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第二章 第三話 魔王への突然の訪問者

城ヶ崎朱鳥の奉仕活動に三時間付き合わされ、時計の針が六を回った頃。

竜一はやっと家に帰って来ることが出来た。

神谷家は普通の西洋風の二軒家だ。・・・・外面上は。

中に入れば、立派な伝統的な日本家屋が待っている。

既に小さな頃から見慣れた風景を横目に、玄関を開けた。

俺の祖母、神谷静香は綺麗好きだ。玄関に靴が出ていようものなら、消し炭となる。俺の靴がどれだけ犠牲となったか・・・・・。

そんな祖母が支配する家の玄関に、二組の靴が置いてあった。

「・・・・・・客か・・・?」

まあ、そうだろうな。いくらあのババアでも客人の靴は燃やすわけねぇよ。

家は、玄関からして二つの廊下がのびている。前にまっすぐ伸びた廊下と右に伸びてすぐに左に曲がるような廊下だ。

祖母はいつも右に伸びた廊下の先にある部屋に客人を通す。

竜一の部屋は、逆に前に伸びた廊下にある階段を上がった二階にある。

よっていつも、客人に会うことなく自分の部屋に行ける。

竜一はこの構造を大いに気に入っていた。

だって、客人に対する堅苦しい挨拶とかをしなくて済むんだ。面倒くさがり屋の俺にとって最高だ。

いつも通り竜一は靴を脱ぎ、下駄箱にしまう。そして、階段まで歩く。

一歩踏み出すたびに、床が軋む音がなる。

築数十年は伊達じゃないな。

「竜一」

おいおい、マジかよ。

竜一は階段に一歩踏み込んだところで、左側から呼ばれた。

呼ばれた方向には、一つの和室。呼んだ声の主は、祖母。ふすま越しに呼ばれた。

竜一は回避を試みる。

「ばあちゃん、俺、疲れてんだよ。もう寝たいんだけど」

「・・・・・いつから、そんなに偉くなったんだい?」

祖母のニヤリと笑う顔が浮かぶ。

「封印・・・・・もっと厄介な物に変更してもいいんだよ?」

痛いところを突かれた。

やっと封印の抜け道を見つけたんだ。ここで封印を変えられたら、今までの苦労が水の泡だ。

面倒くさいが仕方ない。

竜一は、腹を決めるとふすまを開けた。


◆ ◆ ◆


部屋に入った俺の目に飛び込んできたのは、部屋の奥、四角い卓袱台の向こう側に祖母が姿勢良く座り、向かい合って卓袱台のこちら側に質素でいながらに威厳のある服装の老人と綺麗なピンク基調の和服を着た女の子が座っていた。祖母以外、顔は見えなかった。

「竜一、挨拶なさい」

「・・・・・どうも」

すると、女の子が立ち上がり、こちらに振り向いた。赤色の和服がフワッと舞った。

俺は言葉を失った。驚いた。

形の良い眉に、くりくりとした目に黄色い瞳。良い形をした鼻、小さな口。顔のすべての要素がバランス良く配置されていた。それに、染みひとつ無い肌。綺麗なブロンドの髪。

間違いなく、美少女のレベルだった。こんなに可愛い子がこの世にいたのか。

まあ、見惚れますよ。

しかし、もっと驚く事が起こった。

いきなり姿勢を低くすると、両手をついて頭を下げて、

「――――――――――」

「・・・・・・・は?」

俺は思わず悪態をついてしまった。

いやいや、誰も想像しませんよ。ある日家に帰って来たら、客室には俗に美少女と呼ばれるレベルの容姿を持った女の子がいて、額を地につけて言う。

「ふつつかものですが末永くよろしくお願いいたします」

日本語って難しいね。ふつつかものってどういう意味?末永くっていつまで?お願いいたしますって、何をお願いされたの、俺?

あわてふためく俺に、珍しく助け船を出したのは祖母だった。

「そんなところに立っていないで、早く座りなさい」

俺は素直に従った。

理由は二つ。

ひとつは、この美少女ついてと美少女が発した言葉の意味を知りたいという事。

もうひとつは、ただ単に祖母には逆らえないという事。

俺が祖母の隣に座ると、老人の顔を見れた。予想通り、老人は威厳溢れる顔をしていた。老人は俺が座るのを確認すると口を開いた。

「・・・・彼が、かつての魔王ですか?随分と角が取れましたね」

「そんなことより、姫の件は本当によろしいのですね?」

姫?この御時世に姫かよ。それに、姫の件って何だ?今日は嫌な予感しかしないんだが・・・・・。

「はい、我が姫を竜一君に任せます」

はい?今、何と?

「という事です。いいですね?」

え、何が?という事って、どういう事?

ここは、素直に聞くべし。

「・・・・・何がですか?」

「それはね・・・・・」

「ちょっと待って下さい。私からお話してもよろしいでしょうか?」

俺の疑問に対し、祖母が説明をしようと言いかけた時、それを遮る声があった。どこの怖いもの知らずかと、俺は思ったが、誰かなど明らかな問題だった。

俺がこの部屋に入る否や、訳のわからない言葉を発した女の子だった。

「いいですとも。姫がそう言われるならば」

へえ。俺は、祖母が明らかに敬意を持って人に接するのを初めて見た。

女の子はまだ、何かを言いたそうにしていた。それに気付いた祖母が尋ねる。

「他にも何か?」

すると女の子は、もじもじしてから頬を赤らめて言った。

「・・・で、出来れば、りゅ、竜一様と二人でお話したいのですが・・・・」

それを聞いた二人の老人(一人の外見は明らかに若者だけど)は異なる反応をした。

祖母は口に手を当てて「まぁ」と言って、若い女性の外見に合った反応をした。

老人の方は、大層驚いた顔をして女の子を見た後、俺を睨んだ。何故?

「何?それは・・・・・」

「いいでしょう。姫の望むままに」

先に口を開いたのは老人の方だったが、祖母がそれを言葉で制した。

「ありがとうございます」

女の子は器用に座ったままお辞儀をした。

すると祖母が腰を上げた。目で老人も促す。

老人も祖母には逆らえないのか、俺を睨みながら立ち上がった。何故?

祖母は俺の肩を、ポンッと叩くと部屋を出ていった。どういう意味?

八畳の部屋に美少女と二人っきり。まあ、嬉しいのかな・・・・。

嫌な予感しかしないのは、置いといて。

死亡フラグが立ちそうなのは、置いといて。

「やっと、竜一様と二人っきりになれました」

満面の笑みでニコッ。花が咲いた。率直な感想。

もうひとつ、確実な事。

死亡フラグが立った。

次は、戦闘が混じってきます。

竜一の無敵っプリを見てください。

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