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第五十六話 先延ばしの縁談

 時間が経つにつれて謁見を終えた貴族が続々とホールに集まってきた。

 創世祭で貴族が行うことは主に二つ。一つ目は貴族間の交流を目的とした昼間の交流会。ここでは縁談についてや商談など普段関わりがないような家系同士のパイプを繋ぐ役目を担っている。二つ目は夜の舞踏会。これはただ踊るだけだ。私のように婚約者がいないものは制限はないが婚約者がいる令嬢、令息は違い以外の異性と踊ってはいけないなど細かいルールがある。まぁ、私には関係のない話しだが。

 「お父様、ロレンツォおじ様が私に用事って本当?」

 人混みをかき分けながら私とお父様は家族が待つ場所に向かう。

 「それは本当だよ。エレナと直接話したいことがあると言われてね。所在を聞いたらコンティティ家の令息に捕まってると聞いてね。急いできたんだ。」

 「そんなに急がなくても。夫人、ちょっと怒ってたよ?」

 「夫人の性格についてはエレナも一度は耳にしたことがあるだろう?彼女は昔からヒステリックでね。そんな家に娘を嫁がせたいとは思わないじゃないか。」

 「縁談の話視されてたの知ってたんだ。」

 「大体予想はつく。年相応の令息が同い年くらいの令嬢を誘うんだから。」

 そんなことを話しているとみんなが待つ場所へと無事に辿り着いた。何やら楽しげに話していた何私たちが着いた途端、その視線は一気にこちらへと向く。

 「戻ってきたよ。」

 「コンティティ家に目をつけられるとは予想外だったなエレナ。」

 「お兄様も戻ってきてたの?」

 「ついさっきな。」

 モニカ様に捕まっていたはずのお兄様はどうやって切り抜けたのかしれっとそのばに立っていた。モニカ様は貴族らしい貴族である。モニカ様より階級が低い我が家のお兄様がどうやって彼女の話から抜け出したのか疑問だ。

 「エレナちゃん、待っていたよ。」

 「ロレンツォおじ様。」

 恰幅の良い中年男性が私に近づいてくる。そばにはノエミ夫人とエドお兄様が立っていた。

 「遅くなったな。」

 「コンティティ家に捕まっていたんだろう?仕方ないさ。」

 「エレナちゃん、今日は一段と綺麗ねぇ。ますますお母様に似てきて。」

 ノエミ夫人がふわりと笑った。先ほどまで少しピリついた場所にいたせいかこの場がとても暖かく感じる。

 「ありがとうございますノエミ夫人。ところで、私に話とはいったい?」

 そう聞くとロレンツォおじ様が口を開いた。

 「実はエレナちゃんにうちのエドアルドが縁談を申し込みたいんだ。」

 その話かーと思った。私とエドお兄様の縁談の話が出ているということは随分前から知っていた。確かに今日はそのことについて話す良い機会かもしれない。でも、私はそもそm誰かと婚約関係になる気はないしそれよりも。

 私はお兄様の方をチラリと向く。長いまつ毛、薄緑の瞳の先には彼女がいる。私たちはずっと知っている。私なんかよりずっと婚約すべき人物がいることを。

 「お話はありがたいのですが私よりも先にお話しをすべき人がいると思いますよ?」

 「それはそうかもしれないが。」

 そう言ったのはエドお兄様だ。彼もお兄様の気持ちを知っている。その上で私と縁談の話をしようとしているのだ。

 「私は先にきちんとお話しして欲しい方たちがいるんです。まずはお二人のお話がまとまったらエドお兄様との縁談について考えます。」

 「それは一体誰だ?」

 私は無言でお兄様の元へ近づいていく。

 「お兄様。もう、隠すのはおやめになって。」

 「エレナ・・・。」

 「どういうことだエレナ?」

 「続きはお兄様から直接聞いてください。」

 さぁ、私が縁談を回避する場は整った。あとは本人たちに任せるしかないだろう。

 お兄様は何かを決心したように拳を握り締め彼女もとに近づいていく。ずっと、ずっと思いを馳せていた彼女の元へ。


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