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第五十九話 ダンスのお誘い

 アイリスと楽しく談笑している見覚えのある顔が近づいてきた。

 「こんなにも美しいお嬢様方が壁の花ですか?」

 「ちょっとそんな言い方やめてよエドお兄様。それに別に舞踏会だからってずっと踊っている必要はないでしょう?」

 どうやら家族の輪を抜け出してきたらしいエドお兄様は私たちの横に腰掛けた。

 「アイリスさんは婚約者とかいないの?」

 「いえ、まだいません。」

 そう答えたアイリスの横顔はどこか寂しげで、どこか遠くにいるように感じた。もしかしたら私とは違う理由で縁談を断っているのかもしれない。

 そういえば私とアイリスはくだらないおしゃべりは散々してきたがアイリスの婚約者の話や家のことについて一切知らないことを思い出した。別に調べればいいだけの話だが友人相手に密偵を使うのもいかがなものかと思いずっと避けてきた。

 「そういえばアイリスって家のことあんまり話さないよね。」

 「私の家なんてエレナの家に比べたらつまらないものだから。みんな家族に無関心。昔は違かったんだけどね。」

 そう話すアイリスの顔は悲しそうだ。この話はこれ以上しないほうがいいのかもしれない。せっかく舞踏会だ。悲しい思いはさせたくない。

 「ていうかなんでエドお兄様はこっちにきたの?」

 「ふふ、私にはわかるなぁ。」

 横でアイリスが微笑を浮かべていた。

 「え、何?」

 「そこまで鈍感だと流石の俺も傷つくぞ。」

 エドお兄様は立ち上がると私の前にひざまづいた。

 「私と一曲踊ってくださりませんか?」

 手をとり、いつもとは違う調子でそう言われ私の顔は一気に赤くなっていたに違いない。隣に座るアイリスはそれが面白いのかくすくすと笑っている。

 「私でよければぜひ。」

 エドお兄様の手を取ると同時に聞き馴染みのある声が近づいてきた。

 「お姉さまいたー!エドお兄様もお姉さま誘えてよかったねぇ。」

 「トマス!」

 急に現れたトマスに驚いていると私の隣に座るアイリスを見て「うわぁ」と声を上げた。

 「お姉さん、お姉さまのお友達?とっても綺麗!」

 ニコニコと笑いながらアイリスに近づくとトマスは胸元にさしていた花をアイリスに手渡す。

 「ねぇねぇ綺麗なお姉さん。お名前教えてもらってもいい?」

 「私はアイリスよ。エレナ、この子は?」

 「私の弟。」

 トマスはもじもじとしながら何かを考えている様子だった。そして何かを決心したかのようにアイリスの前に跪くとこういった。

 「アイリスさん!僕と一緒に踊ってくれませんか?」

 思わず吹き出しそうになる。十才になる弟の可愛らしいお誘いは見ていて心温まるものだった。それはエドお兄様も同じらしく後ろを向き笑いを堪えている。一方、アイリスはというと少し驚いた顔をしたものの笑いながらトマスの手を取った。

 「私でよければ喜んで。」

 「やった!」

 ドヤ顔で私たちを見るトマスに耐えきれず私とエドお兄様はついに笑ってしまった。

 「よかったなぁトマス!ダンスの誘いを受けてもらえて!」

 「アイリス、ありがとう。」

 「ふふ、こんなに可愛らしいお誘いは初めて。」

 私たちはダンスフロアに行くために互いにエスコートされながら移動を始めた。それにしてもトマスはアイリスのような女性が好みだったのか。なかなかの面食いである。そんなことを考えながら私はエドお兄様に引かれて歩みを進めた。

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