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河童社会にようこそ!

「今回はリオナ以外の出番はないそうです」


サミ

「じゃあ前書きでわざわざリオナに喋らせる必要ないね?」


リオナ

「ちょっと!それは酷いわよ!」


真人

「あとがきではこの作品の裏話がわかるんだよね?」


あやめ

「そうよ!シナリオを書き換える前の原案とか分かっちゃうわよ!」

「ありがとう!みんな!」



お別れは笑顔で。


リオナはそう決めていた。



そして今、実たちの住む世界から見て、光の向こう側。


河童社会なのだ。


いまいち実感が湧かない。


帰ってこれた。


あるいは、帰ってきてしまった。


どちらとも取れる感情が心に渦巻いている。


大好きな実たちと一緒にいたい。


でも、実たちは一生懸命私が帰れるように考えてくれた。


…違う。


それじゃ、実たちのために帰ったみたいになる。


「お父さんとお母さん、心配してるだろうなぁ」


わざとらしく声に出してみた。


そもそも、世界が違う。


これが普通なんだ。



ふと、リオナは振り返り、自分が出てきた光の膜を見た。


そこには、ただの山肌があるだけ。


光は無かった。


ちょうどあやめが河童の風穴から出て、再び封印した時だったのだが、リオナには知り得ないことだ。


戻るつもりも無いのに、もう戻れないことが直感的に分かった。



そして、残る疑問はあと一つ。


「ここ、どこ…?」


今はこれが一番デカい謎である。


背後は険しい山。


この山の一番下から出て来たのである。


目の前は川。


流れは穏やか。


川の様子から見て中流から下流だろう。


辺りに民家は無し。


大自然真っ只中である。


これではいくらテクノロジーが優れた河童と言えど、これでは…。

取りあえず、下流を目指し歩いてみる。


山に向かうよりは海に向かう方が誰かに出会える可能性は高い。


そう思って歩き出した。




1時間程歩いた。


夏の炎天下の中だと大変な距離である。


行く先に街が見えてきた。


有名な街なら場所が分かるだろう。


わからなくても交番くらいはあるだろう。


とにかく街に行こう。


そう思い歩みを速めた。




街に入ると、急に安心感が湧いてきた。


「なんだ…。ここか…」


見覚えのある場所が現れた。


遠出する時にたまに通る、自宅から約5キロの場所。


自転車なら20分ほどだが、徒歩だと1時間はかかるだろう。


まぁ、歩くしかないんだけどさ。


それでも、場所を知ってるかどうかは大きく、足取りは軽かった。




1時間後。


リオナは少し緊張した面持ちで、自宅の前に立っていた。


暫く帰っていないだけで、こんなに緊張するとは…。


そのまま玄関の扉に手を掛けて、ゆっくりと引いた。



「た…ただいま…」


玄関でそれだけ言うと、すぐに家の中で反応があった。


「リオナ!?リオナなのね!」


「うん…。そうだよ…お母さん」


リオナの母は泣きながら愛娘を強く抱きしめていた。


「苦しいよ…」


リオナは言うけど抱くのを止めない母親。


「良かった…。無事でよかった!怪我とかしてないわよね!?」


怪我の有無の確認と無事を喜ぶ順番が逆の気もする。


でも、そんなことはどうでも良かった。


「おかえり!リオナ」


「ただいま!お母さん!」




「んで、リオナ。ずっとどこに行ってたの?」


暫くすると落ち着きを取り戻した母がきいた。


「人間界に」


「人間界!?」


驚いた声を挙げた。


そりゃ驚かないほうが無理だろうけど。


めったなことでもないと行かない世界。


それが文明の遅れている人間の世界なんだ。


そもそも、河童は一度人間世界を出た身。


つまりは共存不可能とした世界。


親からみたらこれほど心配なことはないだろう。


「人間に苛められなかった?」


そんなことを聞かれた。


「実はそんなことしないよ!いつも一番に私を考えてくれた」


好きとも言ってくれた。


「そう…。人間も、まだまだ捨てたもんじゃないのかもね」


傷もなく、誇らしげに人間の話をするリオナを見て、母親は本気でそう思った。


「そういえば、なんで人間界なんかに行ったの?」


「分かんない。なんか朝起きたら人間界だった」


それはリオナにもわからないことの一つだった。


「確かリオナが居なくなったのは先月の…」


そう言いながらカレンダーを眺め、導き出した結論。


「そうか。月が地球に近付いた日…」


リオナはきょとんとした。


「月が地球に近付くと、月からの引力が大きくなるの。普段は海水の高さが上下するだけなんだけど…。大接近の時は突然空間まで引力に反応してパックリ裂けちゃうことがあるの。出口は人間界なんだけど…きっと寝てる間に引き込まれたのね」


母親はやけに詳しかった。


まれにある事故らしい。


大抵は人間界まで追跡に行けないので、捜索は打ち切られる。


人間界に放り出された河童は種族を偽り人として生きるしかないらしい。


だからこそ…。


「帰ってきてくれて良かった…」


母親は安堵するのだった。




やがて、母が連絡したのだろうか、父も帰ってきた。


「さらわれたかと思って部隊に捜索願いまで出したんだぜ…?」


河童の世界だと、誰かいなくなったら専用の部隊が動く。


今回もそうだったらしい。


「でも、どうやって帰ってきたんだ?」


父がリオナにきいた。


「ん~。人間界で実っていう男の子に会って…」


全ての始まりは実に会ったこと…。


実が私を助けてくれた。


経緯を話してるうちに、リオナの中で実がどんどん大きくなるのを感じた。


「そいつはラッキーだったな!人間もまだ他人のために一生懸命になれる奴がいたんだな!」


父親が言った。


河童のイメージだと人間は悪役。


かつて追われたから…。


でも、全ての人間がそうじゃなかった。


それだけは分かってほしい。


言わなくても、わかってもらえるとは思うけど。


「捨てたもんじゃないな!人間も。リオナも無事に帰ってきたし」


母親と同じことを言った。


「どっから帰ってきたの?」


今度は母親が聞いた。


「河童の風穴っていう場所から入って、山から出てきた」


河童の風穴…。


その名を聞いて、両親は顔を見合わせた。


「随分懐かしい名前ね」


「確かに。何年ぶりに聞いた?」


「知ってるの?」


リオナは不思議そうな顔をして聞いた。


「昔、母さんのじいちゃん。リオナからしたらひい爺さんだな。から聞いたん だがな…」


そう言って、父親は母親を見た。


「爺ちゃんの代にこっちの世界に移り住んだんだって。その時、人間界からこっちの世界への橋渡しとして使ったのが天然の洞窟、河童の風穴らしいわ。ま、当時から河童なんて名前があったから知らないけどね」


母親が説明してくれた。


「その話、私も聞いてた?」


「うん。人間が怖いとか言って泣いてたし。小さかったから覚えてないか」


これで分かった。


私が河童の風穴を怖がった理由。


本能のどこかに恐怖を与えるものとして、記憶されていた名前が「河童の風穴」だったのだろう。


それと同時に、人間界の果て。

つまりは人間界から出る場所というイメージがあった。


つまり、そこに行ったら、もう実とは会えなくなる場所。


だから怖かったのかもしれない。


帰る時、恐怖を感じなかったのは、心の準備ができていたのと、サミがいたから…。


別れを恐れる気持ちが、あの穴への恐怖に結びついていたのだろう。



「とにかく、無事でよかったわ」


「ホントに!よかったよ!」


そう言って抱きしめてくれる両親がいるだけで、帰ってきてよかったと思えた。

リオナやっと帰れましたね~。


では裏話でも。



実はこの作品、もう一人ヒロインがいる予定でした。


「あのね~」とか「だからね~」とかいう喋り方をするおっとり系ヒロイン。


そのヒロインとあやめと真人が三人で駅に実を迎えにくる予定でした。


しかしヒロインの名前が思いつかず断念。


あやめ一人でいいや~となりました。


さらに大きく変わったのは、リオナの帰し方。


最初は河童の人捜し部隊が実宅に乗り込んでいき、力ずくでリオナを奪還する物騒なシナリオでした。

しかし面白くないので中途半端に部隊の存在をほのめかした状態でシナリオ変更。


これが私を苦しめたわけでございます。


実と遠野の親戚との間で一悶着起こす気でいましたが却下。


あくまで主題はリオナを帰すことなので。


当初はサミを生き返らせる気もありませんでした。


やけに気のいい幽霊的な。


「笑い過ぎて死亡」は適当に設定して、後の私を苦しめました。



書き始めたときから遠野行きは決めてました。


逆にこれしか決まってなかったかも…。


6年前に「河童のクゥと夏休み」という映画がありまして。


さすがにかなり記憶から飛んでいますが、たしか河童は遠野だと言っていたなと…。


因みに、飼い犬が死ぬシーンで号泣したのは私だけではないはず。


あとの内容は覚えてないんですが…。

また見たいな。



話が逸れました。


「一夏の思い出」とか「どこか懐かしい日本の原風景」みたいのを書きたかったんです。


風鈴とか蚊取り線香とか縁側とか…。


河童は…なんでヒロイン河童に…?


ああ、ちょうど東方のにとりにはまってて…。


んで河童なら遠野と…。



今後はサミの話題に入っていきます。


前回のお話を書いていて、リオナが帰る直前まで実たちに記憶が戻るのはサミが体に入った時でした。


しかしそれだとリオナが帰るのに「うわっ!何か思い出した!懐かし!え?リオナ帰るんだっけ?じゃあね」みたいになりそうだったのでタイミング変えました。


我ながら河童の風穴というネーミングは気に入ってます。


「かざあな」か「ふうけつ」かは悩みました。


「かわらべ」はすんなりでしたが…。


あと二話くらいで完結予定です。


最後までよろしくお願いします。


長々とすいませんでした。

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