昆虫
今 僕は芋虫だ
親しき良き人たちの時間を食いつぶし
のそのそと這い
外敵に怯えるだけで何もしない弱い虫
これから僕はサナギになる
今までの自分を捨てるわけではない
社会の不要な同調を撥ねつける方法を
外殻によって学びながら
今までの弱さと
今まで自分が受け取ったものを
複雑に絡み合わせて
どうなれば最も美しいか
じっくりと考え
身体を溶かして
そうして粛々と組み立てる
そして僕は蝶になろう
その羽は叶えた夢の模様をしていて
その鱗粉は心地よく人の心をくすぐり
そしてかつての良き人たちのように
時を燃やして他者の道を照らす
最後に僕は永遠を夢見て
自ら採集者の胸に飛び込む
虫ピンを刺されモノとなった僕は
ガラスケースの中で冷たい教科書となり
芋虫やサナギのころには愛することのできなかった
社会の仲間となったことを悦びたいと思う