第三十七話 お休みの日がやってきた!
あっという間に一週間が過ぎ休みの日となった。本来であればメイドたちが布団を引っぺがすギリギリまで眠って痛いところだが今日は約束がある。私はいつもと同じ時刻に起き、支度を始めた。
持っていく本と料理類は決まっている。先日厨房のコックにお願いをsしたため家を出る頃にはサンドウィッチとクッキーが出来上がっていることだろう。問題は何を着ていくかだ。私はベルを鳴らしマーサを呼ぶ。
「マーサ、今日はピクニックに行くって話したでしょ?」
「はい、そう聞いております。」
「ピクニックって何をきていけば良いの?」
「そういうことになるだろうと思いました。」
そう言うとマーサは手を叩く。するとどこからともなく他のメイドたちが現れそれぞれドレス、帽子、バックがかかった衣装掛けを持ってきた。
「ワオ・・・。」
私は驚くことしかできない。
「そうですねぇ・・・ピクニックといいますと足元は動きやすいブーツはいかがでしょうか?こちら先日購入したものがおすすめです。」
「それじゃそれで。」
「やはりピクニックといえば自然との触れ合い!そうなるとやはりこちらの小花がらのドレスはいかがでしょうか?胸元に少しレースの装飾も施されていて愛らしいです。」
「ドレスもそれでいいよ。」
「続いてカバンですがバスケットなどいかがでしょうか?こちらのかけ布と合わせればより可愛らしくなります。」
「いいねバスケット。ピクニックっぽい。」
「最後に帽子ですが・・・」
「帽子?帽子っているの?」
私が思わず聞き返すと今までドレスのある方を向いていたマーサが勢いよく振り返る。その顔は信じられないというものだった。
「エレナ様、今日は特に日光が強く日差し避けとしても帽子は必須です!」
マーサの剣幕にたじろぎつつもなるほどと納得がいった。
「それなら帽子はあの黄色い花の造花がついた麦わら?帽子がいいな。」
私が指差したのは布ではなく植物由来でできた素材を使った帽子だった。ファッションには疎いため名前は知らないが黄色の造花も相待って今日のドレスをより華やかにしてくれるだろう。
「確かにこちらの帽子はドレスとも合いそうですね。さぁ、こうしてはいられません。ドレスが決まったんですから支度を始めますよ!」
マーサの声を合図に私は支度を始めた。まずは風呂場に連れて行かれ全身をピカピカに磨き上げられる。それが終われば肌の調子を良くするという化粧水なるものを顔に塗りたくられ、それが終われば化粧が施される。ほんのりそばかすが薄くなり、顔が一気に華やかになった。最後に髪を結い、帽子を被せて貰えば今日のコーディネートは完成だ。
「ありがとうみんな。」
「それが仕事ですので。」
私がお礼を言うとクールに返事をしてマーサを除くメイドたちは去っていった。最後の仕上げにバスケットの中に本を入れ、マーサと共に厨房へと向かう。
「料理長―!頼んでいたものって出来上がってる?」
「おや、エレナ様。もう出来上がっていますよ。」
優しげな顔をした料理長が頼んでいたサンドウィッチとクッキーを持ってきてくれる。
「そちらにおつめしましょうか?」
「それじゃお願い。」
私は料理長にバスケットを渡し、料理を詰めてもらう。
「はい、できました。それではお楽しみください。」
「ありがとう料理長!」
そういいながら厨房を去り、時間を確認するとなかなか良い時間になっていた。私は急いで転移室まで向かおうとすると道中でユーシェン様と遭遇した。
「おや、エレナ城じゃないか。そんなにめかし込んでどこに行くんだ?」
「今日はエドお兄様とピクニックなの!ごめんね、急いでるから!」
できるだけ足早にその場を去る。なんだかき気まずい気持ちでいっぱいだった。どうしてだろうか。
「ルバッフォ公爵家までお願い。」
転移室にいる係にそう伝え、私はエドお兄様が待つルバッフォ家へと向かった。
エレナが去った後の廊下にて。
「ピクニックですか。いいですね〜。」
リーハンは茶化すような調子で主人であるユーシェンに言った。
「そうだな。その相手がエドアルド・ルバッフォでなければの話だがな。あいつはエレナに惚れている。」
「ユーシェン様のライバルですものね。いつまでもお友達というポジションに治っていたらあっという間にエドアルド様との間に婚約が決まってしまうかもしれませんよ?」
エレナの父とルバッフォ家の当主がエレナとエドアルドを婚約させたいという思惑は有名な話だった。キーニャ家は公爵家とより深い縁ができるし、エドアルドは惚れた女と結婚できる。デメリットのない契約だ。
「俺にはいる隙はあるだろうか。」
「何を弱気になっているんですか。隙は待つものではなく作るものですよユーシェン様。今度キーニャ家の領地内で大きなお祭りがあるようです。その時に誘ってはいかがですか?」
リーハンの提案にユーシェンは頷く。
(好きな相手が恋敵の元に笑顔で向かうというのはこんなにも苦しいことなのか。)
ユーシェンはそんなことを考えながら自室に戻った。




