七時間目 新校舎一階 保健室 奥のベッド
目を覚ましたらここにいた。
「知らない、天井だ…。」
某アニメ主人公の台詞をつぶやいてみる。何度も運ばれているから正しくは「見慣れた、天井だ…」なんだけど。
「あら、また福音戦士? 辰見くんも懲りないわね」
この人は 田邊 京子先生。男子トイレに平気で入ってくほどの変j…いや、エキセントリックな私立 鹿跳高校の保健医である。おかげで毎日助けられている。ちなみに、辰見というのは、僕の名前だ。フルネームでは、 辰見 努という。
「どう?トイレの水は美味しい?」
「正直不味いです」
「じゃあ毎日何で溺死寸前まで飲もうとするの?」
「まぁ、色々あるんです」
「ふーん」
言葉は一度そこで途切れ、また田邊先生の手で(口で?)紡ぎだされる。
「ところで、辰見くんの服を脱がせみたんだけど…」
脱がせるなよ!!うら若き思春期ボーイの服を脱がすなよ!!やっぱり、この人変人じゃなくて変t…
「あ、いま、この人変態だ、とか思ってたでしょ」
「思ってませんよ」
「そう?ならいいんだけど」
なんか鋭いな、田辺先生。
「話、戻すわね。脱がせたら棘、っていうかイガ?みたいな打撲痕が綺麗に鳩尾に入ってたの。多分、失神の原因はこれね」
「さいですか」
「また、郷田くんや姉川くんにいじめられてるんじゃないの?」
「いや、そうではないです」
「まぁ、前みたいなことがあると辰見くんも困るだろうからこれ以上詮索しないけど、何かあったら私に相談してね。私こう見えても合気道練士五段持ってるから」
「はい、そうすることにします」
「それから、内臓の方は傷ついていないから辰見くんがいいのなら、授業にでてもいいけど?」
「うーん、昼からはあいつらもフケてるだろうし、そろそろ授業に出ないと単位が危ないので行くことにします」
早退を偽って郷田の部屋に隠しカメラを仕掛けてあいつらの一生の恥になるような映像をばらまいてやろうかと思ったけど、復讐が怖いしハイリスク・ローリターンなのでやめにした。
「じゃあ、何かあったら保健室に来てね。先生は辰見くんの味方だから」
「ありがとうございます。では、またなにかあったら」
「じゃぁねー」
その時七時間目の終わりのチャイムが鳴った。
僕は教室への歩を早めた。