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第5話

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「大丈夫か?神霧。」


「ハア…ハア…も…もち…ばっちぐーよ…ハア…ハア…」


神童家の屋敷の一室、競技用のトラック、簡易的なジム、温泉施設、レストラン、etc…。訓練に必要なものが全て揃っている理想的なトレーニングルームに誠太郎と神童はいた。誠太郎が神童の家に初めて訪問した日から約1か月が経過しようとしていた。神童曰く、すぐにスーツを着用できるわけではないらしく、エレメンタルによって稼働するスーツに耐えうる肉体が必要だという。そして今の今まで誠太郎は、学校の終わり、そして休日になると泊りがけで神童の家で体を鍛え続けていた。


「ハア…ハア…全然へばってないけど…ハア…これ…いつまで続けんの…」


「次の応募までだろ。」


「ハア…次…いつ…ハア…だっけ…」


「知らないな。不定期だし。」


「ハア…まずお前が応募忘れなければこんなことには…」


「う…ごめんて…でも応募しててもお前は落ちてたと思うぞ。神霧、お前体力も運動神経もなさすぎだよ。この一か月で少しはマシになったけど…それでも平均と比べたら中の下。もう少し頑張らないと一生スーツ着て訓練ができないぞ。」


「…分かってるけどさ…キツイもんはキツイんだよ…それより桃崎は家に呼ばないのか?あいつもヒーロー目指してんなら訓練必要じゃね…」


「お前と一緒にするなよ神霧。あいつは気にしなくていい。」


「…どうゆうこと?」


「お前が転校してくる前に桃崎とエレメンタルヒーローのことで盛り上がってな。家に来てもらって運動能力やらの数値を取らせてもらったんだ。そしたらびっくり。全ての数値がアスリート並。普段から相当な運動をしてないとあそこまで絞れないな。」


「まじかよ…あの感じで運動得意なのか…ならもうスーツ着て訓練できるんじゃね…」


「すぐ訓練が始められるわけじゃない。普通ならスーツに慣れるまでに時間がかかるからな。」


「さすがにか…桃崎で何日かかったんだ?」


「…その日のうちに使いこなしてたよ」「はあ!?」


「お前がショック受けるから言いたくなかったけどな…身体能力、適応能力。才能なのか努力なのか…さすがにスーツ着てすぐに笑いながら飛び回られたときは顔が引きつったが…」


「…俺結構おいてかれてるな。てかそんなすごいならなんであんなやつらに捕まってたんだ?振りほどいて逃げるくらいはできそうなのにな。」


「あくまで女性の中ではって話だからな。とにかく、あいつは気にしなくていい。問題はお前だ神霧。応募が不定期とはいえ時間は無いと思ったほうがいい。最近嫌な噂を聞くんだ。」


「…噂?」「…少し休憩しよう。」


誠太郎と神童はシャワーを浴びたのち、レストランに集合する。明らかに必要ない程の多さのテーブル席の一つに向かい合わせで座り、二人は軽く軽食を済ませる。


「ング…ゴク…ゴク…ぷはー!水すらうまい!」


「運動した後はな。」


「…でもコーラとかも飲みたいな…」


「それはだめだ。お前はまず体を作ってからだ。」


「厳しー…それで噂って?」


「…民間の間には知られない話だ。他言無用だぞ。」


「お、おう。」


「最近イビル…暴走するロボットが増えてるって話は知ってるか?」


「…いつかの飛炎さんが言ってたような…言ってなかったような…」


「実はAI社が意図的に暴走させてるって噂が立ってる。」


「AI社ってあれだよな…有名な…」


「ああ。エレメンタルの発見で飛躍的に成長した会社だ。今の日本の9割方のロボットがAI社のもの、いわゆる大元だ。」


「そんな大企業が、なんで?」


「よく言われているのが…AI社製の人工知能と他社製の人工知能を入れ替えたロボットは暴走しなかったり、AI社がイビルに対する対応を全くしないってとこだ。普通はロボットの販売停止と回収くらいはするからな。いくらロボットが大量に普及しているとはいえ、表明すらしないのはおかしい。」


「まあその通りだな…でもなおさらエレメンタルヒーローの需要が高くなるんじゃない?」


「それがそうもいかない。エレメンタルヒーローの雇用、採用をしている事務所がAI社の物なんだ。」


「じゃあAI社が事務所を潰したら…!」


「エレメンタルヒーローに物資供給がすべて廃止。ヒーローの採用も運営も難しくなるだろうな、もちろん。」


「…何が目的なんだよ…AI社…」


「あくまで噂だからな。AI社のイメージダウンが目的っていうのも耳に入るし、そこまで危機感は持たなくてもいいと思うが…なにしろ噂じゃなかった場合の被害がでかすぎるからな…最悪国が崩壊する可能性もある。」


「国が崩壊って…会社がでかいと一つの噂でそんな大層な事になるんだな。」


「まだ人工知能式のロボットが受け入れられていないのも要因だな。まだAI搭載のロボットが市民に完全に受け入れられてるわけじゃない。エレメンタルの普及も、10年前の話だし。」


神童は残った水を一気に飲み干し、椅子から立ち上がる。


「さあ、休憩は終わりだ。続きやるぞ。」


「あ…あぁ。」


(…てことは俺が今頑張ってるのも無駄になる可能性もあるのか…なんかやる気下がるなあ…)


「神霧?」


「あ、ああ!今行く。」


「…心配すんな神霧。」


「え?なにが?」


「無駄にはなんねえよ。」


「…そう信じてるよ。」


誠太郎はその後も神童に言われた通りのメニューをこなし続けた。AI社に対する不安感をかき消すように、がむしゃらに訓練をやり続けた。それから二か月ほどたった頃、HR前の教室。


「______それにしても神霧くん、だいぶ絞れてきたんじゃない?」


「そう?そんな目に見えてごつくなったわけじゃないと思うけど…」


「見違えたように見えるよ。インナーマッスルって感じでさ!訓練頑張ってるんだね。」


「…まあまだ不安感はぬぐえないけどね。」


「ん、なんのこと?」


「いや、なんでも。それよりさあ___」


二人が会話していると教室のドアがバン!と大きな音を立てて開く。そこには不気味な笑みを浮かべた神童が立っており、ぎこちない歩き方で歩み寄ってきた。


「おはよう二人!」


「おはよ、神童くん。」


「おはよう…なんか今日きもくない?」


「神霧!いいニュースが二つあるぞ!ついてこい!」


「え?おい…!」


呆気にとられる間もなく、神童は早歩きで教室を出ていく。桃崎に一声かけた後、誠太郎は後を追うように教室を出る。踊り場辺りで神童は歩みを止め、振り返る。


「ここらでいいか!」


「…なんでそんなハイテンションなんだよ。」


「いいニュースがあったからだ!」


「二つだっけ?早く教えろよ。」


「ああ、まず一つ目。エレメンタルヒーローの応募試験の日程が決まった。」


「ほんとか!?いつ!?」


「一か月後だ。」


「そっか…意外と早くてよかった…」


「…よかったって顔してないぞ?」


「噂の事を気にするとどうもな…」


「そこでもう一ついいニュースだ。AI社がイビルに対する対応を表明した。」


「…え?な…内容は?」


「会見でこう言ってたらしい――『人工知能搭載型ロボが規定外の動きをし、人民の皆様に被害をもたらす事象(総称:イビル)は決してAI社の意図的なものではなく、まだエレメンタルの理解が浅く、研究が完璧ではないことが理由のAIロボの暴走であることをここに証明します。また、対応としては世に出回るすべてのロボの回収は難儀だと判断し、エレメンタルヒーローの動員の増加を視野に入れています。』――だそうだ。」


「ってことは…!」


「ああ、完全に杞憂だったな。」


「よかった~…」


「ちゃんとよかったって顔してるな。」


「そりゃそうだよ…ここ最近ずっと頭から離れなかったからあ…はあ~。」


「これでやっと訓練に身が入るな。」


「よ~し。やる気出てきた~。」


「…やる気出たとこ悪いんだけどさ、このままじゃ間に合わないぞ。」


「…え?」


「いや、応募の日程が決まったのはいいんだが、その…早すぎたな。お前の体作りの時間が足らない。」


「そんな~!せっかくやる気出たのに~!ここで落ちたらまた次の応募まで待たなきゃいけなくなるじゃん!」


「今回特例とはいえスパンが短かったからな…次は長くなりそうだ。」


「い~や~だ~!」


「…そこでだ神霧、お前には少し無理をしてもらう。」


「…え?」


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