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第七十話 嘘だよね?

翌日、私が学園に投稿すると昨日いたはずの令嬢の家が王家の騎士団によって家に調べが入ったらしいとアイリスが話しかけてきた。それをユーシェン様は興味深そうに聞き入っている。

 「なんでも悪魔崇拝をしている疑いで調べが入ったんだって。証拠も何もないのに変だよね。」

 「それは確かに妙だな。この国では悪魔崇拝は重罪だったよな?」

 「そうよ。良くて家取り潰し、悪くて一族全員王都中を引き回しの上打ち首の刑よ。」

 「それは恐ろしいな。・・・エレナ嬢?」

 まさか私がこの人悪魔崇拝してる匂いがします!と言って家が取り調べになったとは思わなかった。というかそれを口にすることもできない。私は今まさに王家の犬の状態なのだ。いくらアイリスとユーシェン様といえど話すわけにはいかない。

 「エレナ?どうしたの様子が変だけど。」

 「あぁ、ごめん。まさか悪魔崇拝する人がいるなんて驚きで。しかも昨日話を聞いた人でしょう?」

 「確かにそうだな。悪魔を崇拝しているとは到底思えないような穏やかな令嬢だったが。」

 「そういう人に限って意外と悪いことをしているものなんじゃない?あ、先生来た。」

 アイリスの一言で私たちは各々自分の席に戻っていった。

 「悪魔崇拝か・・・俺の国では馴染みのないものだが。」

 「うちの国は昔から悪魔大戦っていう悪魔崇拝者と悪魔たちとの大きな戦いが数百年にいちど起きてるよ。王家がどんなに惨い刑罰を与えると言っても何故か必ず戦が起きるの。最後に起きたのは50年前の第三次悪魔大戦。」

 「エレナのお婆様が活躍された戦だな。授業で話していたのを覚えてる。」

 「それはもうすごい活躍だったらしいわよ。王族でありながら前線で指揮を出し、戦ったって。」 

 「そこ、うるさいぞ。」

 私たちが話していると先生に注意されてしまった。大人しく口を閉じる。

 朝のホームルームでの話は悪魔崇拝者の疑いがある生徒が発見された、その家は今王家の騎士団によって調べられている。学園内で悪魔崇拝の動きを発見したものは先生か王子殿下に伝えるようにとの話だった。先ほどアイリスから聞いた話と何ら変わりない。

 思えば今までクラブ活動の人たちにしか魔力を同調させていなかったことをふと思い出す。この学園内でクラブ活動に入っているものは一握り。だからこそ悪魔崇拝の巣になっているのではと危惧された王子殿下は今までクラブ活動に焦点を当て私に探らせていたのだろう。

 それに私が今まで同調してきたのは一人ずつだけ。集団と一気に魔力を同調させたことは一度もない。先生の話も無駄に長いし試してみるのもありかもしれない。

 まずはクラス全員の魔力の波長を探ってみる。当たり前だけど全員違う。少し面倒だけどお婆様に教えてもらった秘儀を使ってみることにしよう。その方法は自らの魔力の波長に他の者の魔力の波長を強制的に合わせるというものだ。当たり前だがこれには欠点が存在し、無理やり合わせられた方は強い違和感を感じる。でも、この30人いる教室の中で使ったところで誰が魔法を使ったのかなんてわかるはずもないだろう。

 できるだけ先生の話を聞いている風を装って私は深呼吸をする。深く、深く、みんなの魔力を私の波長に少しずつ合わせていく。なかなか骨が折れる作業だがもし悪魔崇拝者がいれば一人一人と話していくことで確実に絞り込むことが出来る。

 魔力の波長が全員と合った。私は先日嗅いだ腐った果実のような香りがしたことを確認した。誰が?どこにいる?より深く探そうとしたとき、私の意識はぷつりと切れた。隣に座るユーシェン様の「エレナ!?」という声を最後に私の意識は深い水底へと沈んでいった。


 目を覚ました時、私は保健室にいた。

 「エレナ嬢、目を覚ましたか!」

 「急に倒れるなんてびっくりしたんだから。」

 そう言ってアイリスは私に抱き着いてきた。その時だった。甘ったるい体にまとわりつくような不快な香り。悪魔崇拝者だけが放つ腐った果実のような香り。あの時教室で感じた香りが今目の前にいる。どうやら魔力の同調が切れていなかったらしい。でも、そんなまさか。

 「アイリス・・・?」

 「どうしたの?エレナ。」

 いつものように微笑む真っ赤な瞳の奥に底知れぬ何かがいる気がした。

 間違いない。アイリスは悪魔崇拝者の一員だ。その事実に私は自分の顔が真っ青になっていくのを感じた。



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