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第四十六話 悪魔なんかじゃありません!

 リーシャのことが色々と片付くまでに一週間もかかった。

 まず女神ヘラノーラ教会のあり方についての言及と今回学園に侵入してきたゼゼという男には懲役刑が課された。また、女神ヘラノーラの魂を抜かれたリーシャはどこか幼く、純粋で愛らしい子だった。本来であればこちらが本当の性格だったのだろう。女神ヘラノーラによって操られていたリーシャの両親は洗脳から解放され現在はヘラノーラが好き勝手した領地を立て直そうと必死になっているらしい。

リーシャについてはというと記憶はなくとも学園に甚大なる被害をもたらしたということで修道院へ行くことが決定した。これでもう二度とリーシャと会うことはないだろう。

そんなこんなで私も事情を聞かれたり休暇をとれと言われて学校を休んでいる間にあっという間に一ヶ月が経っていた。今日は久しぶりの登校日だ。制服に腕を通しいつものようにユーシェン様と登校する。やっと日常が戻ってきたようだった。

「なんかやっと日常に戻って来れた感じがするね。」

「そうだな。あんなことがあったからな。もう懲り懲りだなあんな面倒ごとは。」

「同感。私もあんな思いもう二度としたくないね。」

そんなことを話しながら廊下を歩いていると見慣れた白髪が私たちに向かって走ってきた。

「アイリス!久しぶり!元気してた?」

「元気にはしてたけど教室が大変なの!早く来て!」

私はアイリスに手を引かれたまま教室へと入ると黒板にはデカデカと『エレナ・キーニャは悪魔の子』と書かれていた。クラスメイトたちの視線も冷ややかだ。

「なにこれ。」

「エレナは悪魔の子じゃないのに誰がこんなことを・・・。」

私とユーシェン様は顔を見合わせる。正直、悪魔の子と呼ばれる要素はあった。あの鱗と翼だ。それを見た学生がみんなに危険を伝えるために書いたとしたら納得がいく。しかし、あの時クラスメイトは避難済み、授業中だったというのに一体誰がこんなことを。とりあえずあのくだらない落書きを消そう。そう思い私は黒板消しを手に取り落書きを一気に消した。

「おいおい、本人自ら消したぞ。」

「本当に悪魔だから都合が悪くて消したんじゃ・・・。」

背後でそんな声が聞こえた。みんなが不安な気持ちになるのもわかる。悪魔とは恐ろしいものだ。実際に悪魔と戦ったお婆様からその話は何度も聞いている。しかし、私にも譲れないものがある。悪魔でもなんでもないのに濡れ衣を着させられるのはごめんだ。

私は背後でコソコソと話していた一段を指さしてこう言った。

「あのねぇ!そもそも私が本当に悪魔の子だとしたらとっくの昔に戦争を引き起こしてるわ!根拠のない噂に踊らされて私のことを悪く言わないでくれる?」

「でもエレナさんの背中に悪魔のような翼が生えてたって噂が。」

「それってあなたが実際に見たわけじゃないでしょ?噂程度に踊らされてたら今後が不安ね。あなた達が大好きな英雄の言葉を借りるわ。自分の目で見たものだけを信じなさい。これの意味わかる?」

私が捲し立てるとクラスは言いようのない不快な静寂に包まれた。そこまで言って少し気持ちが落ち着かなくなり私は教室を飛び出す。ユーシェン様やアイリスの生死の声は聞こえないふりをした。

始業のベルが鳴った。私は教室に戻ることもなく彷徨うように学園を歩いていた。

あの場面を誰かに見られていたのは不覚だった。もっとちゃんと周囲に目を向けていれば。そんな考えが頭の中でぐるぐると回る。

「よう、エレナ。」

聞き馴染みのある声が背後からして後ろを振り向く。そこにはエドお兄様が立っていた。

「今授業中じゃないの?」

「それはエレナも一緒だろ?にしてもお前酷い顔してるな。何かあったか?」

「エドお兄様は私のこと信じてくれる?」

「当たり前だろ。」

「私の話聞いてくれる?」

「当然。」

その時、堰を切ったように涙が溢れてきた。エドお兄様は急に泣き出した私に戸惑いつつもハンカチを手渡してくれる。ありがたくそれを頂戴し涙を拭く。

「話を聞くのにぴったりな場所があるんだ。案内するよ。」

そう言ってエドお兄様は私の手を握り慣れた様子で歩き始めた。一体どこに向かっているのかはわからなかったが私の心は安堵に包まれていた。


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