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第六十八話 専門的なことは専門家に

何故か学園内にいる悪魔崇拝者を探す密偵に選ばれた私は悩んでいた。悪魔崇拝をしている人の特徴はなにかあるのかについて。王子殿下に聞いてはみたものの分からないらしい。この難問に頭を抱えているとふと、ある考えが頭に浮かんだ。

 『専門的なことは専門家に聞くに限る』

 そう思いついた私は王子殿下に許可をとり、第三次悪魔大戦での英雄であり元王族でもあるお婆様にのみ相談することを許可してもらった。

 帰宅後、早速お婆様に連絡を取り、翌日の夜に話をしてもらえることになった。

 「エレナ嬢、そんなにソワソワしてどうしたんだ?」

 「いや、別になんでもないよ。」

 密偵を任された日からどうしても落ち着かなくてこんなことをユーシェン様やアイリスに言われることがあったが無事にお婆様と話をする日がやってきた。

 夕食後、私は応接間にいるお婆様のもとへと向かった。

 「失礼します。」

 「エレナ。緊急で私に聞きたいこととは何かね?まぁ、紅茶でも飲みながらゆっくり話そうじゃないか。」

 そう言うとお婆様は私の分のティーカップに紅茶を注いでくれた。お婆様の向かい側に座り、紅茶を一口飲んでから私はゆっくり口を開いた。

 「実は学園内で悪魔崇拝の動きが見られるみたいなの。それで王子殿下のお願いでお婆様の孫である私に悪魔崇拝者を探してほしいって言われたの。でも私は悪魔崇拝者の特徴なんてさっぱりわからなくて・・・。だって、直接あなたは悪魔崇拝者ですか?って聞くわけにもいかないでしょ?お婆様なら何か知ってるんじゃないかと思って。」

 一通り話すとお婆様は何か考え込むような素振りを見せ、紅茶を飲んだ。そして微笑みながらこう言った。

 「そんな簡単な事かい。良かったよもっと重大なことを相談されるんじゃないかとドキドキしていたんだ。」

 「簡単なこと!?」

 「そう、簡単なことさ。エレナ、相談する相手を間違えなくて良かったね。この私なら確実に分かる方法を教えてあげることが出来る。」

 「何か方法があるのね。教えてお婆様。」

 「私やエレナのような魔力が生まれつき高いものにしか判別できない方法なんだが・・・。相手の魔力を感じ取るんだ。魔力には匂いがある。花のような香り、新鮮な果物のような香り。普通の人ならそんな匂いがする。でも、悪魔崇拝者だけは違う。奴らからは腐った果実のような甘ったるい嫌な匂いがするんだ。」

 「魔力の香り・・・。そんな話初めて聞いた。」

 「まぁ、学校では教えてくれないだろうな。方法を教えるから近くに来なさい。」

 お婆様に言われるまま私はお婆様の隣に座った。

 「これはイメージの問題だ。エレナ、私の魔力とお前の魔力が同調するようにイメージしなさい。」

 「分かった。」

 魔力が同調するようにイメージする。お婆様は簡単そうに言うがこれがかなり難しい。かろうじて相手の魔力の波長のようなものは感じ取れるがそれに自分の魔力の波長を合わせるのが難しい。

 『エレナ』

 うんうんうなっていたら急に懐かしい声が聞こえた。私はハッとしてあたりを見渡す。そんな、もうあの人はいないのに。

 『エレナ、合わせるんじゃないの。相手に合わせさせるのよ。』

 「お母様・・・?」

 「おや、遊びに来てるのかい?」

 「お母様の声がして・・・。」

 「エレナを助けに来てくれたんだね。」

 懐かしい声に少し涙が出そうになる。でも、そんな時間はない。お母様が助けに来てくれたのなら言う通りにしてみるべきかもしれない。

 魔力の波長を合わせるのではなく合わせさせる。頭の中では強引に糸を引っ張るようなイメージが出来上がっていた。そしてそれを自分の糸とピッタリ合わせる。すると満開の花のような香りが広がった。

 「その様子だと成功したみたいだね。」

 「お婆様は魔力の匂いまで美しいのね。」

 「そう言われるのは随分久しぶりだ。コツはつかめたかい?」

 「うん、つかめた気がする。」

 私がそういうとお婆様は満足げな顔をして立ち上がった。

 「それじゃ私の役目はこれで終わりだな。もし、悪魔関係で相談したいことがあればいつでも呼ぶといい。私以上に悪魔に詳しいものはいない。」

 「ありがとうお婆様。」

 お婆様は立ち上がり、部屋から出ていった。私はさっきの感覚を忘れないように必死でイメージを脳裏に焼き付けるようにしばらくその場に座っていた。

 お婆様のおかげで明日から本格的な調査ができる。きっと危険もあるだろう。それでも私が死ぬことになる可能性が消えるのであれば喜んでこの任務を全うする。明日からは疲れる日々が続くだろう。応接間を出た私は早く休むために自室へと足早に向かった。


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