第三十四話 いざ!実技試験!
いよいよ実技試験の日がやってきた。エドお兄様との実践後、サーラとアイリスの二人から粗がないか見てほしいと頼まれ私は二人の魔法の先生として放課後は魔法を教えることになった。
事前に二人が言っていた通り、今回の試験を通過するくらいなら余裕といった感じではあったがより点数を高くするための魔法のコントロールのコツと実践を行い、二人の魔法の腕はさらに上達した。
そして今朝、実技場までアイリスとゆユーシェン様と向かおうとするとリーシャさんが話しかけてきた。また面倒なことを言いにきたのかと三人とも身構える。
「エレナさん、先日はごめんなさい。実は頼みがあるの。」
上目遣いでこちらを見るリーシャさんに反省の様子はあまり見られない。それどころかチラリとユーシェン様を見ている始末だ。全く呆れる。
「何?」
一応聞いてあげようと思いそう返事をする。
「今回の実技試験、私の方がエレナさんより点数が良かったらお友達にならない?」
「え、やだ。」
思わぬ誘いに少し動揺したが自分でも驚くほどにスラリと言葉が出てきた。
「ど、どうして断るのかしら?」
「私のこと殺そうとした人と友達になんてなりたいと思う?行こう、アイリス、ユーシェン様。」
「エレナの言う通りね。あのお茶会の事件がなかったら今頃良いお友達になっていたかも。」
「全くだな。これ以上は時間の無駄だ。」
それぞれ言いたいことを言い終え。教室を出ていった。実技場までは少し距離がある。急いだ方が良いかもしれない。
実技場に着くとすでにクラスメイトたちが集まっていた。私たちとリーシャさんがどうやら最後のようだった。
試験監督を務めるのはバルド先生だ。周囲を見渡し全員がきたことを確認するとテストの説明を始めた。
「全員集まったな。実技テストは至ってシンプルだ。各々が得意とする魔法属性であそこにある的に魔法を当てる。ダーツと同じだ。それでは始める。」
早速試験が始まる。クラスメイトたちの様々な魔法を見てすごいなぁと思っていると私の名前が呼ばれた。
「エレナ・ディ・キーニャ。」
「エレナ嬢の番だぞ。どんな結果を見せてくれるのか楽しみにしているからな。」
「頑張ってね、エレナ。」
「ありがとう、二人とも。行ってくるね。」
私はそう言いその場から立ち上がる。杖を取り出すとクラスメイトたちの驚きの声が聞こえた。それも仕方ないだろう。こんなにも大きくて派手なのだから。
杖を構え、水魔法を使おうとしたその時、どこからか何か嫌なものが飛んできた。
(グローリーこれどういうこと!)
頭が急に割れるように痛くなる。その場に座り込みそうになるのを必死で耐えてその辺にいるであろうグローリーに聞く。
(リーシャがお前の精神に干渉する魔法をかけているらしい。我が娘の魂がそれに抗って頭痛が起きているのだろう。待っていろ、すぐに片付ける。)
(そうして!)
なかなか魔法を使わない私に周囲がザワザワとし始める。あぁやかましい。頭に響く。頭痛はどんどん激しさを増していき吐き気すら覚える。バルド先生がこちらに近づいてきた瞬間、プツンと何かが途切れる感覚と共に頭痛は消えた。
「エレナ、大丈夫か?」
脂汗まみれでおそらく真っ青な顔をした私にバルド先生はいつもより優しい声音で聞いてくれる。大きく域を吸い込み、吐く。
「大丈夫です。ちょっと、精神統一してました。」
「そうか、なら良いのだが。他の者もいるから早く行うように。」
そう言うとバルド先生は離れていった。
改めて杖を構える。
「根源・・・水の根源ウンディーネよ・・・」
水の渦が杖の先に集まってくる。本当はこんなこと言わなくても魔法は使えるのだがこれ以上周囲を驚かせたくなかっため詠唱を行う。
「水よ剣となり、かの者を貫け!」
そう言うと鋭く尖った水の渦が三方向に別れ、それぞれの的の真ん中を貫いた。
「やった!」
私が喜んでいると後ろから聞いたこともない細い声でバルド先生がこう言った。
「最高記録だ・・・。」
邪魔は入ったものの私の実技試験は無事に終わった。ユーシェン様もアイリスも余裕で試験に合格し、三人で結果を喜んだ。
その日、自宅に戻り試験の結果をお父様に伝えるととても喜んで夕食は私の好物ばかりになった。期末試験も上位だったらこんなご馳走食べれたのかなと思いつつ、美味しい料理を満喫した。




