第3話
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「……ん…あれ…」
目覚めた誠太郎はゆっくりと上体を起こす。いつもと違う景色、体の痛みに耐えながらもそこの病院の一室だと気付く。この場所に来た経緯を思い出せないでいると、神童が病室に入ってくる。
「…あ!目ぇ覚めたのか!よかったー…」
「神童…」
安堵した表情になった神童がベットの横にある椅子に座り話を続ける。
「お前、三日も意識がなかったんだぞ。俺も桃崎もめっちゃ心配したんだからなもうー…看護師さんにはお前が目が覚めたって事俺が後で言っとくから、とりあえず体休めとけ。」
「…ありがと。それよりお前、顔になんか貼ってあるけど…」
「あぁ、俺も少し怪我して…お前ほどじゃないけどな!俺も桃崎もすぐ次の日には学校行ったし、まあ桃崎に怪我がなくて良かったよ。あ、そうだこれ。邂逅院から預かっといたぞ、お前のスマホ。」
「やっぱり教室に落としてたか…」
「なんかあいつうるさかったぞ…あんな下民の落とし物なんて持っておきたくないですわー!…なんてさ。」
「なんとなく想像できるわ…次会ったときは謝っとかないとな…ていうかなんで二人は夕焼町にいたんだ?」
「前見せたエレメンタルヒーローのチラシあっただろ?あれの応募しに行ってたんだよ。お前こそなんでだ?」
「ちょっと本屋寄りたくてさ…」
「へえ~。まあチラシの応募も結局行けず仕舞いだからまた行かなきゃなんだけどな。勿論お前も行くだろ?」
「…そうだね。そうするよ。なんか必要な物とかある?」
「友情!勝利!努力!…ていうのは冗談で…特に何もいらないな。試験へのエントリーってだけだから。」
「へえ…試験って何やるの?」
「んー…俺もよく分からないんだよな…体力試験なのか筆記試験なのか…はたまた両方って事もある…試験内容の情報は民間には出回ってないんだよなぁ…」
「そんな事ある?そんなの対策のしようがないじゃん。」
「まあ体力面は頑張るしかないし…筆記もまあ大丈夫だろ!」
「筆記自信あんの?そんな頭よかったっけ。」
「いや…飛炎さんがなれるならいけるかもって。」
「お前まじか…憧れじゃなかったっけ?あんな感じでも頭いいかも知れないぞ?」
「うーん…なさそうだけど…話し方的にアホっぽくない?桃崎に似てるというか…」
「あ…」
ふと神童の後ろの方に目をやると、一人の人物が目に入った。
「誰がアホだって!?」
「うわあ!!」
飛炎の声に驚いた神童が椅子ごと横に倒れる。
「いって…え!?ひ…飛炎さん…」
「どうかしたんですか?」
「ただの見舞いだ!目が覚めていないと聞いていたがキマっているようだな!ほらこれ!リンゴを持ってきたぞ!」
相変わらず大きい声だ。声が病室内に響き渡る。
「ありがとうございます…わざわざいいですのに…」
「ああそうだな!前聞きそびれたこともあったからな!」
飛炎は起き上がろうとする神童の肩を吹き飛ばし、神童が座るはずだった椅子を手繰り寄せて座る。
「ぶへ!」
「神霧くん!君…ヒーローになる気はないか!?」
「…なります…絶対に…」
こちらを力強く見つめてくる飛炎の瞳をしっかりと見据える。前のように目をそらさず、誠太郎も力強く見つめ返す。
「…いい目だ。見違えたな!またな!」
飛炎はおもむろに立ち上がるとさっさと病室を出て行ってしまう。
(見ててくれよ飛炎さん…俺は絶対…)
「…ファンやめようかな…」
神童は愚痴を漏らしながら立ち上がると、荷物を片付け始める。
「俺もそろそろ帰るわ。学校来るってなったら連絡くれよ。」
「ああ。またな。ファンやめんなよ。」
「うるせー。」
神童はふくれっ面を浮かべながら病室を後にする。一人になった誠太郎は窓を開ける。入り込んでくる風がカーテンをはためかせ、カーテンフックがぶつかる音がカチャカチャと聞こえる。病室の空気が入れ替わったからか、誠太郎は清々しい気持ちで窓の外の景色を見つめていた。
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