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第6話

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「最近仲間外れにされてる気がしますの。愛花さんも神童さんも…お話しされていることはエレメンタルヒーローのことばかり…全く話に入っていけませんの。」


薄暗い部屋、一面がアスファルトに覆われた正方形の部屋に誠太郎と翠華は居た。

翠華によると、ここは``邂逅院邸の内の一つ``だという。洋式の木製椅子に優雅に座る翠華は、ティーカップを片手に上品な笑みを浮かべている。

その目線の先、手錠で手を後ろに拘束され座り込んでいる誠太郎を見下すように見つめ、会話をする。


「あなたも気づいていたでしょう?話に入っていけずに戸惑う私の事、度々目が合いましたものね?気を使ってわたくしも楽しめる話題を振るのが紳士の在り方…そう思わなくて?」


「……………知らねーよ!」


全力で否定したが、翠華の表情は変わらず笑顔のままだ。


「まぁ。やはり知能が無い猿との会話は難しいですね…高貴な人間様との対話は貴重なんですから、まともに話してください。」


「高貴な人間サマは放課後の高校生を拉致って監禁しねえんだよ。お前には常識が無えな。」


「まぁ。そんな低俗な物言いはおやめください。せっかくのアールグレイの品位が失われてしまいます…アッツ!」


「無理して熱いの飲むなよ…ていうか俺神童の家行かなくちゃならないんだけど、これ解いてくれない?」


「ゴホッゴホッ…い、い゛え…う゛う゛ん!ご心配なく…神童さんに言われて、貴方を拉致させていただきましたの…」


涙目になりながら咳き込み、苦しそうにする翠華の後ろからガコンと重たい音が響く。鉄のドアがきしむ音を立てながら開く。


「よっ。学校ぶりだな、神霧。」


相変わらず調子のよさそうな神童がニコニコとやってきた。


「なにがよっだ。俺を拉致って手錠までかけさせたの、全部お前だろ!」


「まあそうだけど…必要なことだからな。」


神童はそう言いながら持っていたビニール袋をガサガサと漁り、一本の小瓶を取り出す。中に妖しく光る紫色の液体が入っているように見えた。


「なにそれ。なんか変な色してない?」


「気にすんな、それより学校で言った事覚えてるか?」


「…無理してもらうみたいな…」


「そうだな。これさ、うちと邂逅院んちで共同開発した薬剤なんだ。」


「そういや邂逅院の家って何やってるところだっけ。」


「ふふん!エレメンタルの採掘場の管理ですわ!今回はその薬のスポンサーとして、投資いたしましたのよ!」


「それって最近金持ちになったってことだろ?成金じゃん。」


「なっ……!貴様の家は成金にもなれてない三流じゃない!」


ティーカップを振りかぶる翠華を「まあまあ」となだめた神童はこちらに向き直る。


「とりあえず、まだ一般には出回ってない代物なんだけど、これを飲むと…」


「ちょっと待って。」


「ん…どうした?」


「それ…飲むの?」


「え、うん。」


「絶対無理。もうダメだろ、その色。」


「男らしくないですわね~。一気にグイっといってしまいなさいよ。」


「お前は黙ってろ成金野郎。」


「な、なんですって!わたくしは本物の貴族なんですのよ!」


今度は座っていた椅子を振りかぶる翠華を「まあまあ」となだめた神童は、ため息まじりで話をつづけた。


「でも次の試験に間に合う方法はこれしかないんだ…」


「…で、飲むとどうなるのか、一応聞いとく。」


「ああ、これを飲むと脂肪細胞に変化が起きるらしい。博士によると体の物質の``断絶と結合``が…」


何を言っているか分からない。そんな様子の誠太郎に気づき、神童は少し間を開けた後に言う。


「つまりな、これ飲めばムキムキだ。」


「雑…てかそんなのあるのかよ…信じられないけど。てかそれあるなら最初から使わせろよ!」


「そんな簡単に使っていいものじゃないんだ…もちろんデメリットがある。」


先程とは一転して、神童の声が低くなる。


「細胞が強制的に再構築されるんだ。とてつもない激痛が伴う。最悪死ぬかもしれない…」


死ぬという単語に息をのむ。そんな言葉を聞くなんて予想もしていなかった。ここまで来たのも少し甘い気持ちもあったのだろう、この先はそれ相応の``覚悟``が必要なのだ。


「だから最後の手段にせざるを得なかったんだ。もちろん無理にとは言わない、リスクがでかすぎるからな。次の試験見送っても_____」


「いや。」


神童の言葉を遮るように言葉を発した誠太郎の目に、迷いはなかった。


「飲ませてくれ、頼む。」


「…ま、まて。死ぬ確率は大分高い、それにまだ人に服用させたことがないんだ。そもそも…」


誠太郎が薬剤を服用することを承諾すると思っていなかったのか、神童は慌てながらデメリットばかり説明する。しかし、誠太郎は神童の目を見据え、沈黙したまま動かない。少しの間、互いに無言が続く。


「……本当にいいんだな?」「ああ。」


神童は少し考るようにうつむいた後にため息をつきながら歩み寄り、小瓶の蓋を開ける。


「分かった。お前の覚悟、受け取ったぞ。」


変化を望まなかったこれまでとは違う。「自分を変える」意思を持ち、誠太郎は紫色の液体を迷いなく飲み干した。


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