風穴の封印
実のところ、この作品を漫画にしようとか…。
3割考え中。
結構お気に入りの作品です(笑)
今日は曇り。
時計は7時。
今日も俺が最初に起床。
携帯のアラームが9時に鳴る設定なので、それを止めるためにいじくる。
「あれ…?メール?」
メールが一件入っていた。
あやめからだ。
『今日みんなで神社に来て!懐中電灯持参!』
受信時間は午前2時過ぎ。
あいつ…。
一体どんな生活してんだ…。
早く起きてもやることが無い。
朝の湿っぽい空気を吸いに外へ出ようかな?
昨日と同じだけど…。
そういや、さっきのメール、時間が書いて無かったな。
確認と散歩の二つの意味を込め、朝の光に繰り出した。
まっすぐ神社に向かう。
歩きながら不安に思った。
あいつ寝てるんじゃないの?
まぁ、別に携帯が通じるから問題ないんだが…。
境内に人気は無し。
あいつだって毎日毎日箒かけてるわけじゃないよな…。
あやめが家として使ってる社を覗いてみた。
もう何度も上がったことがある社。
あいつ起きてないかな?
起きてりゃちょっと話していっても…。
…ダメだ。寝てた。
それも居間の円卓に突っ伏して。
あやめの前に積まれた古そうな本は何だ?
どっから持ってきたんだよ…。
今日呼び出されたのはこの本のせいなのか?
メールだけは打っとくか。
『何時に行けばいいの?』
さて、帰ろうかな。
そう思ったら、社の窓が開いた。
「あっ…。実兄ぃ!来てたんなら上がってけばいいのに!」
あやめの声。
その声にすかさず返す。
「上がって良かったのかよ!?」
うん。返し方を間違った気がする。
勝手にはマズいだろ!とかが正解だよな…。
「え?いいよ~?何もないけどね」
「だって寝てたじゃんあやめ…」
「乙女の家と寝顔を覗き見したのね!」
何故だ…?反論の言葉が見つからん…。
「まぁいいわ。昔は一緒に寝てたんだしね!」
「うっ…。そうだったっけ?」
「覚えてないの?夜中に実兄ぃが私にしたあの行いを…」
完全に記憶にありませんが…。
「何したよ…?」
恐る恐る聞いてみた。
「油性マジックでおでこにホクロ書いたでしょ!あれ恥ずかしかったのよ!みんなに笑われて!」
あ…あー!
言われてみればそんなことあったかも知れない!
「朝起きたら大笑いされてさ!なんなのよあの嫌がらせ!」
「あははは!」
「もう!もー!今朝は実兄ぃのメールで起こされたし…。来てたなら普通に起こしてよ!」
あのメールで起きたのか…。
「今度からそうします…」
「よろしい!あ、今日は朝ご飯食べたら集合ね!」
「あいよ!」
神社を出て歩く。
いつの間にか朝の湿っぽい空気は無くなっていた。
青い空。
遠くに浮かぶ入道雲。
強い日差し。
両脇には緑の田んぼ。
時々イナゴが跳ねる。
なんか、ワンピースを着て赤いリボンが付いた麦藁帽子を被った女の子が走り抜けて行く感じが似合いそう。
ほら、似合う…。
少しタイムリー過ぎやしませんか?
しかも知った顔だし…。
「リオナ、その帽子どした?」
「実!朝起きたらいないからどこ行ったかと思ったぞ!神社か?」
知った顔に話しかけたらそう言われた。
何でも、俺がいなかったから探しに着たらしい。
朝飯だぞーって!
わざわざどーも。
田んぼのあぜ道をリオナと歩く。
「サミは?」
「家にいるよ」
家って…真人の家な…。
「実って、あやめが好きなの?」
それは突然の問いだった。
「あ?何で?」
「だって、朝から神社行ったり、昨日も花火の時…」
「あいつはただの幼なじみ…というか親戚だ」
「本当に?」
「本当にだよ!何で血が繋がったあいつを好きになんなきゃいけないんだよ!」
「あ、そうか!」
「そうだよ!」
「いやでももしかしたら…」
「一応三親以上は離れてるけどさ!それは無いよ!」
疑問を拭いきれたかきれないかのタイミングで真人の家に到着。
リビングに入ると、サミと真人が朝食の準備中。
「ミーノどこ行ってたの?」
「早起きしたから散歩に神社までね。そうそう、あやめが朝飯食べたら神社集合だって」
「あやめが?何だろ?」
「さぁ…?」
真人の料理は相変わらず素晴らしいものがある。
それを食べ終えてから、みんなで神社へ。
そこには紅白装束を身にまとったあやめがいた。
手にはいつもの箒ではなく幣。
棒の先に白い紙束が付いたあれ。
それを持ち、拝殿と向き合っていた。
「あやめー!珍しく巫女っぽいことやってんじゃん!」
真人があやめに声をかけた。
振り返るあやめ。
「みんな来てくれたね。実はね…」
話しながら社に入った。
そして、朝見た古い本を見せられる。
そこにはとんでもないことが書かれていた。
簡単に言うと…。
「河童が入って行った河童の風穴を、沙美という少女を犠牲に封印した…」
「言葉を選ばないで言うとそうなるわね」
ここで生じる疑問がある。
「沙美ってサミ?」
「私もそこは分からなかった。というか、お父さんが娘って書いてるのよ。普通に考えたら沙美って私…」
すると、サミが口を挟む。
「それが私かどうかは分からない。でも、あの洞窟から霊の感じはしなかったわ」
「分からないって…。じゃあ違うんじゃないの?笑いすぎで死んだんでしょ?」
「それが…生前の記憶ってあんまり無いのよ。笑いすぎてってあれは、そうだったらいいなって!」
「なんだ…じゃあ完全には否定できないのかよ…」
今度はリオナが口を開く。
「そんな…河童…封印なんて…何で…」
泣きそうな顔。
確かに、俺の一族の人間がやったことだが、ひどいと思う。
しんみりした空気を変えようと、ついにあやめが本題に入った。
「だからさ、河童の風穴に入ってきて欲しいの!私も当然行くけど、一人だと怖いから…」
なるほどね。
なら、入ってみるかな!
かつて俺がお札を剥がした、あの洞窟に。
「そういや、何で犠牲が必要だったの?封印なんてただの術でしょ?」
「う…。それは…実兄ぃが…お札剥がしたから…。無理な力で破れた封印は、もう一度封印を施すのにより多くの犠牲を払うの。今回は、それが人だった…」
…俺のせいかよ。
「で、でも!実兄ぃのせいじゃないよ!ね!だから気にしないで」
「…あやめ。話してくれてありがとう」
「え…!?」
驚いた表情のあやめ。
いや、あやめだけじゃない。
真人も、サミも、リオナも。
「話しにくいだろ。そんなこと、本人に言うの」
あやめは全てを包み隠さず話すことが多い。
最低限のことだけは秘密にするが、聞かれたら素直に答える。
…昔から、こいつには内緒話できねーんだよ。
「んじゃ、落とし前はつけなきゃな!行くぜ!風穴!」
呼び掛けるように言ったが、自分を鼓舞する意味の方がでかかったかもな。
穴の前にみんなで並び、あやめが柵を開いた。
そして…。
「よっと。ん~…こんだけ御札貼ってあると…。あ、これだ!それ!」
あやめが背伸びして一枚の御札を剥がした。
「はい、封印解いたわよ!」
あっけなさすぎる。
「え?何か巫女風に呪文唱えて魔法陣書いて…みたいなことしないの?」
真人の訴えはごもっとも。
「リオナちゃん。怖くない?」
あやめが聞いた。
「怖いけど…。入れば何かわかる気がする…」
「私も…。大切な何かがある気がするのよね…」
リオナに続けてサミが言った。
本に書いてあることが正しければ、この先にあるんだよね。
沙美さんの身体…。
いざとなれば警察か?
救急車…は遅すぎか。
何もないことを祈りながら、先へ。
足元が暗い。
懐中電灯で照らしながら慎重に歩く。
幸いにも、起伏が激しかったり、妙に狭いところはない。
スムーズに奥に進める。
何も見てない。
戻るなら今。
わかってる。そんな選択肢は入った時点で消えていたことは。
先頭は俺。
次にあやめ。後ろに真人。
その後ろにリオナ。
最後尾はサミ。
リオナなんか、足を震わせてんだろうな。
…俺も一緒か。
暫くあるくと、目の前が明るくなった。
安心感が漂う。
しかし、サミの一言でそんなものは消え去る。
「ここ…洞窟よ。光が入るのはおかしいわ」
確かに。
光をよくみれば、実体の無いカーテンのようにゆらゆら揺れている。
光の膜。
有り得ない光景だった。
さらに、光の膜の前には、ちょうど子供1人が入りそうな、蓋のない石の箱。
浴槽のような……棺のような…。
思わず大きく唾を飲む。
これ以上近づくか、引き返すか。
「何…あれ?」
「ミーノ…。行くの…?」
あやめの疑問。
真人の質問。
全て、俺自身が答えを欲している。
なんだあれは?
石箱の中身は?
空か、あるいは…。
いずれにせよ、もう引き返せない。
「みんな、ここにいて…。俺1人でみてくるよ…」
「なら、私も!」
「大丈夫だから!」
あやめを止め、ゆっくり歩いて行った。
みんな、固唾を飲んで見ていた…。
メインヒロインであるはずのリオナが仕事しない…。
真人も仕事しない…。
あやめ大活躍!
巫女さんは違いますねー。
自然と動くんですわ。
さて、物語もいよいよ大詰め!
頑張るぞー!




