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義妹が出来たその日から  作者: 仁波昼海
蒼井優:

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15/15

超がつくほど

「こんばんは、蒼井さん」


祭り会場から離れた神社の一角。

深く考え事をしていた俺に、不意に掛けられる透き通った声。

耳だけじゃなく、体で受け取ったような気がした。

見上げると、美しい浴衣に身を包んだまさに大和撫子な義妹。


「あぁ、糸瀬さん。朱里さん達はどうしたの?」


少し躊躇いはありながらも、俺はさりげなく右により、彼女の座るスペースを作る。

そしてゆっくり腰を下ろした。


「町内会の人達に、再婚の事も含めて話して来るんだってさ」

「そう、それは大変だね」

「そうだね」


会話が続かない。

人との会話はつくづく難を感じる。

俺はグローブを出してるだけ球を投げていない。


「ちょっと...回ろうか」

「分かった、私もちょうど言おうとしてたんだ」


絞りに絞り出した言葉は思春期男子が女の子を誘うような信憑性に欠ける言葉。

フォローなのかは分からない、でも糸瀬さんは快く受け入れてくれた。


俺はスっと立ち上がって、彼女に右手を差し出す。


「いいよ、握って。立ちにくいでしょ?」


一瞬彼女は驚いたような顔をする。

でも、すぐいつもの顔に戻って凛とした落ち着いた眼差しを俺に向け軽く微笑んで。


「ありがとう、()()()()



さっきまでも耳に入っていた事に変わりはないが、ものすごい盛況だ。

多分、方角を16方位で今表したとしても、全方向から声の主を出すことができそうというぐらいに。


俺は比較的動きやすい服装で来たが、彼女は浴衣だから後ろを気にしながら歩いていた。


正直な所、あまり相手の好みが掴めていない以上、必要のない提案や反応しにくい遊びをしたところでさっきのような無言が続きそうで、何にも言えていない。

だからといって、何にもしなくていいやーなどと、奔放になっている訳ではなく、少しでも仲が深まれば幸、などと思っている状態ではあった。


すると、不意に肩をトントン、とつつかれる。

後ろを振り向くと、少し気まずそうな顔?というかむず痒い顔をした糸瀬さん。何かを我慢しているのだろうか。


「どうしたの?糸瀬さん」

「いや、ごめん..ちょっとアレしたくて...」


「あれ...?」


彼女が小さく指を指す向こうにあった屋台は「射撃」だった。



「あ、すいません2人。お願いできますか」

「あいよー!はい500円ね〜」

「お願いします」

「はーい、じゃあ銃と球です」

「ありがとうございます」


慣れた手つきで、1発球を入れた銃を俺と糸瀬さんに、1つずつ渡す。


「ごめんね、蒼井さん」


申し訳なさそうにこちらを向きながら謝る糸瀬さん。

少し驚きはしたが、こういう一面があっても悪くないと思うのはちょっとお兄さんらしさが出てしまっているのかもしれない。


「いや、頑張って取ろう。糸瀬さん」


「うん、ありがとう」


俺のお返し的な軽いフォローに彼女は苦笑いをする。

気を使っているか否かというのをハッキリさせるのって凄く難しい。


彼女が何を狙っているのかは分からなかったが、独自の偏見...価値観にまかせて、狙うことにした。


とりあえず、頭が冴える彼女のことだから一等のゲーム機とかは絶対狙わないと思う。現実的な話で。

といえども、2等の熊のぬいぐるみを狙うかと言われたら正直ないと思った。

才色兼備の清楚可憐な女性が熊のぬいぐるみを家に置いているとしたら、とーってもギャップ萌えというのをするかもしれないが、そんなギャンブルに走った行動をするほど野暮じゃないし、もし取れたとしても「別にいらないかな...」とか返されたら虚無感に襲われそうな気がする。


だとしたら、俺が狙うべきは...。


1発目、軌道を覚える為に使った。

2発目、左に少しズレた。

3発目、今度は右にズレた。

4発目、上のキャラメルが落ちた。景品は最後にまとめて渡してくれるそう。

5発目、外した。終わった。


一発50円換算の5発からで2人分だったから、彼女の方も取れていなかったため、終わりだと思っていたのだが...。


あれ?何故かもう1発あった。


「あの...すいません、1発間違ってますよ」


俺は左で俺らを観察(?)していた屋台主に声を掛ける。


「いやいや、いいんだよ兄さんたち。()()()()なんだから楽しんじゃって!」


「「!!!」」


多分、俺と同時に彼女も反応していたと思う。

本当にこれっぽっちも気にしていなかったが、確かに夏祭りに男女二人できてたら..思われてもおかしくないか。


嘘をつくのは嫌いだ。

だから俺は正直に、答えようとした、その時。



「大丈夫だよ、蒼..ゅうく..ん」


「糸瀬..さん?」


スっと近づいたかと思うと、彼女はらしくない、どぎまぎした様子で俺にそういった。

こんなこと言いたくないが、多分カップルというものが名前を言い合うところから始まっていると思っているらしく、非常に赤くなった頬で所謂「ふり」というものを遂行しているようだ。


「早く...やっちゃってくださぃ...」

「あ...あ、うん。ごめんごめん.......ちとせ」


「っ!....」

傍から見れば超がつく初心なカップル。

俺は一刻も早くこの場から逃げだしたかった。


もう景品のことなんか頭から離れきっていたその時に放った球。



「大当たり〜!!!!」



屋台主が興奮した状態で鐘を鳴らす。


ふと見ると、俺が狙っていた「50色色鉛筆」が落ちた景品の着地点にキャラメルと共に転がっていた。

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