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BLUE TONE  作者:


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6/6

最終話 BLUE TONE

眩しいライトの中、最初の一音が鳴った瞬間。

10年の時間が、確かにほどけた。



■一曲目 ―― 「フレンズ」


イントロが流れた途端、客席がざわめく。


「え、レベッカだ…!」

「懐かしい!」


麻耶の声が、まっすぐに突き抜けた。


♪ 口づけをかわした日は…


年齢を重ねた分だけ、声には深みがあった。

若さの勢いではなく、人生を通過した人間だけが持つ色。


響のギターは無駄がなく、慎司のベースは確実に土台を作り、

大地のドラムが全体を前へ前へと押し出す。


観客の中に、かつての同級生がいた。

文化祭を見てくれた人が、いた。


「ホットハンズだ…」

誰かがそう呟いた。



■二曲目 ―― オリジナル「メモリーズ」


照明が少し落ちる。


「次は…私たちの曲です」


麻耶がそう言った瞬間、4人は顔を見合わせた。


静かなギターのアルペジオ。

慎司のベースが、心拍のように重なる。


♪ あの日の色は

今も胸の奥で鳴ってる


歌詞は、4人だけの物語だった。

失った時間。

遠回りした人生。

それでも、ここに戻ってきた奇跡。


麻耶の目に、涙が浮かぶ。

でも声は揺れなかった。


歌う理由が、はっきりしていたから。



■ドラムソロ ―― 大地の笑顔


間奏で、大地が軽くスティックを回す。


楽しそうに、全身で叩く。


観客が自然と手拍子を始め、

会場はひとつのリズムになる。


「やっぱ音楽って、こうだよな」


大地は心の中でそう呟いた。



■最後のサビ ―― 重なる声


響が一歩前に出て、ギターを高らかに鳴らす。

慎司のベースが包み込み、

麻耶の声が、空へと放たれる。


♪ さよならじゃない

またここで会える


その一節で、

麻耶は客席の奥にいる家族の姿を見つけた。


子ども達が、手を振っている。


「……ありがとう」


その言葉は、マイクを通さず、胸の中で呟いた。


最後の音が、静かに消える。


一拍の沈黙。

そして――


拍手。


割れんばかりの拍手と歓声が、4人を包んだ。


麻耶が深く頭を下げる。

響が拳を握りしめる。

慎司が安堵の息を吐く。

大地が、最高の笑顔を見せる。


ステージを降りると、4人は自然と円になった。


「……終わったな」

「終わったね」

「でも、なんか」

「始まった感じもしない?」


麻耶が笑った。


「うん。BLUE TONEは、まだ鳴ってる」



■エピローグ


数日後。

喫茶店「カモメ堂」の奥。


コーヒーを飲みながら、4人は穏やかに話していた。


「次、いつスタジオ入る?」

「月一くらいが現実的かな」

「新曲、もう一曲作ってみる?」

「いいね、それ」


無理はしない。

でも、終わらせない。


音楽は、人生の全部じゃなくていい。

人生に、そっと寄り添うものでいい。


窓から差し込む午後の光の中、

4人の笑い声が重なった。



**もう一度、音は鳴った。


それは青春の続きであり、

これからの人生の“ブルーな色合い”だった。**

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