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第4話

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「いてて…ふう…よし、傷消えたな。」


誠太郎は自室の鏡で顔のガーゼを外し、傷の確認をしていた。飛炎たちが病室を訪問してから一週間ほど経った。誠太郎は退院し、久方ぶりに学校に登校するのだ。


「誠太郎ー!遅れるわよー!」


「はーい、今行くよー。ん?」


誠太郎は制服のポケットにあるスマホが振動していることに気が付く。画面を見ると一通のメッセージが届いていた。


「あれ…神童からだ…」


"神霧!今日から学校だろ!放課後予定あるから開けとけ!"


「なんだろ…あ!エレメンタルヒーローの応募か…完全に忘れてたわ。」


「誠太郎ー!」


「今行くって!」


朝子に再三呼びかけられ、少し急ぎ目に家を後にする。


「神霧ー!久しぶりだなー!」


「久しぶりだな神童…相変わらずうるせえな…!」


挨拶を交わしながら誠太郎は自分の席に着く。


「お前がいない学校は暇だったぜー!もう体は大丈夫なのか?」


「ああ。もう大丈夫だ、心配かけたな。」


「神霧くん。」


神童の後ろから桃崎がにこにこと顔を出す。そして桃崎の後ろに隠れている翠華の姿も目に入る。


「桃崎、おはよう。」


「おはよ。元気そうでよかったよ。改めてありがとね。それとね、翠華ちゃんが話があるんだって。…ほら!」


桃崎が後ろに隠れていた翠華を引っ張り出す。


「なんだよ…スマホの件はすまなかったな。助かった。」


「い…いえ…そのくらい平気ですわ…」


翠華の反応が普段と比べて妙にしおらしい。まるで別人のようだ。反応に困っていると、桃崎が翠華の頭をなでる。


「…ちゃんと言うって言ったでしょ?恥ずかしがらないでさ。」


「うぅ…あ…あの!あ!愛花さんを助けてくれて!ありがとうございましたわ!」


翠華が勢いよく頭を下げる。


「…いや、いいよいいよ頭上げてよ。結局助けたの俺じゃないし…」


翠華の予想外の行動に誠太郎は少し戸惑う。翠華は少し間を空け、独り言のように小さな声でつぶやく。


「…思い違いでしたわ…」


「え?なんて?」


「…なんでもないですわ…」


翠華は少し俯いたまま、少し笑った様に見えた。


「ところでさ神童、今朝のメールって…」


「そうそう。お前今日俺んち来いよ。」「え。」


予想もして無かった台詞に反応が少し遅れる。


「久しぶりに友達から家誘われたわ。」


「はいはい!私も行く!」


「…!ならわたくしも!」


「悪いな、今日は神霧と二人でデートだ。」


おちゃらけた様子で神童は言う。


「えー!!ずるいずるいずるい!!」


「はっはっは。また今度な桃崎。」


「あれ?エレメンタルヒーローの応募じゃないの?別の用事?」


「まあ…ね…じゃ、またな。」


神童は含み笑顔を浮かべながら自分の席に戻る。


「私たちも戻るね。またね神霧くん。」


「ああ、また。」


桃崎と翠華が席に戻るのを目で追う。先程の神童の様子に少し不思議に思いながらも、早くに放課後を迎える。


「じゃあね神霧くん。神童くんとのデート楽しんで♪」


「は、ちゃかすなよ。また明日な。」


翠華と共に教室を出る桃崎を見送った直後、カバンを背負った神童が机の前に立つ。


「よし…行くか!」


「…ああ。」


神童と共に教室を出る。神童の友達(?)たちからの視線が痛かったが、仕方がないと思い学校を後にする。校門をくぐったあたりで神童が話しかけてくる。


「なんか悪いな。」


「え?なにが?」


「いや、クラスのやつらがなんかしてたんだろ?さっき教室出る時もお前見られてたよな。」


「気づいてたんだ…まあいいよ。正直もう慣れっこだ。」


「そうもいかないんだ。お前が良くても俺が納得できない。」


「あ~…そうか。」


(なんというか…義理堅いやつだな…俺がいいっていってんだから気にしなくていいのに…)


「だから詫びたい。そのために今日は二人っきりがよかったんだ。俺にできるだけの償いをする。」


「いやいや、大袈裟だって。」


「まず、もうクラスのやつらにはお前に関わらないように強く言っておく。これでもなんか言ってくるやつがいたら俺に教えてくれ。ぶちのめすから。」


「ま、まあありがたいかな?」


「それとこれ。」


神童はそう言うと、一冊の本をカバンから取り出し、誠太郎に渡す。


「!こ…これ…!」


(『義妹の属性が多すぎて。』の最新刊じゃないか!なんでお前が知ってるんだ神童~!誰にも知られたくなかったのに…!)


「邂逅院が教えてくれたぞ。お前がスマホ落とした時待ち受け見ちゃったっぽくてな。本屋寄れなかったって言ってたのと発売時期的にもしかしてと思って。」


(邂逅院…あいつ後で絶対殴る…ていうかこいつ変なところで勘がいいな…俺が嫌がらせされてる時は全く気付かなかったのに…)


「…あんまうれしくなかったか?」


「!い、いや!うれしい…!ありがとうな…」


(やべ。顔に出てたか。)


「そっか、よかった。最後のは俺の家着いてからだから。もう少しで着くぞ。」


「それは楽しみだな…」


他愛無い会話をしながら通学路を歩く。15分程歩くと神童が立ち止まり、口を開く。


「ここだよ。」


「え?ええええ!!??」


神童の指をさす先を見ると、そこには豪邸が佇んでいた。テレビでしか見たことがないほどの大きさ。テレビでしか見たことがないほど豪華な装飾。家の周りには外壁が並んでおり、入り口と思われる場所には黒い巨大な格子の外門があり、周りの一軒家とは雰囲気から違っていた。


(なんだこの家…!でかすぎんだろ…)


「驚いたか?無駄にでかいんだよなーおれんち。ほら、こっちからは入れるぞ。」


呆気にとられている誠太郎を尻目に、神童は外門と隣接する壁の下部にあるパネルを操作する。ピッピッと電子音がしたかと思えば、ゴゴゴと音を立てながら外門が開く。「こっちこっち」と神童に手招きされるまま、敷地内に足を踏み入れる。改めて建物を見ると、まるでここが日本ではないかの様な印象を受け、言葉がなくなる。神童が屋敷の扉を開け、後ろからついていく形で誠太郎も中に入る。中には数人の使用人と思わしき執事やメイドが神童を出迎える。使用人と軽く挨拶を交わした神童は、誠太郎を二階の部屋に案内する。


「ちょっとここで待っててくれ。」


「お、おう…」


神童は荷物を置き、部屋を後にする。一人になった誠太郎はその場に座り込み部屋を見渡す。広い。見た感じその感想しか出てこない。誠太郎の自室の3倍ほどの広さ。部屋の一隅に扉があり、他の三隅にはそれぞれベッド、本棚、物置テーブルが置いてある。物置テーブルの上にはボトルシップが置いてあり、近づいてみてみるとかなり精巧に出来ているようだ。床に敷いてあるカーペットや、本棚にも精巧な装飾が施されており、全体的に洋式造りになっているようだ。


(改めて…金持ってんだなあいつ…親なんの仕事してんだ?あいつの溺愛してる様子だとエレメンタルヒーロー関係の仕事でもしてるのかな…ん?)


ふとあるものが誠太郎の目に入る。ベットの上に置いてあるそれは窓から入る光が反射し、キラキラと光っている。近くで見ると造形がよくわかる。それは球体だった。中身が機械仕掛けになっているように見えた。誠太郎が手に取ると、共鳴したように機械仕掛けの部分がクルクルと様々な方向に回りだし、中心部の光を放つ鉱石のようなものを一層見やすくさせる。


(あれ…これどこかで…)


「何見てんだ?」「うわ!」


神童に後ろから話しかけられ、驚いて声を上げる。その拍子に機械仕掛けの球体を手から落としてしまい、床にころころと転がる。それを神童がひょいと持ち上げる。


「あーそういや昨日寝ながらイジってたっけ。」


「あ…ごめん、勝手に触って…あれ?」


神童に目をやると服を着替えていた。軍服を白くしたようなごついズボンに、半袖のスポーツウェアのような白い服。肩から腕にかけて黒いラインが走っている。


「気にすんな。そんな大層なもんじゃないし。…これ気になるか?」


神童が機械仕掛けの球体を持ち上げて聞く。


「それもだし…なんだその服…」


ニヤと笑った神童は持っていたボストンバッグをどさりと床に置く。


「両方教えてやるよ。これに着替えてからな。」


「…俺もそれ着替えるってこと?」


「もちろん。」


「…だよ。」


「え?なんて?」


「やだよ…恥ずかしいし…」


「着ろよ。これもヒーローになるためだぞ。」


「ほんとかよ…くそ…分かったよ…」


「よく言った!えらいぞ!」


「じゃあ…ちょっと…」


「え?なに?」


「いや…着替えるから出て行けよ。」


「…なんで?」


「恥ずかしいんだよ!」


「?…じゃ着替え終えたら言ってくれ。」


あまりピンときていない神童は部屋を後にする。誠太郎はバッグを開け、中を確認する。すると先程の神童が着ていたズボンとスポーツウェアが入っていた。着替えたのちに神童を呼ぶ。


「おー、やっぱサイズはぴったりっぽいな」


「ぴったり過ぎて怖いな…あとなんかコスプレみたいでハズイ…」


「これからずっと着るかもしれないんだから、今のうちに慣れとけよ。じゃ、着いてきてくれ。」


神童の言葉に疑問を感じながら後をついていく。部屋を出て向かった先は階段を下りて一階のさらに下の方だ。地下室の入り口のようなドアを通った先には通路があった。二人の歩くコツコツという音が反響する。少し歩いた辺りで神童が口を開く。


「神霧、他の試験を受けるやつらと比べて俺達のアドバンテージは何だと思う?」


「…なんだろ。金があるとか?」


「その通り。俺達には金がある。」


(合ってんだ…)


「金があると普通じゃないことができる。試験に対する対策も、他のやつらじゃできない方法が俺達にはできる。」


「…ほう?」


「あんまピンときてなさそうだな。すぐに分かるよ。」


二人の会話の声が反響する。すぐに少し広い空間に出る。壁の一面はガラス張りになっているようだ。ガラスの向こう側は暗くてよく見えない。


「神霧、俺達にはアドバンテージがある。それを大きく活用しよう。」


神童はそう言うとスマホを取り出し、画面をタップする。するとガコンと大きな機械音を立てた後、ガラスの向こう側が照明で照らされる。ゴウンゴウンと作業音を鳴らしながら、何かを製造しているようだ。その何かに、誠太郎は見覚えがあった。


「…これって…」


製造ラインには腕の形を模したアームのようなもの、人型の骨組みのようなものが流れている。何より誠太郎の目についたのは、ガラスケースに展示されているマネキンだ。軍服を白くしたようなごついズボンに、半袖のスポーツウェアのような白い服を着たマネキンに、製造ラインに流れているアーム、人型の骨組みのようなものが着用されており、胸には部屋で見た機械仕掛けの球体が装着され、横一列にずらりと並べられていた。それを見た誠太郎は今日の疑問がすべて解決した。


「…まさか神童…」


「その通りだ、神霧。俺達は今から…」


神童はガラスに近づき手を当て、振り返る。


「このアーマースーツで訓練を開始する。」


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