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第六十九話 腐った果実の香り

その香りを認識した瞬間、私は頭がぐらりと重くなるのを感じた。自然とその場に立っていられなくなり倒れそうになる。

 「エレナ嬢!」

 ユーシェン様がそう叫び、私は倒れることはなかった。しかし、自分の足で歩くことは困難な状況になる。頭の中では同調した魔力がぐるぐると回っているのを感じた。

 (早く同調を解かなきゃ)

 必死の思いで同調を解除するとぼやけていた視界は少しずつ晴れ、なくなりかけていた意識も少しずつ戻ってきた。まさか悪魔崇拝者の魔力と同調するだけでここまでダメージを受けるとは思わなかった。お婆様は一体どうしていたのだろうか?これも訓練すれば慣れていくものなのだろうか。そんなことを考えていると私を支えてくれていたユーシェン様から声がかかった。

 「おい、エレナ嬢大丈夫か⁉」

 「大丈夫、ちょっと貧血気味なだけだから。」

 本当のことなど言える筈もなく私はそう答えた。目の前ではオロオロとした様子の悪魔崇拝者でありこの集まりの代表いた。

 「お話を伺っている最中に申し訳ありません。本日は体調もすぐれないのでまた後日お話を聞きに来てもよろしいですか?」

 「えぇ、もちろんです。」

 「最後に代表のお名前だけ伺っても?」

 「リース。リース・マスクールですわ。」

 「ありがとうございます。」

 私は聞いた名前をメモにとりその場を後にした。

 「ユーシェン様、私は王子殿下に報告があるから今日は先に帰っていて。」

 「それは俺が同席してはいけないのか?さっき倒れかけたのに。」

 「心配ありがとう。大丈夫だから。それじゃまた屋敷でね。」

 「あぁ、分かった。」

 納得がいかない様子のユーシェン様をその場に残し、私は生徒会室へと向かった。数度ノックすると「どうぞ」という声がした。私は扉を開け、王子殿下とサーラに先ほどのことを報告した。

 「それは事実か。」

 「はい、リース・マスクールさんは悪魔崇拝者である可能性が高いと思われます。」

 「あの女傑の孫がそう言っているのよお兄様。一度マスクール家を調べてみるのは良い案だと思うわ。」

 「しかし、マスクール家の内部を捜索する手段がな・・・。」

 そう言いながら王子殿下はぺらぺらと机の上に置かれた大量の資料をめくる。しばしの沈黙ののち、王子殿下は口を開いた。

 「おや、これはどうもおかしいな。」

 「どうかしたのお兄様?」

 「マスクール家を調べることができるかもしれない。父上に相談してみよう。エレナ嬢、今回の働きは大したものであった。引き続きよろしく頼む。」

 そう言われると追い出されるように私は生徒会室からつまみだされてしまった。一体、王子殿下は何を考えているのか。この時の私は知る由もなかった。



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