第五十三話 謁見
王城に着くと私達とユーシェン様、リーハン様と一度別れ、貴族の待合室へと向かう。創世祭では国じゅうの貴族が序列順に王に謁見することが義務付けられており、四大公爵家、辺境伯といった感じで順番が決められている。この国に辺境伯は我が家しかないためあまり待つことなく王に謁見できる。
謁見が終わると会場に通され貴族同士の交流が始まる。そして王が全ての貴族との謁見を終えると演説を行い創世祭が始まる。毎年女神ヘラノーラに仕える巫女たちの舞の披露や様々な催しが開催され一通り終わると舞踏会が始まる。
この一日がかりで貴族としての責務を全うしないといけない創世祭はあまり得意ではない。特に今我が家には悪魔崇拝の噂が立っている。王殿下がなんとかしてくださるとは言ってくれたものの周囲の貴族の視線はあまり良いものではない。我が家は四大貴族の次に爵位が高いため面と向かって何かを言ってれくる人はいないがその視線とコソコソと何かを話す様子から察するに未だに噂の件は解決していないらしい。
家族同士で気軽に話をしていると待合室の扉が開いた。そこには王の側近の姿があった。
「キーニャ辺境伯の皆様。王がお待ちです。」
どうやら四大貴族の謁見が終わったらしい。私たちはソファから立ち上がり王の待つ玉座の間へと向かった。
「久しいなキーニャ辺境伯よ。」
「いつも娘がお世話になっております。今年も何事もなく創世祭を迎えることができとても嬉しく思います。」
お父様はこういった畏まった場所が苦手だ。そのせいかお兄様と私はいつもドキドキしながら王殿下と話すお父様の姿を見ている。基本的に王殿下から話しかけられなければ私たちが喋ることはない。
私はチラリとサーラを見る。その顔は普段見る天真爛漫な姿とは一転して凛とした雰囲気を放つ王女としての姿があった。今回は薄い紫色のドレスを身につけており、首には色彩の合わないブルーダイヤモンドを使ったネックレスが付けられていた。
そういえば数日前に興奮した様子でサーラがこんなことを言っていた。四大公爵家で青を司るマレアーノ家の次期当主であり同級生でもあるテオドーロさんからブルーダイヤモンドを使ったペンダントをプレゼントされたと話していた。テオドーロさんはサーラ好みの線の細いイケメンで深い青色の髪を伸ばし一つにまとめている姿が印象的だ。サーラの兄である王子殿下と同じく王子様のような見た目をしているため女子からの人気も高い。そんな彼からプレゼントを貰ったとはしゃぐ姿は実に可愛らしかった。
「ところでエレナさん。先日見せてくださったお姿はご家族にはお見せしたのですか?」
お父様と王殿下の話が長すぎて考えに耽っていた私に王妃殿下が話しかけてきた。そういえば見せてなかったな。
「いえ、まだ見せることはできておりません。」
忘れていたとは口が裂けても言えない。
「エレナ、先日見せた姿とは一体なんだ?」
当然何も知らないお父様が聞いてくる。しかし、あの姿になるとせっかく可愛いメリッサが作ってくれたドレスに穴が空いてしまう。さて、どう説明したものか。
「エレナったら大切な家族に見せるのを忘れていたのね。私から説明します。」
ここで助け舟を出してくれたのはサーラだった。ありがたい。
「先日、エレナが王城に遊びに来た際に悪魔の姿だと騒がれている正体を見せてもらいました。この姿についてはお父様、お母様、お兄様。つまり王族全員が知っています。今現在周囲で騒がれている悪魔の姿の正体、それは龍でしたわ。」
「龍、ですか?」
「あまり驚かれないのですね。」
「少し心当たりがあるもので。」
「そうなのですね。エレナ、創世祭が終わったらすぐにご家族の皆さんに先日と同じ姿を見せること。約束して。」
「はい・・・。」
「私からは以上です。お母様、お兄様、他に何かございますか?」
「僕は特にないかな。」
「私もありません。」
「それでは皆話すことはないと言うことで良いのだな?」
全員が頷くと王殿下は謁見の終了を言い渡し会場へと案内するよう側近に言った。私たちは案内されるまま玉座の間を去った。




