第三十話 一日目終了!
転移魔法を使って自宅に戻ると「お帰りなさい!」と言いながら双子が抱きついてきた。可愛い。
「お姉さま学校どうだった?お友達できた?」
「もう、トマスったら。お姉様にはサーラ様とユーシェン様という立派なお友達がいるのよ。これ以上お友達が増えたら私たちと過ごす時間が減るじゃない!」
「それも確かにそうだね。お姉さま、お友達できなかった?」
トマスとメリッサの会話に思わず私とお父様は笑ってしまう。遅れてやってきたユーシェン様もなんだ なんだと言いながら話の輪に自然と溶け込んだ。
「どうした?何かあったのか?」
「双子たちの会話が面白くて。」
私がそう答えると双子は不服だと言わんばかりに頬を膨らませた。まるで頬袋にたんまりきのみを詰め込んだリスのようだ。
「僕はお姉さまにお友達ができなかったかどうか聞いただけだもん!」
「別にお姉様と過ごす時間が減るのが嫌なわけじゃありませんの。」
聞いてもいないのにペラペラと話す双子が面白くて愛おしくて私は二人を抱きしめた。
「まだお友達はできてないの。それに私にお友達ができてもトマスとメリッサと過ごす時間は必ず作るから。」
「本当に?」
不安げにトマスが聞いてくる。
「本当に。」
さらに強く抱きしめるとメリッサは満足したのか私の肩をポンポンと叩いてきた。それを合図に二人から離れるとマーシャがやってきた。
「エレナ様おかえりなさいませ。自室での着替えの準備はできていますのでどうぞこちらに。」
「ありがとう、マーシャ。それじゃ私はお先に失礼するね。」
マーシャの後をついていきながら廊下を進んでいく。窓からはオレンジ色の光が差し込んでいた。
「綺麗な夕日ね。」
「はい、エレナ様の門出を祝福しているかのようです。」
「そうなのかなぁ。」
「そうですよ。だって、エレナ様は奇跡の子なのですから。」
そう言うマーシャの顔は母親のようにも姉のようにも見えた。幼い頃から私の面倒を見てくれていると言うこともあってかたまにマーシャが母親のように思えてしまう時がある。そういえばお母様が亡くなってすぐにずっと寄り添ってくれていたメイドはマーシャだけだった。
「マーシャ、ありがとう。」
「どうしたんですか急に。」
「ただ、言いたくなっただけ。早くこんな堅苦しい制服脱いでゆっくりしたいな。」
「かしこまりました。お着替えが終わり次第お茶の準備をしますね。」
「ありがとう。」
自室に戻り、堅苦しい制服からちょっと堅苦しい家用のドレスに着替え、夕飯までのんびりとお茶を楽しんだ。今だけは面倒なことは考えないでおこう。リーシャさんのこととか。そう言うのはグローリーが姿を表した時に話せばいい。
あっという間に夕飯の時間になり私は食堂へと向かった。扉をk開けるとすでに皆が暑まており、私を待っていたことがすぐにわかった。
「ごめん、待たせちゃった。」
「良いんだよエレナ。それじゃいただきます。」
お父様の言葉を合図に夕食を食べ始める。話題は学園のことでいっぱいだった。特にユーシェン様は観察眼が優れているらしく時刻の学校との違いや建築物の構造の違いなど面白おかしく話してくれた。
ユーシェン様の話を聞きながら楽しく夕食は終わり、各自部屋に戻っていった。
お風呂を済ませ、後は寝るだけと言う時に月の光と共にグローリーが姿を表した。
「いつ来るんだろうって思ってたよ。」
「お前の周りにはいつも人がる。寝る前くらいでないととてもじゃないがし方を表せない。」
グローリーはベッドに腰掛け何かを考え込んでいるようだった。
「何を考えてるのグローリー。まぁ、同じようなことだと思うけど。」
「お前を殺そうとした女と同じクラスとはお前も運がないな。」
「本当にね。ありがとうね催眠魔法が効かないようにしてくれて。」
「あれが暴れては何もうまくいかなくなるからな。これくらい当然だ。それで、エレナは明日からどする?」
「明日から?まずはアイリスさんとお友達になるところかな。」
「お前らしいな。何かあれば必ず助ける。我はお前のいつもそばにいるぞ。」
「ありがとう。心強いよ。」
「今日は疲れただろう。早くねるといい。」
そう言うとグローリは姿を消した部屋には私一人だけになる。
明日がどうなるのかはわからない。確か、学園案内とかがメインだったはず。そこで何も起こらないといいのだけれども・・・。
ベッドに横になる。ふかふかのマットレスのおかげであっという間に眠れそうだった。
(明日はアイリスさんと友達になれたらいいな。・・・あれ、なんで私アイリスさんと友達になりたいんだろう?まぁ、いっか。)
微睡の中、少しだけ考え事をした私はあっという間に夢の中に落ちていった。




