだからな」

 車にミヤビを入れて、出ようとするミヤビの腕を取りながら勇介に念を押す。

「……わかりました」

 少しわからないが今追及はしなくてもいいだろう。いずれわかることだ。

「ユイさんはどこに?」

「お掃除。とりあえずこの車には弾薬と爆薬はたんまり積んである。使えよ。まあ、カムフラージュして、出してるが、あっちも本部の場所を掴んだんだ。躍起になってくるだろう。気をつけろ」

「わかりました。重装備は?」

「そこに。車ん中だけにしろよ?」

「わかってます。では」

 ミヤビの腕を掴んで引き寄せてユイを行かせる。ユイは少しだけ嬉しそうに、頼もしそうに笑って頷くと、表情を引き締めて入り口を閉じた。そのまま走り去ったのだろう。その背中が目に浮かぶ。

なんとか間に合いました。。当分はカツカツの更新になりそうですORZ

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