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第六十二話 告白

「なぜ、か。どうしてだろうな。エレナ嬢には俺の全てを知っていて欲しくなる。」

 ユーシェン様はお茶を啜った。

 「これが恋なのだろうか。」

 「こい⁉︎」

 突然の告白に動揺していると熱を帯びたユーシェン様の瞳が近づいてくる。ゴツゴツとした手のひらがそっと私の頬に触れた。

 「エレナ嬢、君はなぜこうにも美しく強いんだ。」

 「そ、そんなの知らない。」

 私まで熱に浮かされそうになる。顔に熱が集まっていくのが嫌でもわかった。

 「愛らしいな。すぐにでも俺のものにしたくなる。でも、できないんだろう?君は必ず拒否する。エドアルド殿と同じように。」

 ドキリとした。心臓の音がうるさい。これが恋?違う、熱に浮かされているだけだ。私に恋をする資格なんてまだ存在しない。

 ユーシェン様の手を払い、私はまっすぐ彼の瞳を見つめる。

 「そうよ。私はどんな縁談でも必ず断る。今の私にはその資格はないから。」

 「そう言うと思ったよ。」

 ユーシェン様はお茶を一気に飲み干すと再びこちらに向き直った。

 「数年前の茶会で会ったことを覚えているか?」

 「茶会?」

 「王家主催の茶会だ。俺がハンカチを落として探していたら一緒になって探してくれた。今でも思い出せる。君がハンカチを見つけた時のまっさらな笑顔を。」

 「そういえばそんなこともあったような。」

 確かに昔王家主催のお茶会で同い年くらいの変わった衣装を身に纏った男の子と一緒に探し物をした記憶がある。まさかあの時の少年がユーシェン様だったとは。人の縁とはどこで繋がっているかわからない。

 「その時から俺は君しか目に入らないんだ。苦しいんだよエレナ嬢。・・・すまない取り乱した。」

 「ごめんなさい、すぐに返事ができなくて。」

 「いいんだ。エレナ嬢にも事情があることはわかっている。これは俺の弱さだ。すまない。」

 悲しそうな顔をするユーシェン様を思わず抱きしめたくなる。でも、そんなことしてはいけない。より彼を傷つけるだけだ。私はそっと立ち上がった。これ以上会話しても彼を傷つけてしまうだけだ。

 「ユーシェン様、一つ忘れないで。」

 「なんだ?」

 「私は所詮一国の辺境伯令嬢であることを。」

 「あぁ、わかっているよ。」

 私は憔悴しきったユーシェン様一人を置いて部屋を出た。なんだか尾が引かれる思いだったけど仕方のないことなのだ。

 どれもこれも全部私のせいなのだからこれ以上何も言えることなんてない。一向に消えない死の線。私は後どのくらい生きられるのだろう。そんなことを考えながら舞踏会の会場に戻った。



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