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第三十八話 ピクニック!

 エドお兄様の屋敷はさすがこの国の四大貴族というだけあってとても広い。屋敷の中もさることながら庭の広さも膨大だ。その中でもエドお兄様のお気に入りなのが大きな木が生えた池のほとりだった。昔からよく遊びに来てはいたが何度来ても庭の様子に圧巻されてしまう。さすが緑、草木の魔法を得意とする貴族の屋敷だ。

 「こうやって二人で話すのも久しぶりだな。」

 エドお兄様は道中で庭の花を積みながら話しかける。

 「そうだね。いつもはサーラにアイリス、ユーシェン様にお兄様もいるからね。」

 「お前の周りにはいつも人がいる。全く、困ったものだな。こう言う機会を設けなければ二人で一緒にゆっくり話すこともできない。」

 そう言うとエドお兄様は何やら魔法を使い摘み取った花をアレンジしていく。

 「ようこそルバッフォ家へ。誘いを受けてくれてありがとうな。」

 「わぁ、すごい綺麗。」

 エドお兄様が手渡してきたのは季節の花を使った可愛らしい花束だった。香りもよく、何より瑞々しくて花も活き活きとしている。

 「防腐の魔法をかけておいたからずっと楽しめるぞ。」

 「え、本当に⁉︎嬉しいなぁ。屋敷に戻ったら早速部屋に飾らなくちゃ。」

 「そうしてくれると嬉しいよ。ほら、目的地が見えてきた。」

 そう言いながらエドお兄様が指差す方には美しい睡蓮の花が咲き誇る池と青葉が生い茂った大きな木が見えてきた。昔はよくお兄様とエドお兄様の三人でこの場所で遊んだ記憶がある。

 「懐かしいね、昔はよくここで三人で一緒に遊んでた。」

 「姉さんがそこの木の陰で本を読んでて俺らは追いかけっこをしてた。」

 「それでお兄様が池に落っこちた!あの時はびっくりしたなぁ。」

 「そんなこともあったなぁ。あの後エレナが大泣きして大人たちが飛んできて大変だった。」

 昔のことを話しながら歩いているとあっという間に木陰に到着する。エドお兄様がギンガムチェックの布とクッションを事前に準備してくれていた。

 「ピクニックって言ったらやっぱりこれだよな。」

 その光景を眺めながらうんうんと一人で満足げに頷いている。

 「準備をありがとう。もう下がっていいぞ。」

 ピクニックの準備をしてくれた使用人を下がらせると私たちはシートの上に座り、バスケットを置いた。

 「お互いに呼んでほしい本だったよな。ちゃんと持ってきたぜ。」

 そう言いながらエドお兄様は一冊の本を私に手渡してきた。タイトルは『浜辺』と書かれている。

 「それじゃ私も。」

 私はバスケットから本を取り出し、エドお兄様に手渡した。

 「ほぉ、初めて見る本だ。」

 私が選んだ本は『シスの冒険』という本だ。幼い頃からずっと大好きな本で今でもよく読んでいる。ワクワクドキドキの展開は何度読んでも飽きないものだ。

 「小さい頃から大好きな本なの。エドお兄様にも読んでほしいなって。」

 「それは楽しみだな。」

 お互いに交換した本を読みながら時間は過ぎていく。たまに少しおしゃべりをするくらいで青葉が風に靡く音と鳥の鳴き声以外聞こえない静かな時間だ。本を読むにはピッタリとも言える。

 エドお兄様から渡された『浜辺』という本はある漁師の青年が一人で漁に出かけ、大きなサメと対峙するという話だった。サメというのは図鑑では見たことがあるが、実物は見たことはない。私は本を通して見知らぬサメに対する恐怖をひしひしと感じた。

 太陽が真上に到達した頃、グゥ〜というお腹のなる音が聞こえた。音の下方を見るとエドお兄様が恥ずかしそうに頭を掻いていた。

 「すまん、腹が減っちまって。」

 「もうそんな時間か。集中してて全然気が付かなかった。」

 そう言われると自分もお腹が空いているような気がする。自然とお昼にしようという流れになり、お互いに再びバスケットを開け、今日のお昼を取り出した。

 「お、エレナはサンドウィッチか。ピクニックって感じでいいな。」

 「エドお兄様は・・・何それ?」

 「東国の方の文化でベントーというものがあるらしくてそれを真似てみたんだ。四角い箱の中におかずと主食を詰めて持ち運ぶんだって本に書いてあった。」

 「初めて見た・・・。」

 私の紙に包まれたサンドウィッチとは豪華さが違う。おかずにはステーキ、主食はパン、おまけにステーキにつけるソースまでついている。これは豪華な一品だ。

 いただきますをして食べ始める。やっぱりうちの料理長の作るご飯は美味しい。チーズとシャキシャキのレタスに油ののったハムが見事にマッチしていて一口食べるだけで幸せが広がる。

 「美味しい〜。」

 「エレナは本当にうまそうに飯を食べるな。・・・ほら、食べかすがついてる。」

 そう言うとエドお兄様の手が伸びてきて私の口元についたパンくずをとってくれた。なんだか幼子に戻ったようで恥ずかしい。

 「なぁ、一口くれよ。俺のもあげるからさ。」

 「しょうがないなぁ。はい、あーん。」

 私が食べかけのサンドウィッチをエドお兄様の口元に持っていくと急にエドお兄様の顔が赤くなる。

 「どうしたの?」

 「いや、なんでもない。・・・うまいな。」

 エドお兄様は一口サンドウィッチを齧るとそう呟いた。私は自分の家の料理が褒められたことが嬉しくて頬が緩む。

 「うちの料理長のご飯美味しいでしょ?」

 「そうだな。それじゃ次はうちのシェフの番だな。」

 そう言いステーキをエドお兄様は口元まで持ってきてくれる。私は躊躇いなくそれを口にする。口にした途端に溢れ出る肉汁!肉の旨みが凝縮されていてとても美味しい。

 お互いの料理を褒め合いながら和やかな昼食の時間を過ごした。

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