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第六十三話 舞踏会の終盤

第六十二話 舞踏会の終盤

 私がホールへと戻ると舞踏会は終盤へと差し掛かっていた。談笑するもの、食事を楽しむもの、踊るもの。それぞれが最後に向けて舞踏会を楽しんでいる。私はお父様たちがいる場所に戻るとお父様は楽しそうにロレンツォおじさまと話をしていた。

 「お父様、戻ったよ。」

 「おぉ。おかえりエレナ。ユーシェン様に呼び出されたんだったな。何を言われたんだ?」

 「舞踏会がつまらなくて話し相手として私を呼んだみたい。そばにリーハン様もいたし別に大したことは話してないよ。」

 私は嘘をついた。本当はなんか重要そうな話を聞かされたし、告白まがいのものもされた。部屋にはユーシェン様と二人きりだったしリーハン様はいなかった。未婚で婚姻関係のない男女が密室で二人きり、しかも相手は一刻の皇子ときたらお父様は頭を悩ませるだろう。

 「舞踏会もやっと終わりが近づいてきたね。」

 「そうだね。今年もすごく疲れた。」

 舞踏会で起きたさまざまなことを思い出しながらそう話すとお父様は私に向かって手を差し出してきた。

 「エレナ、せっかくの舞踏会だ。最後に一曲お父様と踊ってはくれないかい?」

 思わぬ誘いに驚きつつも私は迷わず手を取った。

 「喜んで。」

 そう言うとお父様はにっこりと微笑み中央のダンスホールまでエスコートしてくれた。さすがは離れしているというか、エスコートに隙がない。全ての所作が完璧で思わずため息が漏れそうになる。

 周囲にいる未亡人の貴族や貴族令嬢たちがお父様を見て密やかに黄色い歓声をあげていた。そういえば私のお父様は密かにモテていることを今思い出した。

 お母様が亡くなって十年が経つ。それなのにお父様はただ子供達だけを愛し、決して後妻を娶ろうとはしなかった。一時期こぞってお父様の妻になりたいという女性たちから猛烈なラブレターが我が家に大量に届いたことがあった。その時、幼い私は「お父様結婚するの?」と聞いた。するとお父様は迷わず、まっすぐな目で「しないよ。私にはお母様だけなんだ。」と言って優しく頭を撫でてくれた。

 「どうしたんだエレナ。何か考え込むような顔をして。」

 お婆様譲りの切れ長の瞳とお爺様譲りの優しい色合いをした瞳と髪。表情は常に穏やかで目元には少し皺がある。ロレンツォおじさまには立派な髭があるがお父様は髭が生えづらい体質らしく口周りは綺麗だ。身内から見てもうっとりしてしまうような容姿を指定いる。

「いや、お父様って罪な男だなって。」

 「それはエレナの方だろう。全く、誰に似たのやら。」

 曲が変わると同時に私とお父様はダンスを始めた。昔からよく一緒に踊っていたせいかお父様と踊るのが一番楽だ。

 踊りながらお父様は口を開く。

 「エレナは歳を重ねるごとにお母様に似てくるな。」

 「そうだよね!私も思ってたの。だから心細い時とかは鏡を見るとお母様がそこにいるみたいな気持ちになって落ち着くんだ。」

 「確かにそうかもしれないな。本当にエリーザの生き写しだ。」

 「お兄様はお父様に似てるよね。トマスは私と同じでお母様に似ててメリッサはお婆様そっくり!」

 「確かにそうだな。まさかあそこまで母様に似た子供ができるとは思ってもいなかったよ。」

 そう言いながらお父様は笑った。家族にしか見せない飾らない笑顔だ。口元にはエクボが浮かんでいる。

 「私は本当に幸せ者だよ。エリーザに出会えて、結婚までできて、可愛い子供達にも恵まれた。」

 「私もお父様とお母様の子供に産まれて幸せだよ。」

 「そうか。」

 何かを噛み締めるようにそう呟くとお父様は何も言わなくなった。二人で無言でダンスを踊る。しかし、その沈黙は優しいものでなんだかホールにいるのに家にいるような、そんな気持ちになった。

 曲が終わりに近づく。ゆったりと終わりに向かって歩いていく曲調に合わせ、私たちの足取りも穏やかになる。

 曲が終わりを迎えた。私たちは家族のもとに戻ると双子たちは興奮した様子でダンスの感想を口々に言い合い、お兄様は「まるでお母様とお父様が踊っているようだった」と言われた。

 「さて、子供達。夜ももう遅い。私たちはそろそろ帰るとしようか。」

 お父様の言葉を合図に私たちは出口へと向かった。


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