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第六十八話 これが悪魔の匂い?

密偵を命じられて数日、私はこの学園では空気になりつつある生徒会へ入ることを王子殿下に命令された。曰く、そのほうが密偵として働きやすいだろうというのが彼の意見らしい。特に断る理由もなかったため二つ返事で了承した。一つ誤算だったのは私が生徒会に入ると決まってから何故かユーシェン様も一緒に生徒会に入ることになったことだ。これには王子殿下も頭を悩ませていた。

 本来であれば四大公爵家と王族で運営されるはずの生徒会に辺境伯の娘と異国の皇子が入会するなんて前代未聞だが、王子殿下は私を広報係、ユーシェン様を書記の役職を与えてくれた。

 「エレナ、君が広報係にでもなれば学年を問わず多種多様な生徒と話しができるだろう。」

 「そうですね。正直に言ってしまうとどうやってクラスメイト以外の人物に近づこうか悩んでいたので助かりました。」

 「とりあえず今月から広報係が生徒会の活動や学園での活動について聞き、掲示板に記事を貼るという知らせを出しておく。内容についてはユーシェン殿と一緒に考えてくれ。正直、記事については適当な内容で構わん。あくまでそれが目的ではないからな。」

 「ごめんね、エレナ。こんなことに巻き込んでしまって。」

 サーラが申し訳なさそうにこちらを見てくる。その顔はまるで捨てられた子犬のようだった。

 「お婆様にコツも聞いたし友達のために役に立てるならこれ以上のことはないよ。活動は今日から始めても問題ないですか?」

 「あぁ、そうして欲しい。」

 王子殿下から許可ももらい、私はインタビューという名の悪魔崇拝者探しがスタートした。

 ちなみに今生徒会が空気と化しているのは生徒会長である王子殿下が有能すぎて他の生徒の仕事がないというのが原因である。エドお兄様は生徒会の仕事がなくなってラッキーと言っていたが生徒会でより強固な公爵家同士のつながりを持ちたがっていた生徒には迷惑な話だろう。今の仕事ぶりを見る限り、我が国の将来は安心だなぁと常々思う。


 生徒会室を出て一応書記に任命されたユーシェン様と一緒に私たちは学園で行われているバザーの活動や部活、学生の身分ですでに商売を成功させている生徒などに目星をつけて次々と話を聞きに行った。質問をしながら相手の魔力と自身の魔力を気づかれないように同調させる。これがなかなかに難しい。片方だけならともかく両方を同時に行うというのは慣れるまで骨が折れる作業だった。

 ある程度記事にできそうなくらい資料が集まったらユーシェン様と一緒にそれらをまとめて掲示板に貼りだす。この作業をしている時のユーシェン様はいつもより饒舌で楽しそうだった。

 そんなことを繰り返して数週間が経った頃、私はある疑念を胸に抱いていた。『本当に悪魔崇拝者なんてこの学園にいるの?』と。しかし、そんな考えもすぐに吹き飛ぶことになった。

 その日、私とユーシェン様は貧困街の孤児に教育を施すために活動しているという集まりに話を聞きに行った。いつものように話を聞きながら魔力を同調させる。花のような香りしかしない。一般の生徒と話しながら今回もダメだったかと肩を落としていると奥からこの集まりの代表という女子生徒が現れた。

 「あら、あなたたちが噂の広報係?」

 胸元のリボンから見て上級生ということが分かる。慎重に魔力の波長を合わせながら話を進める。

 「そうです。王子殿下から直々にお願いされて毎週記事を掲示板に貼りだしているんです。」

 「そうなのね。うちの集まりの話を聞いてもらえて光栄だわ。」

 そう言って代表はにっこりと笑った。同時に魔力の波長がぴたりと合う。私は自分の顔から血の気が引いていくのを感じた。

 果実が腐ったような甘ったるい香り。間違いない、この生徒は悪魔崇拝の関係者だ。


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